映画「外事警察」-その男に騙されるなーを見る | 世日クラブじょーほー局

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 ウィキぺディアによれば、外事警察とは、「公安警察の中で、外国諜報機関の諜報活動・国際テロリズムを捜査する部門」とある。その担い手は、警察庁警備局外事課を筆頭に、警視庁公安部・各道府県警察本部警備部の外事課、各警察署警備課の外事係である。

 ただ、サブタイトルの「その男に騙されるな」とのエキセントリックなフレーズと劇場で購入したパンフレットには、「民間人を追いつめ、取り込み、使い倒す“公安の魔物”」とあり、これでは、詐欺師まがいのトリックスターか何かをイメージしてしまい、本質を見誤る。原作者である麻生幾の真意もそうではないだろう。主人公の住本は確かに目的のためには手段を選ばず、手荒い捜査の場面も出てくるが、しかし同時に彼は国益のためには、己の命も顧みずという信念を貫き、ついに大仕事を成し遂げる。このことこそ本領だろう。何せメインテーマとなっているのが、世界を震撼させる核テロをめぐる事件だ。と同時に本作は、家族愛とその絆を浮かび上がらせる物語ともなっている。子を持つ親であれば痛いほどそれがよくわかる。

 折も折、在日中国大使館の1等書記官によるスパイ行為とみられる事件が発覚した。しかし「スパイ防止法」がないわが国では、外登法による別件捜査しかできない。これを機にスパイ防止法制定の機運が高まることを願う。

 今、日本人は、北朝鮮の拉致・核問題もそうであるが、中国の覇権主義による尖閣諸島などを狙った海洋進出の動きなどにようやく警戒感を露わにし、国防力の強化を叫ぶようになった。しかし何を守るかということである。確かに、軍事力を逞しゅうし、法整備を完璧にして、わが国の領域、国民、主権を外敵から守るというのだが、肝心のそこに住む日本人が中国人化していては世話はないということだ。

 我々日本人の誇りは何か?GDP世界第三位の経済大国だとか、ひと頃ほどでないにしろ治安がいいこともそうだし、山紫水明麗しい国だともいえよう。しかし究極的には、125代続く天皇を戴き、2600年以上の歴史を持つ世界最古の国であり、そのもとに独自の伝統文化が育まれ、臣民には、和を以って尊しとなすメンタリティが生きづいてきた。皇統が神話に連なる正統性ゆえに権威となり、皇位簒奪を狙ったのは、長い歴史の中で弓削道鏡ただ一人だったし、易姓革命は起こらなかった。だから皇位の男系継承がシナ文化の影響などとはあり得べからざる言説だ。

 それはともかくとして、昨今敢えて法を犯すことまでは絶対しないが、公衆道徳という点では、他人への迷惑や不快感を顧みず、平然と振舞う同胞が老若男女を問わず目立ちますな。主として交通ルールに関してのことを指すが。これは東京独自のものというわけではなかろう。“他人に迷惑を掛けない”とは、小学生時分に押さえておくべき、社会生活を営む上で‘最低限’守るべき心得だが、それさえ弁えられず、頭の回転だけはよく回るチンケな日本人が目立つ。畢竟それは、意図せずとも自分さえよければいいという信条の表明であり、それはとりもなおさず自ら日本人否定の証明の挙に出たも同然なのだが、当人にはわからない。

 当方は、ここで何も権力擁護しようというのでないし、逆に警察の冤罪事件などには激しい怒りをもつ者だ。むろん人によってこの作品の見方は様々でいいが、しかし敢えて、先の日本人を喪失した日本人に言いたい。自らの命を顧みず国益に殉じようとさえする住本の姿に接し、自らの一挙手一投足を見つめ直す機会にして欲しいと。

 最後に、主人公の住本健司を演じる渡部篤郎は、以前から生意気な若手俳優だと思っていたが、いつの間にかシブさが増し、独特の雰囲気を醸し出すようになっていた。これからも期待したい。

(出演)
渡部篤郎、キム・ガンウ、真木よう子、尾野真千子、田中泯、石橋凌、遠藤憲一、余貴美子、北見敏之、滝藤賢一、渋川清彦ほか
(監督)堀切園健太郎