学校や家庭で問題を起こすことから発達障害を疑い病院へ連れて行きました。

子どもが病院でADHDと診断されましたが対応方法が分からないという方が病院から当所を紹介されて来所されます。その際に説明している内容の一部をご紹介したいと思います。


 

1.ADHDの基本特徴を理解する

ADHDは注意欠陥多動性障害といい、注意力が散漫したり動き回るなどの多動があります。性別特徴としては、男性は多動が多く、女性は注意欠如が多いです。また、ADHDは生まれ持っての特性ですので認知行動療法等での矯正はある程度可能(その人によって限界がある)ですが治るものではありません。

 

脳内の神経伝達物質である「ドパミン」や「ノルアドレナリン」が大きく関与しているといわれています。ドパミンやノルアドレナリンは、脳の中で「注意や感情などのコントロール」にとても重要な役割を担っています。

ADHDは、これらの重要な神経伝達物質が通常よりも不足していたり、神経伝達自体に異常が生じていたりすることで、注意欠陥・多動の症状として現れる発達障害であるとされています。

 

2.ADHDに効く薬があります。

ADHDに効く薬( ドパミンとノルアドレナリンの働きを活性化させることで、ADHDの症状を改善する働きをもつ治療薬 )はコンサータ・ビバンカプセル・ストラテラ・インチュニブなどがあります。特にコンサータは7割の患者に効果があると言われています。

 

ADHDの原因は、脳内のドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足にあるとされていますが、このドパミンやノルアドレナリンは脳内に分泌された後、しばらく経つと徐々に再度脳内に吸収されていきます。
コンサータは、脳の中枢神経を刺激して、脳内のドパミンの再取り込み口を塞ぐことにより、脳内でのドパミンの濃度を増やすお薬です。

成分が覚せい剤に似た成分であるため、処方は登録医が処方し、患者も登録が必要となります。

これは、本剤が「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断、治療に精通した医師によって適切な患者に対してのみ処方されるとともに、薬物依存を含む本剤のリスク等について十分に管理できる医療機関及び薬局においてのみ取り扱われるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること」という承認条件を厚生労働省が付けたことへの対応となり、不便ではありますが従うほかはない国のルールです。 


 

3.コンサータの服用の仕方

①コンサータを飲むときに割ったり噛んだりしてはいけない

これは、コンサータの錠剤を割ったときのモデルを示したイラストです。コンサータはこのように、錠剤の中に三層に閉じ込められた有効成分を、薬物放出口の小さな穴から体内の浸透圧に応じてゆっくり時間をかけて放出される構造になっています。この特殊な構造によって、朝に内服してから夜までの間、長時間効果が途切れることなく薬が作用するよう設計されています。

そのため、コンサータを内服するときには、錠剤を割ったり、噛んだり、舐めたりするようなことはせずに、そのまま水で飲みこんで服用する必要があります。
もし噛んだり舐めたりして中の成分が一気に溶け出てしまうと、副作用が強く出てしまったり、期待する薬の効果が得られない可能性があるので注意が必要です。

 

②夜に寝られなくなってしまうため、お昼以降に飲んではいけない

コンサータは、内服してから効果が12時間持続する長時間作用型のお薬です。
そのため、朝に飲み忘れたからといってお昼以降に飲んでしまうと、就寝時間になっても眠気がなかなか起きずに、自分の意志とは逆に眠ることが出来ず、睡眠不足の原因となってしまうことがあります。飲み忘れには注意しましょう。
万が一、飲み忘れてしまった場合には思い出したときにすぐ内服して、もしお昼を過ぎていたらその日は原則飲まずに、翌日からいつも通り内服を再開するのが良いと思います。

③病院と薬局に行くときには「患者カード」を忘れない

コンサータは第1種向精神薬に分類されており、薬物乱用の原因薬物として問題になったことがあるという背景から、医薬品の厳しい流通管理が義務づけられています。
そのため、コンサータを扱うことが出来る医師や薬剤師は「ADHD適正流通管理システム」という国が認めたシステムへの登録が必須とされています。 

同様に、2019年12月からはコンサータの不適正な使用を防ぐために、患者さんも同様に登録制となっています。登録の際には身分証明、薬物乱用歴の有無、第三者からの情報もしくは情報源(通知表、連絡帳、母子手帳等。20歳未満の方は保護者の同伴、署名)が必要であり、登録された情報は個人情報保護法に準じて管理されることになっています。 

そして、登録後には上記のような「患者カード」が発行されることになっています。
このカードを忘れてしまうと、すぐにお薬を出してもらえなかったり、色んな手続きをしてカードの再発行をしなければなりません。患者カードの紛失に注意して、受診時にはお薬手帳と併せて忘れず持参するようにしましょう。

 


4.ADHDの特性特徴について

落ち着きがなく注意を持続することが難しい、または困難である。 授業中立ち歩く、または途中でどこかに行ってしまう
気が散りやすい。 集中力が続かない
ルールを守ることが難しい
指示は理解できても、従うことが難しい
忘れ物やなくし物が多い
話しかけても聞いていない
約束などを忘れてしまう
細かいことを見過ごしてしまう(ケアレスミスが多い)
課題や遊びなどを途中でやめてしまう
物事をやり遂げることができない
順序立てることや整理整頓ができない
コツコツやること(勉強など)を避けたり、いやいや行う
過去の出来事に拘り被害者意識が強い
相手の話を最後まで聞くことが出来ずかぶせて自分の話をしてしまう
感情的に怒りを爆発させてしまい自分で抑えるのが難しい
計画を立てて予定通りに行動することができない
早とちりしやすい
忘れっぽい
遅刻をしたり納期に間に合わないことがよくある
興味のないことはとことんやる気がでない

 



5.癇癪を起した場合の対処法

 

子どもが癇癪を起す理由の多くは”自分の考えや感情を理解してくれない”ことから癇癪を起すことが多いです。つまり、対応方法を間違えている可能性があります。子どもが何かいけないことをしてしまい、それを正そうと𠮟りつけてしまう、話を聞く前に感情的な言葉や態度で歩み寄ってしまうなどがあるとADHDの子どもは自分でもコントロールが出来なくなるくらい長い時間、泣き叫んだり暴れたりしてしまいます。

癇癪を起した際、対応が間違えていた場合は、まずは謝り気持ちを聞かせてと言ってみましょう。その後、自分の気持ちを言ってくれたら教えてくれてありがとうと伝え落ち着いたところでどうするべきだったかのか、本人に考えさせ答えさせるようにすると良いです。

 

 

6.大人のADHDによくある困りごと
大人に多い困りごとで最も多いのは遅刻や忘れ物が多いです。また、一度に複数のことをしなければならない場合なども慌ててしまったり人によってはパニック状態に陥ります。

このような状況の対処(対策)の仕方は、スマホアプリを利用してスケジュール管理をしたり、手順書を作成してから着手するのが有効です。

 


7.ADHDと併発しやすい障害

ADHDと併発することが多いのがアスペルガー症候群(ASD)です。アスペルガー症候群は、相手の言っている事の意図や感情を読み取るのが苦手という特徴があります。故に、コミュニケーションにおいて問題が生じ人間関係構築が苦手であったり、周囲から人が遠ざかったりすることがあります。(空気が読めない発言や行動をしてしまいますが、相手がそれを教えずに対応することで本人は不適切な言動をしていることに気付かずにいることが多いため、後に人間関係が壊れ相手が嫌なことをしてきた際に、自分は何もしてないのに突然、嫌なことを言われた、されたと感じることもあります。)子どもの頃にASDが発見されなかった方の多くは夫婦生活で問題が起きることが多く、非ASD側は、気持ちを理解してくれない、私のことは心配もしないし興味がないのだと感じてしまいうつ状態(カサンドラ症候群)になる場合もあります。話がかみ合わない、他人の気持ちが理解するのが難しい、何故、相手が怒っているのか分からない、場に合わないことを言ってしまう場合はASDの可能性が高いです。

 

 

8.ADHDと精神疾患

ADHDと精神疾患か重なると対人関係が崩壊することが多いです。これまで見てきた方の例では、ADHDと境界性パーソナリティー障害、アダルトチルドレン、カサンドラ症候群を併発し非常に攻撃的な性格で煽り運転やクラクションを鳴らされただけで車から降りていき叫び散らす。幼稚園児の子どもの顔をひっぱたく、足を踏みつける、椅子から叩き落す、些細なことで子どもを叫びながら𠮟りつけるなどの行動が抑制できなかった方もおります。また、境界性パーソナリティー障害は希死念慮・見捨てられ不安もあるため、死にたい、殺したい、と考えたり、不倫なども行い相手方の妻より慰謝料請求されているケースもあります。

ADHDの衝動性の抑止と精神疾患を併せ持つ場合、早急に治療しないと大きな問題を抱えてしまうことになります。