候補者のスケジュール管理 | 地方の政治と選挙を考えるミニ講座

地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)


どんな仕事でもそうですが、スケジュール管理は大切です。

ただその職種によって、

分刻みの細かい管理を求められることもあれば、

一日が単位のもの、一週間が単位のもの、一年が単位のものと、

管理の仕方は一様ではありません。



さてそこで「選挙では」と言うと、

これも選挙までの残された時間の量と、

市議選か知事選かという選挙規模の大小によって、

随分異なるものです。



知事や国政の選挙の告示後のスケジュールとなれば、

それこそ分刻み、場合によっては秒刻みです。

もう25年も前、私が参院議員秘書だったころの話ですが、

私は自民党の某派閥の選対本部で、

応援弁士の日程調整を任されたことがあります。

列車・飛行機・車、あらゆる交通手段を駆使して、

いかに人気の応援弁士を効率よく現場間を往来させられるかを、

パソコンも携帯電話もない時代に、

時刻表と地図帳をひもとき、造り上げていました。

中にはヘリコプターをチャーターして、

次の遊説地へという手配をしたこともありました。



国政や全国の注目を集める選挙ではこんな有様ですから、

対応する現場も大変な騒ぎです。

万が一中央からくる応援弁士を迎える、送り届ける時間に遅れが出たら、

次の遊説地に多大な迷惑をかけてしまいます。

そんな世界ですから選挙のスケジュール管理とは大変なことだと、

そういう先入観を持っている方は、

たくさんいらっしゃると思います。



実際に私がコンサルタントとして現場入りすると、

本人をはじめ選挙に関わる後援者の人達が一様に心配することが、

スケジュール管理についてです。

選挙まではあと3か月もあるのですが、

最初の打ち合わせ・顔合わせ時に一番初めに聞かれることは、

大概、「今日・明日・明後日、我々は何をすればいいのか。」

ということです。



質問する方は、スケジュール表を開き、メモの準備をして

私の言葉を待っています。

ところが、コンサルタントがなかなか具体策を示さないので、

質問者の顔に不満気な表情が見え始めるのですが、

「ちょっと待ってください」と解答をいったん保留にします。



選挙に限らず何か新しいことを始める時というのは、

確かにやるべきことがはっきりと見えていると安心できます。

なのできちっとした性格の人ほど、

スケジュール帳を早く埋めたがります。

しかも時間刻み、分刻みで…。



もちろんミニ集会・駅立ち・決起大会・街頭演説・世話人会開催と、

企画しまくれば、それに伴う準備でスケジュール帳を埋めることは簡単です。

そしてそれだけで運動が出来ているような気持になりますし、

これから陣頭指揮を執っていく人には、

明確な行動指針ができるはずです。



しかし、市区町村の議会議員選の告示直前までのスケジュールというのは、

帳面が真っ黒になるほどのものではありません。

広報物をいつまでに仕上げるか。

人事をいつまでに確定させるか。

事務所の賃貸契約をいつまでに済ませるか。

最初に決めるべきはこのようなことですから、

日めくりのスケジュール帳よりも、

書き込み欄が大きなカレンダーの方が重宝するわけです。



そして候補者本人のスケジュールについて、

私の考えですが、「何もない」が一番です。

これまでにもお伝えしましたとおり、

小さな選挙の基本運動形態は個別訪問です。

ですから、朝から晩まで何も予定がなく、

一日をフルに個別訪問にあてられることが、何と言っても大切なことなのです。



そこに行事が入ってくると、

やっぱり候補者を連れ回さなくてはいけなくなります。

例えば決起大会を企画すれば、

弁士は誰だ、受け付けは誰だ、接待は、案内状は、動員は、交通整理は、と

次から次に課題が出てきます。

それを話し合うのに、候補者本人をいちいち参加させていたのでは

時間がもったいない。

個別訪問という運動を敢行するには、気の充実が不可欠ですから、

途中抜けてまたあとで合流するなんて、

特に新人候補ではなかなかできることではありません。

ですから陣営がするべき努力は、

候補者の日程をなるべく空けてあげることです。

もしどうしても、候補者を拘束する必要があるのであれば、

その要件をなるべく同じ日の連続した時間に納めるようにしたいものです。



スケジュールというのは、

細かく立てるほど、その通りに動くのが難しくなりますし、

途中イレギュラーがあった場合の代替案が出し辛くなります。

特に候補者の予定がびっしりと詰まっていると、

個別訪問中に起こる思いがけない支持の連鎖や、拡張に即対応できなくなります。

なので予定はざっくりと、

イレギュラー大歓迎というつもりで立てればよいかと思います。



ただこの方法を使う場合に、大切なことがあります。

それは、「記録をとる」ことです。それもなるべく詳細に…。



個別訪問の記憶ですから、訪問記録ということになります。

どの家の誰に会い、どんな反応だったか…。

そこで知り得たことを記憶にとどめるだけではなく、

なるべく記録することです。

そしてこの積み重ねが、告示二週間前になって活きてきます。

告示直前にやるべき、重要支持者への再訪と票読み、絞り込み…。

告示後の最後のお願い、ハガキ郵送、電話作戦、街頭演説…。



選挙序盤のスケジュール帳はスカスカでした。

だけど、日報はびっしりと記録できたとすると、

本当の選挙終盤のスケジュールは、自ずと決まって来るものです。



ハガキを出すべき名簿がある。

電話をかけるべき名簿もある。

街頭演説をやらなければならない(支持者が固まっている)集落がある。

朝晩必ず車を走らせなければならない地区がある。

「あと一票」の積み重ねを頼める支持者がいる。

もう一度ローラーをかけるべき地区がある。

選挙直前にはこのような状態になっていなくてはいけません。



選挙の二か月前に決起大会を開き、

仮に数百人が集まったとしても、

告示前二週間からの動きが、その日の行き当たりばったりになっていたとすれば、

PLAN(計画)、DO(実行)、SEE(検証)のうち、SEEが欠如していた結果です。



選挙事務所という、ある意味催事の会場には、

計画好きはたくさん集まりますが、

記録を作るという地味な仕事を好む人はあまり集まりません。

計画と実行が動的な仕事であるのに対し、検証は静的な仕事。

そしてなにより選挙そのものが動的な行事だからです。



繰り返しますが、

ハガキを出すべき名簿がある。

電話をかけるべき名簿もある。

街頭演説をやらなければならない(支持者が固まっている)集落がある。

朝晩必ず車を走らせなければならない地区がある。

「あと一票」の積み重ねを頼める支持者がいる。

もう一度ローラーをかけるべき地区がある。



この状態を作れる選挙事務所は最強です。

小さい選挙ではまず「実行」ありきで「計画」よりも「検証」。

イベントは最小限に抑えて候補者の体をなるべく軽くし、

陣営を守る人の中から、しっかりと記録を残せる人を重用してください。



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