カウンセリングサービス代表の平準司です。
彼はだれよりも、あなたの美しさや価値、光を見続けていた
大学時代の彼女は、男子学生たちのマドンナでした。
数年後、その彼女が選んだ結婚相手はちょっと冴えない男性で、お友だちは一様に「なんで?」と言ったとか。
しかし、彼女のほうがなぜだか彼に惹かれたのがはじまりとのことで、その後、おつきあいが始まり、結婚に至ったのだそうです。
結婚すると、彼はとてもエラそうでした。
なにごとも彼の言うとおりにしないと機嫌が悪くなるので、彼の意思を優先しながら結婚生活を送ってきましたが、結果的に彼は浮気をし、この結婚は破綻したのです。
離婚したとき、彼女の友人たちはみな、「よかったわよ。あの彼はあなたには向いてなかった」と喜んでくれました。
彼女はそれには少し驚き、そして、友人たちの思いとは裏腹に、女性としての自信をすっかり失っていったのです。
「なにをしても、彼は満足してくれなかった。料理も、掃除も、ほかのどんなことにも、文句ばかり言っていました」
そんな彼女に、私はこう言いました。
「ご主人はずっと、あなたと競争していたんだと思いますよ。
あなたはマドンナで、ご主人にとっては光り輝く存在だった。
“そんな彼女がなぜ、オレを選んでくれたんだ?”とあなたの愛を疑いつづけていたのでしょう。
そして、“いずれオレの化けの皮が剥がれて、ウンザリされてしまうんだろう”という恐れをもっていたのだろうと思います。
そう思えば思うほど、あなたを支配するかのような態度になり、まるでカゴの鳥のように、家にくくりつけようとしてしまったのではないでしょうか」
彼女は腑に落ちたようで、こんな話をしてくれました。
「ショッピングでも同窓会でも、とにかく私が外出することを嫌がりました。
そして、帰宅時間が少しでも遅くなると、“いま、どこにいるんだ?”と電話がかかってきたんです」
「そうでしょうね。ご主人から見たあなたは、ずーっと憧れのマドンナだったんです。
そのため、ご主人はあなたといるとき、愛情よりも、劣等感ばかり感じていたのでしょう。
だから、彼はあなたをけなさなければならなかったんです。
けなすことで、あなたの点数をどんどん下げ、自分と同じぐらい低いところまで落とさなければならなかった。
ご主人は下でしかつながれないタイプだったようです」
そして、私は続けました。
「同時に、彼はだれよりも、あなたの美しさや価値、光を見続けていた人のようですよ」
ご主人にけなされ続けていた奥さまは、自分の価値など見てもらっていないと感じていたわけですが、じつはまったく逆で、ご主人にとって奥さまはいつまでもまぶしい存在だったんですね。
彼女はできるだけご主人の思いに沿おうという努力や、ご主人を愛そうという努力をしました。
しかし、本来は光り輝く魅力をもっている彼女が、無理に努力している姿を見ることで、自分の価値をますますちっぽけに感じてしまうという悪循環にハマッていたとも考えられます。
「では、私はいったいなにをすればよかったのでしょう?」
「ご主人には、どうすればあなたを喜ばすことができるかとか、あなたがなにを望んでいるのかといったことが、まったく見えていなかったのでしょうね。
“こんな僕には、きみを喜ばせられることはなにもない”というように‥‥」
彼女は彼のことばかりを考えて過ごしてきました。
しかし、「彼に愛してもらう」ということについては、なにもしてこなかったようです。
男女関係はキャッチボールのようなもの。
一方的に愛するばかりでは、うまくいかないこともあるのです。