本当の政治家とは… | 地方の政治と選挙を考えるミニ講座

地方の政治と選挙を考えるミニ講座

勝負の世界には、後悔も情けも同情もない。あるのは結果、それしかない。 (村山聖/将棋棋士)



運動量の少ない人は別にして、

何度も選挙に挑戦しているのに勝てない人がいます。

これまで私にメールや電話で相談を持ちかけてくれた人や、

会う機会を作っていただいた人の中にも、

そういう人(但しコンサル契約はしていない)が数人いるのですが、

今回は一生懸命に、しかも人一倍運動しているのに、

なぜか勝てない人の原因を探ってみたいと思います。



もう8年も前になりますが、

神奈川県のある市で、私は市議選の現場に監督として関わっていました。

その選挙戦に参じていた他の候補の一人にこれは? というのがいました。

30代前半の男性でしたが、

当時としては実にこまめにブログを更新していて、

私の興味の的、チェック対象になりました。



そのブログは「いかに僕ががんばっているか」を主張するもので、

朝の駅立ちに始まり、自転車であっち行きこっち行き…、夕方も駅に立って、

今日はビラを何枚消費し、何人と握手し、何人が演説を聞いてくれたと…。

そんな運動の報告が、日に23度上がって来るものでした。



当初私は、「新手のタイプだな」と警戒したのですが、

来る日も来る日もブログの記事は「僕こんなに頑張っているんだよ」の域を出ず、

まめに報告している割には、支持者の影が見えることがありませんでした。

私はこれは独りよがり、支持者は付かないだろうと判断したのですが、

結果やはり敗退でした。



そして丁度この頃からだと思いますが、

選挙の手法にについて細かく聞いてくる質問者が多くなりました。

「選挙への異常な関心」とでも言っていいかと思いますが、

せっかく政治に参加し、未来を創造するということに挑戦しようというのに、

現実の関心は「選挙運動そのもの」というタイプの人が増えました。

あるいは、「票を獲る術の確立」だけに時間と労力を費やし単眼的に夢中になる人。

誰よりもがんばっているという自分に酔える人。

解りやすく言えば、

売れるわけがない商品を、ただやみくもに一生懸命売っている…、

セールスポイントを理解していない、理解できない。

そんな状態にいつまでも気が付かないまま負けてしまう人、

こういう人たちとの接点が増えたのです。



先日私は、あるセミナーを聞きに上京しました。

私は、ウェブ上で集客するための手法を知るために出かけたのですが、

内容はそのソフトを売るためのもので、私にとっては見当違いのセミナーでした。

しかし商売の鉄則は、売れる(需要のある)商材を扱うことに始まり、

顧客満足を追求しなければなりません。決してお金だけを追いかけてはいけない。

ということを繰り返し説いていて、これは納得できました。



政治だって同じだと思うのです。

追究すべきは住民に安心と希望を与える事であって、

日常それが出来ている人は、自分から言いださなくても、

「私たちが支援しますから議員選に立ってください」なんて展開から、

支持者に導かれるように議員に当選したりするもので、

これこそが本来の地方議員への王道のはずです。

一方で街宣活動や駅立ちなんて運動は、いくら頑張って敢行しても、

誰の役にも立たない行為です。

そのがんばり様をブログで自慢しても、これまた誰の役にも立たない情報です。

特に目指す選挙が市町村議会議員選であるなら、

地に足の着いた生活基盤を築いたうえで、社会貢献を積むことが

最短であり最善であると思います。



私には「本当の政治家とは議席など無くても政治ができる人」という持論がありますが、

実際にまちづくりに率先して参加してみると、

議員などよりもよっぽど信頼にあつく、自治体運営に影響がある人がいるものです。

私も人にああやれ、こうやれと言うだけでは説得できないと思ったので

子供もいないくせに、市の子ども会連合会の本部役員になりました。

そうすると、市主催の催事の実行委員を頼まれたり、

公民館行事の企画運営委員に選ばれたり、次から次に役職がついて来ます。

将来選挙に出ようという人であれば、このような組織で活躍することはすなわち、

仲間を増やし得票に繋がる、大変有効な手立てだと思うのです。



なので私は、このブログでも繰り返し人の役に立つことを継続してやれ。と、

説いてきたつもりですし、

政治活動や選挙運動についても、地道な方法を案内してきました。

理由は簡単、確実に人脈が広がるからです。



ところがどう諭しても、「選挙への異常な関心」を示す人というのは、

選挙をゲームと捉えるかのごとく、手法の研究に没頭してしまうんですね。

そしてそういう人には特徴があります。

まず第一に、「勉強会」みたいな集まりが好きです。

政策や演説やディベートを勉強する催しや学校に行きたがります。

そして同じような志向の人達とつながるのが好きです。

次に権威に弱い。

国会議員をはじめとするいわゆる「大物政治家」が大好きで、

そういう人との人脈があることを自慢するのが好きです。

そして新しい政党が好きです。

単に下部組織として利用されているだけなのに、

重宝されていると勘違いし、公認候補になったりして、

党の消滅と共に夢を壊され、場合によっては負債を背負います。



私観ですが、この手の人たちは選挙が大好きなんだろうと思うのです。

多分政治をやることよりも選挙の方が好きなのです。

私も若いころ参議院議員の秘書になって、

6年先まで選挙がないと思うと絶望でした。

衆院議員の秘書がうらやましくて仕方がなかった時期がありました。

退屈であることに我慢できないのでしょう。



しかしいくら選挙が大好きでも、

選挙運動ばかりに没頭したのでは、らちが明かないのは前述のとおりです。

地に足の着いた生活と社会貢献がなければ、何もコンテンツが仕上がりません。

実際ビラやリーフレットを企画しようという算段になったとき、

決意表明の文章ひとつまとめられないというのは、

実績もビジョンもないからです。

ブログやFBの記事に「僕こんなに頑張っているよ」としか書けないのは、

当選後にやるべき使命がイメージできていないからです。



あえて今回は「選挙に勝ちたい人」ではなく

「政治家になりたい人」へ呼びかけますが、

政治家になりたければ、今すぐ誰の役にも立たない政治広報活動をやめて、

政治そのものを始めてしまうことです。

自治会、町内、そして市町村でも、

まちづくりに責任を持って参加してくれる人は大歓迎されるはずです。

そこで住民のために知恵をだし、体を使って奉仕していれば、

道はおのずと開けていきます。

6時から8時の2時間、

駅に立って誰の役にも立たないパフォーマンスを演じているくらいなら、

お年寄りを誘ってラジオ体操に参加し、通学路で黄色い旗を振り、

月に一回くらいは地域活動に勤しむ人たちと酒でも酌み交わしてください。



余禄になりますが、

冒頭で紹介した神奈川県の市議候補が書いたブログに対して、

隣の市のベテラン市議が興味深い感想を残していたので引用紹介します。



「こうした新人類の皆さんの特徴は、選挙への異常な関心にあります。
せっかく、これからの将来がどうあるべきかと言う関心を抱きながら、
現実の関心は「選挙運動そのもの」に向かっていく。
あるいは、主要な時間が、「選挙運動の活動」につながっていくプロセス。
その先には、選挙活動運動自体を求めて、
その職業化(家)を知らず知らずにひた走っていく活動に至っていきます。
もし、こうした行動の先に選挙があって「当選」に至れば、
自己目的化した選挙運動家こそ、目標とされる政治家像と見なさせるでしょう。
他にも、現職議員の中にも若い世代は、
「選挙運動」のみの活動に専念する方が多いようです。
そうした傾向を勘弁してほしいと願うのは、全共闘世代の「ぼやき」なのでしょうか。
(原文ママ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お任せください!

選挙・政治活動の印刷物・広報物の企画制作

→ (同)筑波創芸

選挙・政治活動のコンサルティング業務

→ 地方選挙研究会

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー