前略、知事様 | 地方の政治と選挙を考えるミニ講座

地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)

前回(大村知事をリコール!?)に引き続き「知事職」がテーマです。

 

コロナのせいではありますが「知事職」が俄然注目を浴びております。

私たち日本国の選挙権を有する者が選挙により選ぶ公職には、

市区町村議会議員、市区町村長、都道府県議会議員、都道府県知事、

参議院議員、衆議院議員の6種類がありますが、

市区町村や国が執行する選挙に比べ、

道府県が執行する選挙は押しなべて投票率が低く、

さらに議員選より知事選の方が(投票率が)低いのが全国的な傾向です。

つまり有権者から最も間遠な公職が「知事」と言えます。

 

その、普段重鎮ながらにしてあまり目立たないはずの知事職が、

(都だけは例外としておきます)

いきおいコロナ対策の陣頭指揮を執るポジションとなり、

ひのき舞台に引っ張り上げられました。

さらに日本中、世界中がコロナ禍に巻き込まれたため、

知事同士お互いが、比較され合う間柄になってしまいました。

よって、これ見よがしに「わが県独自の対策」などを画策し、

一歩抜きに出よう、ライバルに差をつけようと、

パフォーマンスに余念がない方も見受けられるようになりました。

 

 

 

4月21日、徳島県の飯泉嘉門知事は、

県民から「来県自粛が呼びかけられているのに県外ナンバー車が多い」との、

指摘・苦情が寄せられたのを受け、

「県外ナンバーの車がどれくらい来ているか実態を把握する」と発言し、

翌22日から県内高速道路のインターチェンジや観光施設などで

県外ナンバー車の流入調査を実施しました。

 

県外ナンバー車を呼び止めたり警告を発したりするわけではなく、

通行量等を調査しただけですから、

県外からの来訪者が不愉快に思うことはなかったはずです。

しかし結果として、

その後徳島県内では、県外ナンバー車へのあおり運転や投石、傷つけ、

ドライバーへの暴言などの嫌がらせが相次ぎました。

 

 

4月24日には岡山県の伊原木隆太知事が、

山陽自動車道下りの瀬戸パーキングエリア(岡山市東区)で

来県者の検温を実施すると発表しましたが、

「まずいところに来てしまったと後悔してもらうようになれば良い」との

会見中の発言があっと言う間にネットで「大炎上」しました。

 

警察官や県職員が県外ナンバーの運転手に声をかけて検温する筋書きでしたが、

「高圧的な嫌がらせ」と見なされ、

岡山県庁には「現場で妨害する」「県外人を病原菌扱いするのか」などとの、

苦情の電話やメールが殺到しました。

 

伊原木知事は4日後の28日に、

「つたない発言で不快な思いをさせたことをおわびする」と謝罪しました。

しかしその後、パーキングエリアでの検温を中止するかわりに、

「県内のインターチェンジを閉じるようお願いする」と発言し、

これが再び「大炎上」。

西日本高速道路からも「物流を滞らせるわけにはいかない」と突き放され、

火に油を注ぐ結果を招いてしまいました。

 

 

 

一体なんでこんな発想するのか…。

選挙で選ばれる政治家というのは功名心が強く目立つことが大好きで、

時にはケガの功名をも喜んで受け入れます。

災害視察に作業服で出かけ、関係者を引き連れて取材を受け、

写真を撮りまくってそれをSNSに上げる…。

そういうのが大好きな人たちなんです。

目下47人の知事がひな壇に上げられた状態で比べられている状態で、

徳島、岡山、両県の知事も、

何とか「県独自の策」を施し、存在感を示したかったのだと思います。

 

しかしその結果、

県内には他府県ナンバーを排除させようとする「民兵」が勝手に育ってしまった。

知事の発言は炎上し、県では対策できなくなったが、

その代わり俺たちがやってやろうという義軍ができてしまったわけです。

 

 

そして県外には限りなく多数の敵を作ってしまいました。

今後コロナ復興の際に、その痛手はジワリと来るのではないかと思います。

 

 

だいたい「●●県内在住者です」なんて、

こんなステッカーを県庁のホームページからダウンロード出来たり、

商品として売られているというんだから、

各都道府県のコロナ対策最高責任者である知事さんは、

自身の一声がどれだけ影響があるのか、

どんな作用と反応と変化を及ぼすのか…。

すべての国民が恐怖と不安とストレスにさいなまされていることを加味して

慎重に考えに考え抜いた上で発していただかなくてはいけなかった。

(結果失敗を)単なる失言で片づけるわけにはいかないんです。

 

 

 

次に大村秀章・愛知県知事に出てきてもらいます。

あいちトリエンナーレに端を発するリコールの要因は前回説明しましたので、

今回は「東京と大阪は医療崩壊」と繰り返し発言し、

自画自賛に余念がないその発言内容に疑問を投げかけます。

 

 

大村知事はこれまで県の対策会議や記者会見の場で、

「愛知は、医療崩壊を起こした東京・大阪と違う」と強調してきました。

県独自の緊急事態宣言を解除した26日の会見でも、

改めて東京・大阪の医療体制について「検証されなければならない」と述べ、

病床数不足や救命救急医療への影響を

情報公開すべきだと持論を唱えました。

 

 

これに対して小池百合子東京都知事は

「東京に集中したいと思っています」とスルーしましたが、

吉村洋文大阪府知事はツイッターで何度か応酬しています。

 

 

東海テレビが5月28日に上げた記事をそのまま写すと、

松井一郎大阪市長:「もうあれやろ、吉村知事に対しての妬みやっかみで、

とにかく自分が目立ちたいということだと思いますね」。

また、ある愛知県議は…。

「大村知事は、人脈やパイプを使って大阪や東京と情報交換をしているし、

いろいろ知っているんだろう。一生懸命やっているのは事実。

ただ『頑張っているね』っていう報道や声が、大阪・東京に比べて少ない。

面白くないっていうのはあると思う。」

と、このような報道がされています。

 

 

この場に及んで他の自治体の対策をどうのこうのと非難するなんて、

まったくもって生産的な発言ではなく、

東海テレビの記事のような理由(妬みか、お褒め不足)しか見当たりません。

だとすればこの発言を今後県民が、国民がどのように反応するのかに、

注意を向けなければなりません。

 

 

ここで「とらっきち」さんという、

むちゃくちゃ面白いブロガーさんの記事を引用させていただきますが…。

 

東京と大阪は医療崩壊だ!って

いきなり言うてくるんやで。

こんなもん近所に住んでる変なオッサンが

突然わめきちらして文句言うてくるのと同じやん。

 

ほんまにそうですわ。

「とらっきち」さんのこの記事は、

あの会見を見た大阪府民のストレートな印象ではないかなと、

私は思います。

 

 

さらにここで、徳島県や岡山県とその周辺の県で起こった

「他府県ナンバー狩り」を想起すると、

大阪府民と愛知県民との間で「何か」が本当に起こりそうな気がします。

公表はされていませんが大村知事の発言のレベルから言って、

愛知県庁にはすでに抗議や苦情が数件は届いているのではないか?

 

 

また、今はこんな騒ぎでプロ野球がまだ開幕していませんが、

虎党が「おまんとこの知事はなんやぁ!」と竜党に食って掛かり流血騒ぎになる…。

そういう事件があり得ないとは言えない。

私はおとなしい燕党ですから竜党に向かって不要なヤジなど飛ばしませんが、

つば九郎がドアラに対して、

「おおむらちじさんに、ゆりこをいじめるなっていっておいて!」なんて、

それくらいの注文はあるかもしれない。

 

 

大村知事ばかりを責めましたがこの件、

私は食って掛かった吉村知事にも問題ありだと思います。

反論したことによって余計に、

大阪府民の愛知県に対する敵対心が増幅されたと考えるからです。

 

 

大阪にも愛知にも都構想があり、

この両府県はGDPも拮抗しておりライバル同士でもあるはずです。

また両府県とも郷土愛が非常に強い風土を持ち、

言葉も強く、プライド高い府県民性を備えています。

 

 

「正義」の延長に「他府県ナンバー狩り」などという犯罪行為に及ぶ人種が

実際にいるんだから、

そういう人種を刺激するような言動は厳に慎まなければならないと思います。

あと、緊急事態宣言解除直前になって突然足並みが揃わなくなった

1都3県の知事さんたちにも出てきてもらいたかったのですが、

それはまたの機会にしたいと思います。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。