リバイバル映画「大脱走」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 第二次大戦のさ中、新設されたドイツの捕虜収容所に、連合軍将校の捕虜たちがトラックで移送されてきた。ドイツ軍は、絶え間く起こされる脱走に手を焼いており、その常習犯らを、脱走が極めて難しいこの収容所に集めたのだ。

 

 だがそんな目論見とは裏腹に、初日からあの手この手で脱走を試みようとする捕虜たち。わけても米兵のヒルツ(スティーブ・マックイーン)は監視台と監視台の中間に死角があることを早くも見抜き、それを確かめるべく、有刺鉄線の先の立ち入り禁止の位置に野球ボールを投げ入れて、何食わぬ顔で回収に向かうが、監視台から機銃掃射を受ける。幸い弾は全て外れたものの、そのまま独房行きとなった。

 

 やがて、捕虜の間で「ビッグⅩ」の暗号名で呼ばれるバートレット(リチャード・アッテンボロー)が、ゲシュタポに連れられて収容所にやってきた。彼は当局に厳重にマークされるほどの大物で、集団脱走計画のリーダーだった。早速、顔なじみの仲間らを一か所に集め、250名を一挙に脱走させるという驚くべき計画をぶち上げる。それはこうだ。収容所の地面から穴を掘り進め、敷地の地下を通って森へ抜けるトンネルを3本通すというもの。トンネルは人ひとりがやっと通れるほどの狭さだが、そこに貨車を通してスムーズに移動できるようにする。

 

 只今現在、収容所に収容中の歴とした捕虜の身でありながら、そんなことが可能なのか。幸い収容所には、それぞれ得意分野をもつエキスパートがそろっていた。「調達屋」、「測量屋」、「偽造屋」、「トンネル堀り屋」、「仕立て屋」、「情報屋」、「製造屋」などなど。彼らの役割分担を徹底し、その成果を結集して、計画完遂のための完璧なシステムをつくり上げたバートレット。唯一、脱走後の逃走経路が不安材料だったが、集団脱走計画には加わらず、独自の脱走計画をもつヒルツに、単独での脱走後、情報収集して、わざと捕まりまた戻ってきてくれないかと無茶な頼みをする。最初は当然断ったヒルツだったが…。

 

 いよいよ決行の時がきた。ヒルツが先導して、地上に穴を開けてトンネルを通した。ところが顔を出してみると、森まで6メートル距離が足りない。通じたのは草地の真ん中で、何も遮る物がなく、サーチライトが当たれば、容易に見つかってしまう。この事態に動揺するバートレットら。千載一遇のチャンスが、このままみすみすオジャンとなるのか。その時、ヒルツが咄嗟に思いついた秘策をバートレットに告げる…。

 

 印象的なシーンは、収容所のルーガー新所長が捕虜の先任将校ラムゼイ大佐に、この収容所はスポーツや図書館、娯楽室があり、園芸もできるなど快適だと。望みのない脱走など夢想するな。終戦までの辛抱なのだからと諭す。だが、ラムゼイの答えはこうだ。脱走は全将兵の義務だと。後方かく乱し、最前線を支援するのだと。この言葉にハッとさせられた。確かにルーガーが言うように、拷問があるわけでもない。面従腹背でいいので、無理してまで脱走しなくともいずれ解放の時が来る。だが、捕虜の誰一人としてそう考える者はない。ナチスドイツには絶対屈しないという男気と自由のために命を懸けるという一大信念に圧倒される。

 

 重苦しいシチュエーションにも拘わらず、超有名なテーマ曲をベースに、コミカルさや痛快さを併せ持つ重層的な作品。スティーブ・マックイーンはじめ、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンなど当時のスター俳優が揃い踏み。63年公開なので、57年前の作品だが、映像のデジタルリマスターも相まって、全く色褪せない。 TOHOシネマズの「午前10時の映画祭」で、先週まで上映してました。

 

(監督)ジョン・スタージェス

(キャスト)

スティーブ・マックイーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・ドナルド、チャールズ・ブロンソン、ドナルド・プレゼンス、ジェームズ・コバーン、ゴードン・ジャクソン、ジョン・レイトン、デヴィッド・マッカラム