対外的な発信の成功という意味においても、きゃりーは後世に語り継がれるアーティストだろう。YouTubeの再生回数は総計で1億回を超えた。韓国のアーティストPSYの「江南スタイル」の14億回には及ばないが、日本人のアーティストとしては最高の再生回数だという。韓国発のポップスが世界の音楽シーンに広まりつつあるなかで、日本の底力を示したのではなかろうか。


きゃりーが海外で評価される理由として「オリジナリティ」が指摘されるが、それだけではないだろう。きゃりーの世界は、楽曲、美術、ファッション、コリオグラフィ、ビデオアートのそれぞれの領域での高度な表現技術に支えられている(その意味でもデュシャンの「泉」的なダダイズムとは一線を画している)。それも人びとを魅了してやまない大きな理由ではなかろうか。


アイコンたるきゃりーは、日本人の創造力や日本の存在感を示すことのできる数少ないアーティストだろう。


国力の一つに人びとを魅了する力(魅力)があげられるとするなら、きゃりープロジェクトはまぎれもなくソフトパワーのファクターである。YouTubeでのきゃりーのミュージックビデオには「いつか日本に行きたい」「日本はすごい」といったコメントが多く寄せられている。日本を世界に紹介し、世界の人びとと交流する広報・文化担当大使の役割も担っているのである。職業外交官ではない民間のアクターが、諸外国の民間人や世論に与える影響力は「パブリック・ディプロマシー」論の枠内で語られることが多いが、彼女はその筆頭アクターだろう。