映画「アルゴ」を観る | 世日クラブじょーほー局

世日クラブじょーほー局

世日クラブ・どっと・ねっとをフォロースルーブログ。

アルゴ [DVD]/ワーナー・ホーム・ビデオ

¥1,500
Amazon.co.jp


 
1979年に起きたイランの米大使館人質事件を材に取った実話に基づく作品。だが、大使館そのものがメインの舞台ではない。実は、事件当初に6人の大使館員が密かに脱出し、カナダ大使私邸に逃げ込んでいた。その6人を救出する手段として、CIAの人質奪還のプロというベン・アフレック扮するトニー・メンデスが呼ばれ発案したのが、偽映画「アルゴ」作戦。これは、6人が「アルゴ」なる映画の監督をはじめとするカナダ人スタッフだと偽装して、革命防衛隊の目が光るテヘラン空港のイミグレを堂々と通過し、空路イランを脱出するという奇想天外なもので、その作戦遂行の顛末を描く。この史実は、長らく機密扱いだったが、クリントン大統領時代に解除され、明るみになったようだ。

 この事件の前年に、イラン革命が勃発し、パーレヴィ国王は追放されていたが、癌治療という名目でアメリカに入国していた。そのこともあり、イランでは反米機運が高まっていた。もとより大使館の保護がその接受国の義務であることは、国際法で定められているのであり、米大使館への過激派の乱入、占拠という事態は、一にかかってイラン当局の責任であるが、警備の手薄さなど見る限り、アメリカの情勢判断が甘かったことは否めない。それにしても、占拠された米大使館内には外交官や、海兵隊員、その家族など50名以上が人質となり、400日以上にもわたって厳しい環境下で監禁されたわけだが、偶発した危機的状況下の咄嗟の行動だったにせよ、6人だけわれ先に逃げ出しているのはどうも解せない。

 しかしこれほど高度かつ難解なミッションに、こともあろうに“偽映画作戦”とは、さすがハリウッドを擁するアメリカならではか。日本では到底考えられまい。他国でも同じか。無論、この案がすんなり採用されたわけでなかったのだが…。もし作戦がイラン側にバレれば、公開処刑を含めた過酷な結果が予想された。劇中、パーレヴィ派のスパイとされたイラン人が射殺され、クレーンで首を吊られて見せしめにされているシーンが出てくるほどだ。そのリスクは6人だけが負うに止まらず、作戦の中心人物であるメンデスも同様であり、彼らを匿ったカナダ大使夫妻もそうであり、さらに大使館の人質たちにも危険が及んだろう。またそうなれば、作戦の主体であるCIAのメンツも丸潰れだったろうが、実はこれが大きかった。

 映画の終盤は、思わず唾をゴクリと飲み込む緊張感漲るシーンが続くが、何より主人公のトニー・メンデスが、どのような突発的な状況下でも動じることなく、信念を貫き、目的観に徹して作戦を遂行していく様は圧巻だった。

(出演)
ベン・アフレック、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン、ブライアン・クライストン、スクート・マクネイリー、クレア・デュパル、クリス・デナム、テイト・ドノバン、タイタス・ウェリバー、マイケル・パークス、カイル・チャンドラーほか
(監督)ベン・アフレック