分の悪い契約 | 地方の政治と選挙を考えるミニ講座

地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)

また新党が出来つつあります。

この新党の場合は、1122日の大阪ダブル選の結果を見るまで

その先を占うことは難しい状況ですが、

国会議員が既に19名参加表明していることから、

いずれにしても比較的規模の大きい船出ということになりそうです。



ここ数年の間に立ちあがった新党が最初にすることは、

地方議員の取り込みと、地域支部の確立です。

新党設立に同調する地方議員がいれば、支部長等の肩書きを付け、

議員がいない地域でも、浪人中の元職を連れてきて肩書を与えたりします。

さらに新人の公募を行ったりして、

下部組織の構築に勤しむことになります。



そうすると私のようなところにも、

「新党の公認を受けて、市議選に出ようと思うのですが。」というような

問合せが寄せられることになります。

4年前(平成23年)の統一地方選前は、

当時隆盛だった、みんなの党や大阪維新の会から出たいという人からの

問合せがたくさんありました。

しかし私は、その相談者のいずれにも、公認申請することを薦めてはいません。

むしろ「止めておきなさい」と、見解を提示しました。

その理由が、今回のテーマであります。



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政党の存在価値、あるいは命題とするところは、

あくまで国政で議席を伸ばし、政権を獲ることにあるはずです。

ですから、より多くの選挙区で候補者を擁立させなければなりませんが、

同時に選挙に勝てる見込みを構築しなければなりません。

そこで大きな働きをするのが地域支部ということになります。



新党立ち上げと同時に各都道府県支部、その下の小選挙区支部が出来ればいいですが、

新党がそこまで首尾よく下部組織を構築できるわけがありません。

そこに事務局と職員を配置しようと企てるなら、なおさらのことです。

そこで、金をかけずに支部を作ろうという意図で、

公募されるのが地方議員の候補者ということになります。



公認候補が自らのために政治活動を始めれば、

給料を払うことなく、それ即ち党勢拡大になるということで、

近年の新興政党はこぞって、公認候補の数集めに執心してきました。

5年後に政権を獲る」と豪語している橋下氏率いる最新の党も、

まもなく公認候補の募集に注力してくることでしょう。

新党の目下の事情とは「何が何でも数集め」ですから、

公認申請は、特に市区町村の議会選において通りやすいものです。



一方で応募しようとする側の視点で、この公募はどうなのでしょうか。

まず、後援会長をはじめとする

後援組織の構築に見込みがない人にとっては、

公認がその保証を肩代わりしてくれる役目を持ちます。

つまり最初にして最大の難題を公認が解決してくれるわけですから、

立候補に向けて一気に弾みがつくことになります。

そして、党が持つ勢力がそのまま戦果に現れますので、

党勢有利な場合、それだけで当選することも十分にあり得ます。

しかしメリットはこれだけです。



よしんば当選しても、あなたは党勢拡大のための手足、

ノルマを持たされた代理店ということになってしまいます。

党員集めに始まり、他地域の選挙応援等に駆り出されます。

無所属の議員と比較すると、大変多忙な思いをすることになります。



さらにここ近年は、新しくできた政党が長く続いた例がありません。

国会議員であればその議席の重さから、

党の分裂統合に際して身の振り方がありますが、

地方議員にとって党の消滅は致命傷かつ、その責任を誰にも追及できない、

苦しい立場に追い込まれることになります。

自身で集め、党費を払ってもらった党員に申し訳が立たなくなります。

事後の火消しの仕方が悪ければ、

政治家として終わってしまうことにもなりかねません。

実際4年前の統一選でみんなの党から出て当選した人の多くは

今年落選の憂き目に合い、行き場所を失っています。



新しい党が長く続かない理由は大きく3つありますが、

一つは公認の乱発、もう一つは人材不足、

そしてあと一つは、金が続かないことです。



もともと後援会長が立てられず、後援組織が作れない人が

公認を受けているわけですから、

新党の人材に、抜き出た能力と責任感は追求できません。

また集金能力のある者も、自身が党首になることはあっても、

新党に参加することは稀です。



みんなの党の末期に、渡辺党首の金銭問題がやり玉にあがりましたが、

本来金集めと手柄の分配は幹事長が責任を持つべきです。

私は当時幹事長職であった江田憲司氏の無能が、

この党の最期を早めたと思っているのですが、

新しい党に金と手柄を自在に扱える人材が急に育つわけもなく、

党本部の懐事情は、まず地域支部の引き締めという形で

露呈されることになりますから、

やはり貧乏くじを引くのは、地方議員からになってしまうものです。



そう考えると、

新党の公認を得るということは、

立候補の後押しと、最初1回の選挙だけが利点で、

落選すればお払い箱、当選すれば使われるだけということになるわけです。

実に分の悪い契約だと、私は思います。



そして新党は船出のときから「公認の乱発」という、

あとに致命傷となることを蛮行しているので、

いよいよ新党が長く党勢を保つことは難しいと、判断せざるを得ません。



政治は4年間が1サイクルですよね。

4年の間には最低1回の総選挙と通常選挙、そして全種の地方選挙があります。

私はこの4年間、原形をとどめた形で経過した政党であれば、

公認を受けてもいいのではないかと考えています。

今、本当にジリ貧の民主党でも、支持母体はあります。

新党よりは存続の可能性が高いし、統合はあっても分裂消滅の可能性は低い。

仮に民主党公認で落選しても、

再起の芽が摘まれるところまでは追い詰められません。



これから、特に若い人が人生を政治にかけようというのであれば、

人生最初の選挙は無所属で戦うべきだと思います。

仮にその結果が落選であっても、

自前で設えた後援会は、自分のもの、自分の財産です。

自分の成長と共に、後援会を成長させることができれば、

連続当選、上級職への道が開けるというものです。



このブログを読んでくださっている人の中には、

新しくできる政党に興味津々の人も多いかと思いますが、

市町村の地方議員候補が政党の公認をもらうということは、

必ずしも自分のためになる契約ではありません。

人生を左右する重大な問題ですから、よ~く考えて決心してください。



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