佐々木譲著「警官の血(上)(下)」(新潮社)を読む | 世日クラブじょーほー局

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 タイトルの「警官の血」とは、今でいうDNAの疼きといった響きよりは、いささか因縁めく。物語は三部構成となっていて、それぞれ、「清二」「民雄」「和也」と親子三代の名前がそのまま冠されている。

 戦後間もない頃、まだ敗戦の爪痕が色濃く残る東京の下町、上野・谷中界隈を舞台にして、警視庁の巡査大量採用により警察官となった安城清二は、管轄外で起きたとある二つの殺人事件と向き合っていく。

 念願だった駐在所勤務が叶うも、やがて迷宮入りしたその事件は、執拗に彼とその家族に絡みつき、その人生を翻弄していくことになる。

 息子の民雄も警官となり、その優秀さから将来を嘱望されるが、公安の特殊任務に神経を病み、人生の歯車を狂わせていく。三代目の和也も周囲の反対もあったが、自ら警察官の道を選び取る。そして異例のスピード出世で警部補となり、本庁主任として活躍するが、法か正義かのはざまで呻吟していくのだった。
 
 何か憑き物に憑かれたごとく彼ら親子三代を駆り立てたのは、人間としての己の誇りか、はたまた警官の使命感なのか。その間、残された家族の不憫さに思いは至らなかったろうか。

 父から息子、そしてまたその息子へと受け継がれてきた警官のその血筋ゆえにつきまとう漆黒の闇のごとき因縁が彼らを追い詰める。そこには、戦後66年を経てなお癒えることのない戦争の深い傷跡を痛感させずにはおかない。

 敗戦から現在に至るまでを時間軸に取り、警察という治安を司る行政機構の内部で繰り広げられる赤裸々な人間模様をクローズアップさせながら、人間存在の本質に鋭く迫る、重く深いニューマンストーリー。

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