カウンセリングサービス代表の平準司です。
この日、おみえになった女性のご相談はご主人のことでした。
ご主人は高学歴。
かなりの勉強家で、理系の大学院を出て、いまは研究職についているということです。
真面目で誠実、浮気などするようなタイプではけっしてありません。
で、この人ならと彼女は結婚することにしたわけです。
しかし、夫婦となってともに暮らすようになっても、「なぜか主人とは、感情のふれあいや心の交流がまったくできない‥‥」、これが奥さまのお悩みだったのです。
とくに女性のみなさんにとって、感性や感受性は素通りできない問題ですよね。
たとえば、女性たちが大事にする感性に「カワイイ」というものがあります。
どのようなものであっても、女性が「カワイイ」と感じたら、それは愛の対象となるのです。
それがどれだけ気持ちの悪いものであっても、「キモカワイイ」にしてしまえば受け入れられますし、どれほど不細工であったとしても、「ブチャカワイイ」にしてしまえば、女性は愛することができるのです。
しかし、このご主人とは、カワイイの片鱗を感じる以前に、心の交流ができないんですね。
それゆえ、「私のことをどう思っているのか」さえも彼女にはよくわからないのです。
彼女としては、ご主人に「愛している」と言われたいのですが、それを聞くと彼は「愛しているというのは、どういうことなんだろうね?」と返す始末。
さらに、話は人類愛のことにまで広がっていきます。
恥ずかしがっているのかもしれませんが、奥さまのほうはウンザリしています。
このご主人にかぎらず、男性は多かれ少なかれ感情を抑圧していて、唯一、感情を感じられるのは、性的なふれあいのときだったりするものです。
ところが、今回のご主人のようなタイプの男性は、性的な行為も必要最小限しか自分に許可しないことが少なくありません。
性的な衝動という、自分でコントロールしがたいエネルギーを感じることを嫌がって、愛に身をまかせたり、われを忘れるほど行為に没頭したりということをしたがらないのです。
このタイプの男性はいつも、「自分がいったいなにを感じているのか」ということよりも、「自分はいったいなにをせねばならないのか」ということばかり考えています。
そして、いつも、「自分が感じていること」や「自分のしたいこと」はあとまわしになります。
さらに、このタイプの男性は、ルーティンを守りたがります。
あれもこれも決まった通りに行動したいわけです。
たとえば、旅行に行くにしても、まるで旅行会社の添乗員であるかのようにルートを決め込みます。
ちょっと寄り道したり、予定にはない店でコーヒーを一杯飲んだりももちろん許されません。
決めたことをしなくてはならないからです。
「だってー、寄り道、楽しいじゃん!」
「その日の気分で、行くところを決めようよ!」
こんな考え方は、彼の中には存在しないのです。
もしも、あなたのご主人がこんなタイプの男性だとしたら、パートナーであるあなたが感情を教えてあげることからはじめなければいけません。
彼が自分から切り離してしまった感情を、あなたが代わりに感じてあげて、「あなたはいま、こんな感情を感じているのよ」と教えてあげるのです。
あなたを通じ、彼がだんだん自分の感情を取り戻しはじめると、彼の中にはようやく「自分がほんとうにしたいこと」や「自分の心がよろこぶこと」が湧き上がってきたりします。
そんな彼の心のリハビリには少し時間はかかるかもしれません。
このタイプの男性は、自分を投げ捨て、心と遠く離れてしまっているので、女性にはあたりまえに思われるようなことでさえ、自分に許可することが難しくなっているからです。