映画「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 元ロックバンドの父とパンクかぶれだった母という両親から生まれた高校生の主人公ミア(クロエ・グレース・モレッツ)。家族とその周りに集う人々は、皆ロック仲間で、歳の離れた小学生?と思しき弟さえ、普段からヘッドフォンでロックに興じている。そんなロック一色の環境で、ミアだけはクラシックを志向し、幼少のころ興味を覚えたチェロの才能を次第に開花させていく。

 ミアとその家族は、音楽の志向性は違えども、互いに尊重し合い、仲睦まじい家族の姿が印象的だ。ミアは、地元で人気急上昇中の、やはりロックバンドのボーカルの彼に見初められ、二人は恋におちていく。そんな、派手でなくとも人並に幸せな家族が、ある日一瞬で砕け散る。それは一家揃ってのドライブの途中、不慮の事故だった。家族の車は正面がひしゃげ、その衝撃の大きさを物語る。ミアは気付けば、事故現場を眺めていた。血だらけで横たわる家族とそして、自分自身の姿を。

 この時点から幽体離脱したミアの視点とこれまでの彼女の人生の経過が、同時並行的に進行していく。といっても、本作は何も霊界や天国など宗教色の強調を意図したものではないだろう。ティーンエージャーのドキドキ胸キュンの青春ラブストーリーがメインストリームにあって、微笑ましい家族愛を伝えるファミリードラマがしっかり脇を固めている。そして、いつ訪れるとも知れない「死」を意識するときに、家族愛の素晴らしさ、人と人との絆の尊さが実感として胸に迫ってくるのだ。ミアは事故によって、途轍もない肉体的、精神的苦痛と戦いながら、「生きる」ということの意味に向き合っていく。

 人は愛によって生まれ、その人生を互いに支えあって生きてく存在。「人」という字はそれを表しているという。人生を経るに従い、自分がいかに家族や友人、そして多くの数えきれない周囲の人たちに愛されてきた存在だったかを実感できること、すなわち感謝に溢れていることこそ上質な人生の証し。二度とない人生を無為に生きてはならないと本作は訴えているようだった。

(出演)
クロエ・グレース・モレッツ、ミレイユ・イーノス、ジョシュア・レナード、ジェイミー・ブラックリー、ステイシー・キーチ
(監督)R・J・カトラー