プロレスラー高山善廣に見る本物の強さとは | 世日クラブじょーほー局

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 高山善廣をよく知っているわけでもそのファイトが好きなわけでもない。UWFインターにいたなとか、安生洋二・山本健一とゴールデンカップスを組んだなとか、PRIDEではドン・フライとえげつないファイトやったなとか、それぐらい。あと…顔歪んでるなと。いつぞやネット情報で彼がプロレスの試合中、大けがを負い、半身不随だとかいうことも耳に入ってはいた。そうなんだーとただそれで終わった。

 

 8月8日付読売新聞17面「ケアノート」に、ひと際目を引くきりりとした美人が…高山奈津子さんとあり、高山善廣の奥さんだという。高山は昨年の5月に試合中のアクシデントで頭部を強打し、現在でも肩から下を思うように動かせないとのこと。そして今、「必ずリングに立つ」として、懸命なリハビリに励んでいるのだそう。

 

 記事によれば高山は、試合中に相手選手に技をかけた際、誤って頭からマットに落ち、その場で動けなくなった。診断は「頚髄完全損傷」。手術をして一命はとりとめたものの、医者からは「回復は難しい」「歩くこともままならない」と告げられた。しかし本人は絶対動けるようになると今でも思っているようで、もっとも奈津子さんも「それを否定できないし、否定することでもありません」と。現実がどうであれ、信念において寸分違わない夫婦に奇跡は起こると当方も信じたい。ただ今さらではあるが、リング上で高山に油断がなかったか気にかかるところだ。サイズがサイズだけに自分の体重で自滅する可能性は常にある。それはそうと、奈津子さんは高山の食事介護を担当し、筋肉の拘縮を予防するマッサージなどを行っているそうだ。

 

 高山夫妻には小学生の息子がいるのだという。高山は51歳、奈津子さんは50歳。子育てもこれからであり、夫婦の人生もまさにこれからという時ではないか。夫婦とも目の前が真っ暗になったであろうことは想像に難くない。まして、高山はプロレスラーとして元々の体躯(身長196センチ)とともに鍛え上げられた肉体こそ商売道具だ。それがベッドに釘付けされ、妻に介護されてしまっているようでは商売あがったりどころか、生き地獄そのものではないか。

 

 奈津子さんの以下の言葉は胸に沁みた。「そんな毎日をつらいとは思いません。一番頑張っている本人の前で私が泣いたら、夫は気持ちが立て直せなくなるかもしれません。彼に心配などさせてはいけない。身だしなみを整えるなど身辺の世話をしながら、世界が病室の中だけになってしまった夫の不満を聞くようにしています」。

 

 この31日には高山を支援するプロレスイベントが後楽園ホールで開催されるそうだ。「ファンやレスラー仲間の皆さんの支援が、『絶対に(リングに)戻ってやる』という夫の強い意志の源となっています」と奈津子さん。最後に彼女は、「高山善廣という男の強さを改めて感じさせられた私も、ともに強くありたいと思っています」と結んでいる。

 

 高山のケガによる不随の身は、当然ながらできれば避けたかった運命だったが、逆にそのことによって夫婦はより一層絆を深めあい、お互いが強くなれた。無論、綺麗事だけですまされる問題ではなく、これからも長い苦悩と苦痛の現実は続く。しかし、一歩間違えば死んでいたかもしれない命が、今多くの支援と夫婦の懸命な努力と愛の結晶として輝きを放ちつつある。高山善廣の回復を心から祈念したい。