窪田順生著「潜入 旧統一教会『解散命令請求』取材NG最深部の全貌」(徳間書店)を読む | 世日クラブじょーほー局

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潜入 旧統一教会 「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌

 

 著者の窪田氏を当方は知らなったが、このところ旧統一教会にまつわる話題でネットに寄稿したり、YouTube番組に出演したり、教団の友好団体である勝共連合をフィーチャーしたドキュメンタリー動画「反日と愛国」を自ら製作したり、しまいには、関連団体主催のシンポの司会まで務めてみせている。

 

 本書はその集大成ともいえる作品となろう。第1章から3章では、韓国における教団施設や関連企業を丸裸に。4章では合同結婚式を受けて韓国に嫁いだ「日本人妻」たちの実相に迫る。5章は「ズブズブ」や「日本を背後で操っている」といわれ問題視された政治および選挙との関わり。6章は、悲喜こもごもの現役信者へのインタビュー。最後の7章は教団トップの田中会長へのインタビューとなっている。

 

 どの章も当然ながらマスコミでは一切報じられない内容が満載で、当方も目が開ける思いだった。ただ窪田氏としては教団擁護では決してなく、批判一辺倒のこれまでの報道とバランスを取るかたちで公平中立のスタンスの前提。しかし、これまでの報道が「ゾウ」とすれば、本書は「アリ」であって、バランスするにはあまりに非力。いきおい、本書を手にとった一般の読者は、窪田氏を準信者扱いすること必定。「いらん情報」「よけーなことしやがって!」かァ。それでも窪田氏は「記録」を残すことの重要性を説く。

 

 窪田氏は、今や政府から解散命令請求が出され、「反社」認定される教団を時流に乗って攻撃するのではなく、リスクを冒して正当な取材対象とした動機を本書で語っている。一つは、20年ほど前、窪田氏が雑誌の編集者の立場で、合同結婚式に参加したのち脱会した元信者の手記を担当。その同じ人物が、今回の騒動でやはりメディアの取材を受けていたのだが、その内容が、20年前自分が聞いた内容よりやや「ハード」になっていたと。なおかつ、今から30年前のエピソードであるはずが、「最近の旧統一教会でも行われている」と語ったことに、かなり違和感を抱いたこと。もう一つは、さるTBSのキャスターの信者に対する取材の傍若無人ぶりを上げて、かつての自分もそうだったと。「社会正義のために取材をする自分たちは何をしてもいいというメディアの『驕り』」を記者をやめてみてほとほとわかったとの自戒をこめて。彼の朝日OBという経歴とその風貌からは意外だが、”過ちては則ち改むるに憚ること勿れ”を実践できる人でなければ本書のような執筆はできなかったろう。だから、窪田氏は前のめりでなく、達観したところがある。

 

 ただ、田中会長のインタビューはちょっと内容が薄かったかなと。もっと突っ込みどころがあったが、それは本義ではないということだろう。それから、そもそも期待はしていなかったが、やはり残念と思ったのは、誰の口からも安倍総理に対するシンパシーと痛哭の思いを語る人がいなかったということ。安倍総理は狂信的なテロリストの凶弾に斃れたが、UPFのイベントにビデオメッセージを送ったことが直接の原因であったとすれば、むろん、ご本人もトランプ氏などの同様の動きをみて、自ら決断されたことは間違いないにしろ、責任の一端は免れない。

 

 当方はかねて、教団の身の丈にそぐわない「映え狙い」や「パンパカーン」至上主義に眉をひそめてきたが、最悪の形で実ってしまったといえる。安倍晋三という不世出の政治家(いずれ3度目の登板もあったかもしれない)を失った国家の損失とともに、彼にも昭恵夫人はじめ、ご家族があり、応援演説の直後から67歳の一人の人間の謳歌すべき人生があったのだ。事件はそれを無残に無慈悲に奪い、ご家族に取り返しのつかない悲嘆と苦痛を負わせ、慰むべき尊い御霊に、あらん限りの罵詈雑言を浴びせ、冒涜した。安倍晋三は二度殺された。一人の人間に対するこんな理不尽を見たことがない。日本人の所業ではないと言わざるを得ない。この一端の責任を痛感すべきと思う。

 

 そして本書でも幾度となく言及され、「統一教会」といえば、枕詞のように出て来るキーワードとして「マインドコントロール(MC)」がある。いわく「信者はみんなMCされている」と。「キモっ」と。

 

 さる10月に政府の解散請求を受けて、教団本部の顧問弁護士と法務局長の記者会見があった。彼らは教団の「頭脳」というべき東大法学部出身だ。その教団の「頭脳」が行った会見は総スカンを喰った。ただの一人もMCできなかったろう。彼らの理屈が正しいかどうかなどそもそも求められておらず、国民意識をものの見事に読み違えた。ただ彼らもMCの被害者だとすれば、MCの主体は誰か? 文鮮明師の霊か?「岸田連れてこい」がこれまた総スカン喰った韓鶴子総裁か?輪をかけて無理じゃね? 事実、韓総裁がトップに立ってからその子息はじめ、一定数の信者が出て行ったけどね。倅だってコントロールできてねえんだぞ。あと田中会長じゃないことは、見りゃわかんべよ。じゃ、誰も制御できないシステム(AI)なのか? SFの見過ぎじゃね? MCと聞けば「ターミネーター」や「マトリックス」の画が浮かんできてねーか?

 

 もし、MCなるまさに神業といえる人心掌握のノウハウを教団がもっているなら、潰してなくすなどという野暮なことせずに、ホワイトハッカーではないが、そのノウハウを国が吸い上げて、北朝鮮との交渉はじめ外交や警察の取り調べや犯罪捜査などに活用しない手はないはず。わが国に対する覇権主義が目に余る中共も手玉に取れるのでは?もしこれを当局者に提案すれば、「ぷっ」と吹いて終わりだろうけど…。チャンチャン。

 

 終章では、統一教会問題の伏線は、70年代後半から80年代半ばに勝共連合を中心に隆盛を極め、国会上程されたものの廃案となった「スパイ防止法」にありと説く。これこそ、一連の問題を読み解くカギだ。