映画「オリエント急行殺人事件」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 アガサ・クリスティーの手になる世界的なベストセラー小説の映画化。74年にはイングリッド・バーグマンやショーン・コネリーなどを擁した豪華キャストですでに作品となっている。今回はリメイクということになるが、なぜ今、「オリエント急行殺人事件」なのか。本作の製作には名匠リドリー・スコットが名を連ねているが、クリスティーファンの彼が長年の親友であり、直近では、「ローガン」や「ブレードランナー2049」を手掛けた脚本家のマイケル・グリーンに依頼し、二人が「クリスティー作品の魂を変えることなく、現代の世界に蘇らせたい」という思いで一致したという。なおかつアガサ・クリスティーのひ孫にあたるジェームズ・プリチャードも製作に参加している。

 

 物語は、まずエルサレムの教会で起きた窃盗事件の解決を依頼された名探偵エルキュール・ポアロが、嘆きの壁を前に集まった聴衆の見守る中、ということはすなわち、一触即発の事態の可能性の中、鮮やかに謎を解き明かし解決してみせる。そのまま当地での休暇へとなだれ込もうとしたのも束の間、ポアロのもとにイギリスから依頼が。急遽彼は、イスタンブールとパリを結ぶヨーロッパ横断の豪華寝台列車「オリエント急行」に飛び乗ることに。そこには性別や年齢や職業はもとより、国籍や人種など素性の違う乗客たちがいた。一期一会ではないが、そんな見ず知らずの人間が、一つ屋根の列車で同じ目的に向かって数日間生活を共にし、それが終わればもう二度と会うこともないというシチュエーションもこの旅の醍醐味だという。

 

 ランチタイムが過ぎたころ、食堂車でポアロが一人になったときを見計らい、美術商であるラチェットが近づき、自身の警護を依頼してきた。なんでも、脅迫されているのだという。彼の怪しい仕事内容や態度が気に入らないポアロはあっさり断った。

 

 順調に走り続けていた列車だったが、皆寝静まる深夜に起きた雪崩が、先頭車両を直撃し脱線、後続の車両は高架橋の上で立往生を余儀なくされた。そしてあろうことか、くだんの美術商のラチェットが血まみれの遺体で発見される。彼は何者かに刺殺されていた。ポアロはこの密室殺人事件の捜査を手掛けることになった。ラチェットの遺体は刃物で12か所もメッタ刺しされており、事件現場である彼の部屋には、実に多くの物証が残されていた。その犯人は乗客の中に必ずいる。乗客全員が容疑者である。だがポアロをもってしても捜査は暗礁に乗り上げてしまう。そんな中、事件現場で見つかった燃えかすから判明したのは、ラチェットが世にも有名な「アームストロング誘拐事件」にかかわっていたという事実だった。

 

 主演エルキュール・ポアロにケネス・ブラナー。彼は本作の監督兼任だ。宣教師ピラール・エストラパドスにペネロペ・クルス。オーストリア人のゲアハルト・ハードマン教授にウィレム・デフォー。ロシアの貴族であるドラゴミロフ侯爵夫人にジュディ・デンチ。殺害される富豪の美術商エドワード・ラチェットにジョニー・デップ。フェロモン巻き散らかしの米国人ハバード夫人にミッシェル・ファイファー。家庭教師メアリ・デブナムに「スターウォーズ」最新シリーズのヒロイン、テイジー・リドリーなど、この豪華キャスティングだけでも観に行く価値ありとも思えるが、目にも鮮やかなロケーションや列車の迫力がビンビンに伝わる抜群のカメラワークに心躍る。かつまたビッグネームというだけにとどまらず、役者の演技にも思わず目を奪われる。音楽も上等で、エンドロールの字幕がタイトル同様、青白い蛍光色というのも惹きつけられた。ラストは罪と罰について鑑賞者に深く考えさせる設定になっているが、泣けました。とにかく上質なミステリー映画。

 

(出演)

ケネス・プラナー、トム・ベイトマン、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ジョニー・デップ、ジョシュ・ギャッド、テレク・ジャコビ、レスリー・オドム・ジュニア、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、マーワン・ケンザリ、オリヴィア・コールマン、ルーシー・ボイントン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、セルゲイ・ポルーニン

(監督)ケネス・プラナー