まさにカラオケは日常になり、誰でも気軽にカラオケに歌いに行くようになり、日本のカラオケ文化は、日々進化をし続けています。さらに近年の機材の性能の進化も目を見張るものがあり、音が非常にクリアになり、ダイナミック映像とともに臨場感あふれる演奏ができるようになりました。
そんな中で、現在注目をされてきているのが「ヴォイストレーニング教室」です。普通のカラオケ教室では、グループ指導の場合、新しい楽曲を、先生が歌ったり、楽器を弾いたりしながら、何回も歌い覚えていく形式をとります。「ヴォーカル教室」などの指導の場合でも、個人指導でも、時間が限られているので、楽曲指導だけで目いっぱいになります。
しかし、近年注目されているのが「ヴォイストレーニング教室」です。これは楽曲指導よりも、一人ひとりの歌唱力を伸ばすために、基礎練習から始めるコースなのです。楽曲を歌えても癖が多かったり、発声に問題があったりする人がいます。もっと歌唱力を伸ばしたい、うまくなりたいという要求に対応した教室なのです。最近はこの教室が注目され、単なるまとめて指導するカラオケ教室よりも「ヴォイス」を習いたい人が増えてきているのです。
楽曲がある程度歌えるようになれば、やはりもっと上手に歌唱したい、上手くなりたいという要求は自然に出てくるのは当然です。それに着目し、その要求に対応したものが最近増えてきているのです。
私は、これまで実践してきた様々な音楽指導では、このヴォイストレーニングは重視してきたので、どの教室でも必ず時間をとってきました。基本を重視することが好まれるのか、人が増え続けているのが現状です。歌声教室もヴォーカル教室もいっぱいです。
私のヴォイストレーニング教室もあっという間に希望者で人が埋まってしまいました。
昨日はその「ヴォイストレーニング教室」でした。本来なら個人指導がいいのだけれど、人数が集まり過ぎ、グループ指導になってしましました。4人のグループ指導でもいいということで、2時間の時間帯で4人同時にレッスンをしています。
最初は体操から始め、十分に身体をほぐします。特に上半身、肩、首、顔をほぐしてレッスンンに入ります。ロングトーン、レガートを十分に声出ししながら、喉を広げていきます。腹筋指導をしてスタッカートの発声を十分にします。それからスケール(音階)の練習です。いろいろキーを変えながら様々な音階で発声をしていきます。低音域から高音域まで十分に響きを整えながら発声し、豊かな声の響きを作っていきます。
この場合の発声は合唱の発声ではないので、決して「頭声発声」は使いません。マイクを使ったヴォーカル発声のためのトレーニングなので、裏声ではなく表の声の発声で進めることが重要になります。むしろ胸声やストレートな声を重視した発声を行います。
発声法は、ジャンルによって全く違うのです。様々に幾種類もの発声があるのです。クラシックの発声、合唱の発声、民謡の発声、ヴォーカルの発声、ミュージカル発声などそれぞれ全く違うのです。ヴォーカルの発声でも、人によって色合いは様々です。
発声をどう取り組み、曲に応じた発声を身につけさせるかは、本当は、音楽指導、歌唱指導の重要なポイントなのです。
約40分程度、ヴォイストレーニングだけの指導を続けます。様々なパターンを使って練習を重ねていくうちに、不思議なくらい一人ひとりの声が出てくるようになるのです。
これがヴォイストレーニングの秘訣なのです。基礎からしっかり積み上げれば、どんな人も上手になれるのです。これが「声が伸びる」ということなのです。
4人のグループレッスンなので、細かい一人ひとりの指導までは生き届かない所もありますが、個人は逆に4人で学べるから気が楽ということもあるのか、楽しく緊張しないで取り組んでいます。
40分程の「ヴォイス」指導をしてから、一人ひとりの課題曲指導に入ります。
課題曲は、生徒個人で設定することにして楽譜を用意してきます。一人ずつ一通り歌ってから個人指導に入ります。
ここで重要なのは、カラオケのキーは楽譜と違ってい場合が多く、どのキーで歌えば一番歌いやすく、声が出るかということを見極めてやることなのです。
カラオケで歌いやすいキーを探し、キーが決まったら、そのキーでピアノで練習するのです。当然楽譜とはキーが違っていますが、ピアノではカラオケのキーで弾かなければなりません。ピアノで伴奏しながらワンポイントレッスンをします。間違っているところはその都度止めて、指導できるのがいい所です。そこが指導者の見せ所かも知れません。必ず生徒は、レッスンの中で今までより上手になることができるのです。
さらにここに指導の「裏技」があるのです。カラオケのキーでピアノを弾く場合、楽譜は別のキーですから、楽譜通りには弾けません。その楽譜を見ながら、カラオケのキーで弾くこと、これを瞬間的に実践できる力量「瞬間移調」の力量が「裏技」なのです。
クラシックだけをやってる人にはそれができません。ポピュラーピアノの音楽理論を学んで実践しないと身に着かないのだけれど、私はヴォーカル指導での決定的な「裏技」だと思っています。
さらにデジタルピアノのトランスポーズ機能を知っている人は、さらにこの「裏技」が楽になります。この機能を使えば、どんな曲でも簡単に演奏することができるのですが、ただ音楽理論を知っていないとこれを使えないことになります。
この「裏技」を、私は様々な実践を通して身につけることができましたが、「ヴォイストレーニング」や「ヴォーカル指導」でのピアノ活用には、最大かつかけがえのない技術であるということができるのです。
例えば昨日のレッスンでは、美空ひばりの「川の流れのように」を選曲して楽譜をもってきた生徒がいました。カラオケを歌ったら、楽譜より「減5度」低いキーでした。(減5度はカラオケのキーコントロールで6個下、減5度は和声用語でここではキーコン6個下とだけ)持ってきた楽譜は合唱用の楽譜でした。美空のキーはそれほど低かったのです。でもその人は、美空のそのキーでは、低すぎて歌えないので、キーを2個上げて歌ったのです。
その歌ったキーを探し出し、瞬間的に伴奏も入れながらピアノで弾いてあげること、このことが「裏技」だということなのです。
持ってきた楽譜はイ長調(A major)でした。カラオケのキーは変ホ長調(E♭major)でした。生徒が歌ったキーはへ長調(F major)でした。この場合、指導者はどうするかということです。結論は、イ長調の楽譜を見ながらヘ長調で伴奏を含めて全部弾くということです。これは普通は大変なことなのですが、これができることは飛躍的に指導力を高めることができるのです。
これが「瞬間移調」の「裏技」なのです。デジタルピアノのトランスポーズ機能を使えば、極端な場合、この音楽を一番簡単なハ長調で弾くこともできるのです。
または「瞬間移調」ができない人は(ほとんどの人はできないとは思うが)、楽譜通りに弾いて、その人のキー(へ長調)の高さで出すこともできるのです。(これは楽譜通りに弾ける人は可能です。でもトランスポーズの理論は必要です)
本当にこれは説明すると長くなるけれど、驚くほどの「裏技」なのです。歌の教室をもっている友達の講師の方も、この「裏技」を聞いてくることがあるけれど、何度説明してもなかなか飲み込めないらしく悪戦苦闘しているようです。でも「瞬間移調」で弾く技術はともかく、何とかこのトランスポーズをマスターして、自分の指導の場面で生かしたいと思っていることは確かなようです。
長くなりましたが、このようにして「ヴォイストレーニング」での楽曲指導を、片っ端からこなしていけるので私も助かっています。
昨日の楽曲指導は、全部この「瞬間移調」とトランスポーズ機能を使って、「涼しい顔」をしながら指導することができました。生徒にはそのことは話しませんが、どんなキーでも曲を弾くことができることを不思議そうにして眺めていました。
こうして昨日の「ヴォイス」レッスンは、2時間無事に終了しましたが、この中で取り上げた楽曲は、「いろは坂」「夢見る想い」「友禅流し」「ラブイズオーバー」「川の流れのように」の全5曲で、あっという間に指導をこなして充実した2時間を過ごすことができました。
終わりに生徒が来て、「今度レッスン風景をテープで録音したい」と言ってきました。
レッスンのピアノの音を録音して家でも練習したいとのことでした。自分で歌うカラオケのキーと同じキーで弾いたピアノ伴奏で練習したいという生徒の気持ちの表れかと、あっさり許可してしましました。ここにも「瞬間移調」の「裏技」が生きているのだと痛感しました。
私の「ヴォイスストレーニング」教室は、歌唱の基本重視から出発して、歌唱力を高めるための指導を積み上げ、さらに個人ごとの楽曲指導にも「裏技」を駆使して、ピアノの活用により、より密度の高い充実したレッスンを目指しているのです。
毎回のこの教室が、私にとっては、勉強の実践の場でもあり、指導の効果を試す機会でもあり、不思議と楽しく、充実した気持ちで取り組める教室になっているのです。
これからこのような「ヴォイストレーニング教室」は全国の至る所で発展していくのではないかと思っています。それが現代の歌を上手に歌いたいという人々の切実な願いに、ドンピシャで対応しているからなのかも知れません。