別冊正論28「霊性・霊界ガイド」(産経新聞社)を読む | 世日クラブじょーほー局

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霊性・霊界ガイド 物質世界の向こう側―あの世を感じて生きる (別冊正論28)

 

 別冊宝島ならまだしも、別冊正論からこのようなタイトルの特集号が出るとは思いませんでした。一頃なら、このテーマであれば、「ムー」や「ウータン」(もうねぇか)など特殊な雑誌ぐらいしか扱えなかったはずで、読者は限られた変人?だったかもしれません。そういう意味では、隔世の感であり、画期的とも言えますが、やはりこれは時代の要請といえるのでしょう。

 

 本書はまず、巻頭にタレントの壇蜜さんのインタビュー「壇蜜の”あの世”問わず語り」をもってきて、”掴み”としています。この人には、”日本一美しい隣のお姉さん”などというフレーズでブレークしたエロ系タレントという認識しかなく、当方はどっちかというと”キモっ!”としか思えなかったが…(失敬) しかし少なくとも”日本一美しい”はないだろう(これまた失敬)。それはともかく、あらためて、あの独特の雰囲気と表情は、こういう背景からきていたのかと読んでほとほと感心しました。

 

 壇蜜さんは、調理専門学校を出て、和菓子店をもつ夢を抱き、和菓子職人に弟子入りをするが、ほどなく、彼女への出資計画者であった恩師の突然の死をきっかけに、「死に真正面から向き合ってみよう」と思ったのだという。そして彼女は、葬祭の専門学校に進み、エンバーミング(死体防腐処理)を学んだのち、研修労働で200体の遺体処理を手掛けたのだそう。

 

 しかし、いざ就職という段になって、エンバーマーの空きがないという事態に。そんな折、専門学校の講師だった大学教授からお声がかかり、大学の司法解剖の補助作業の職を得て、やはり200体以上を扱ったという。彼女は、「霊性」や「霊界」というものを大切にする家庭環境で育ち、幼少期から、それらがあって当たり前と思っていたと言い、それは、祖母と母からの大きな影響なのだという。

 

 そういう彼女は今、死ぬことは正直言ってずっと怖いが、死んだときのための自身の遺影は、いつも新しいものに更新しているのだそうで、できるだけ魅力的な死を迎えたいと言う。ちなみに芸名”壇蜜”の「壇」は仏壇や祭壇のそれで、「蜜」はお供え物の甘い蜜になれるようにという願いが込められているのだそうだ。

 

 本書で一番印象的だったのは、作家の家田荘子さんの手記「『極妻原作者から僧侶になった家田荘子と霊界』。「極道の妻たち」で、一躍スターダムにのし上がった家田さんだが、小さい頃から、(人には)見えないものが見えていたという。

 

 そんな彼女が、エイズ患者を扱ったルポ、『私を抱いてそしてキスして』の取材をする中、関わった200名以上が亡くなったそうだが、親しくしていた友人たちが、”亡くなってから” 彼女の元を訪ねてきたのだそうだ。彼女らは、死後の苦しみから家田さんへ救いを求めていたのだが、当初、それを理解できなかった。そうこうするうちに、家田さんに救いを求めて集まる霊にエネルギ―を吸い取られ、日に日に体調をくずしたという。そんな折、霊媒体質の人は、”行”をした方がいいと教えられ、行者さんについて行を始めたそうだ。彼女はやがて仏門へ入ることになるが、その際、剃髪した彼女に、「ウケ狙い」だとか心無いバッシングが浴びせられたのだそう。

 

 いまや僧侶となり、高野山本山布教師でもある彼女のライフワークが、吉原遊郭の遊女たちを供養し成仏させること。1923年の関東大震災で発生した大火災で、吉原遊郭の遊女たちが焼け出され、吉原公園にある花園池(弁天池)という二百坪ほどの池に次から次へと飛び込み、450名以上の遊女と50名以上の男性が亡くなったそうだ。その時の遺体の写真が掲載されているが、目を覆うばかりだ。これら彷徨える霊たちの供養を浅草ロック座の社長から依頼されたのが、きっかけだったそうだ。「光の当たっていない女性や世界にスポットを当てて書き続けてきた私にぴったりのお役目」と家田さんは確信したのだそう。

 

 この供養にかける彼女の切なる思いはこうだ。「絶対に皆を成仏させて幸せにしてあげたい。私が一生かけて、やり通したいお役目なのだから、全員が成仏できるまで、どうか私に供養させて欲しい。そして、全供養が終わるまでは私を生かして欲しい」と。こういう世界を信じられなければ、ウザったく思う向きもあろう。確かにやや鼻につく表現もある。だとしても、何の対価もなく、頼れる仲間もおらず、たった一人でよくやるなと。それが「見える」家田さんにしてみれば、当然なのかもしれないが、いやはや頭が下がる思いです。

 

 あと目についたのは、医師で東大の名誉教授でもある矢作直樹氏の論稿「救急医が感じた霊的な”その時”」。この中で、天皇が元日に行う神事である「四方拝」において、天皇は「国に災いが起きるならば、まず私の体を通してからにしてください」という意味の祝詞をあげられることを紹介し、天皇こそ「究極の利他精神」と力説しておられます。その他、各宗教のそれぞれの霊界観などもわかり、「霊界の入門書」として有用な論稿が占めています。

 

 そういうわけで、わたしたち自身も近代合理主義が産み落とした物質至上主義、科学万能主義を超克し、天皇陛下も示された利他精神に徹して、超宗教、超宗派による霊性啓発を通じ、真の恒久平和へと汗を流そうではないか。