リバイバル映画「いまを生きる」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 時は1959年、米バーモント州に所在する、歴史と伝統を誇る全寮制のエリート校ウェルトン。ここへ夢と希望とともに、親の期待を一身に背負って入学してきた新入生たち。厳格で格式ばった校風の中で、ひと際異彩を放つのが、同校のOBという新任の英語教師キーティング(ロビン・ウィリアムズ)だった。彼は生徒らに受験のための学問でなく、奥深い”詩”の世界を通して、命あること、自由であることの素晴らしさ、そしていかに生きるべきかを体当たりで伝えようとする。その詩の中の一節が、邦題の”いまを生きる”だ。

 

 最初、戸惑いがちだった生徒らもほどなくキーティングに引き込まれていく。しかしその授業は、傍目にはあまりに風変りで、同校の伝統にふさわしくなかった。たとえば”詩”の価値を公式に当てはめ、数値化することを教える教科書のページをクラス全員に破り取らせるなど。やがて新入生の中心的存在だった生徒に起こった悲劇は、激震となって同校を襲う。そしてその原因を巡ってキーティングが恰好のターゲットとなっていくのだった。その結末はいかに。

 

 本作の設定は、米国のベトナム戦争への介入前で、当時の安定した世情を伝えているが、いつの世も、人も羨む理想的な家庭ほど、内実はガラス細工で、家族それぞれの心は行き違いだったりする。本音がぶつけあえるかがポイントかなと。キーティングは、アメリカ版金八を彷彿とさせる面もあったが、坂本金八は何やかんや言っても体制派だったなぁ。偏狭な権威主義や行き過ぎた管理教育、非常時における学校当局の官僚主義は、エリート校の宿痾か。翻って、わが国内に立ちはだかるはやっぱり、腐っても日教組ですな。

 

 さて本作は89年の作品(日本公開は90年)。若かりし日の、そして在りし日のロビン・ウィリアムズ主演である。本作では、主演男優賞候補にノミネートされたが、受賞はならなかった。主演というにはちょっと無理があったのかもしれない(生徒らがメインだ)。しかし、その演技はやはり一級品だ。この人の普段のニヤケ顔はあまり好きではないが、本作ではナチュラルな感じが、逆に心ゆさぶられた。なぜ自ら命を絶ってしまったのか。本作を観てあらためて悔やまれた。本作は、「午前十時の映画祭」の21本目としてTOHOシネマズで上映中。

 

 

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