タクシーの中で寝てもいいよと言われたけど私はずっと起きていた

この人に甘えたい。。。ちょっと積極的になって肩にもたれてみた

しんは拒むことなく受け入れてくれた

「好き」と言われたものの出会ってから会うまでに時間がかかった

私に会わなくても平気だろうと思う気持ちが強かった

「もしまた次に会うのが長引いて1ヵ月後になっても全然大丈夫でしょ?」

「いや、もう無理だよ

これからはせなさんが嫌でないならどこかに行けなくても

ただのドライブでも良ければちょっとの時間でも会いたい」

私が唯一気になっていたのは会う場所

遠くで待ち合わせとなると移動に時間がかかるのでしょっちゅうは無理

近くに住んでいるのに遠くでというのが嫌だった

そして気になることは他にもあった

「私と会うのにたくさんのリスクがあるのにこうして会ってしまって良かったの?

私がもし最悪な人間だったらどうするの?」

「確かにね(笑)

でもせなさんはそういう女性には見えなかったしとにかく自分が会いたかったから

どんなに地元から離れても見られる時は見られるものだし

でもそんな時に見られて問題になっても後悔しない相手だから

後悔しそうな相手なら最初から誘わないよ」

何事も迷うことなく素直に答えてくれる人

私か見るとこの人はとても眩しかった

私の想像もつかない世界で動いている人だけど

本来の心の中はとても綺麗で純粋なんだ。。。


もしもこのまま誘われたら私はどうするだろう

ちょっと期待している自分に恥ずかしさもあった

でもそんな期待通りのことは何もなく順調に地元へと近付いた


「これからはマメに連絡しちゃっていい?

あと平気そうな日や仕事の休みを教えてね

今日もこのまま離れたくないけどまたすぐに会えると信じてるから」

「わかった

今日帰ったら今後の休みや会えそうな日をメールするね」

私が先にタクシーを降り別れた

淋しさや不安もなくとても安心してホッとする時間が終わった

そして帰ってから少しすると

「今日はどうもありがとう

幸せな時間を過ごすことができました」

気持ちは一緒だった

たとえ今日だけだったとしても私にとっても幸せな時間となった




静かで穏やかな時間が流れるお洒落なバー

洒落たバーに来るなんて何年ぶりのことか。。。

あらためてまた話は始まる

「今日はわざわざ遠くまで来させてごめんね

人目を気にしなきゃいけないのもあるけど

近所じゃなくて自分が普段いない場所でゆっくり過ごすのが好きなんだ

こんな風に女性を誘って出かけてばかりと思われてるかな?

実際はそんなことないし行きたいところへは1人でも行くくらいなんだ」

「こういう風に誘ってコースを決めてもらえることなんてないから

何か凄く新鮮だし緊張もするけどいい時間を過ごしてる

それに飲みに行こうよ!とかの誘い方じゃなかったから

一瞬え?と思ったけど逆にドキドキしちゃった。。。」

「ちゃんとデートしたかったからね

飲みに行こうって言葉は軽々しいし後輩とかを誘ってる感じになるかな」


お互いに酒は強いのでしっかりとした口調で会話は続く

そして本題を話すようにしんが真剣に言い出した

「初めて会った時に一目惚れして出会うべき出会いだと思った

会わない間もずっと好きだったしこうして会ってもっと好きになってる

率直に言うけど付き合ってほしいんだ

色々なところに行きたいし、これからはもっとたくさん会いたい」

こういう話になるだろうと予感はしていた

すかさず

「早い話、私に愛人になれってことになるんだよ

私は頭も良くないし政治に詳しくないからあなたの仕事とかは気にしてない

でも結婚してるというのはひっかかる

仮に付き合ったとしてもっともっと好きになって欲が出てしまった時

最終的に身を引くのも傷つくのも私だから

私、自分が傷つくのは嫌だもん

誰でも自分が可愛いと思うものだと思ってる」

「そうだよね。。。

愛人とか不倫って言葉は使いたくない

普通に恋人同士になりたい

でも自分が結婚している以上そういうわけにはいかないよね。。。

勝手なことばかり言ってしまったね

それにせなさんに対して申し訳ないことを言ってしまった

ごめんなさい」

この人は女性に対しては不器用で世間知らずな人だ

言いたいことはよくわかるけど私が本気になってしまったらどうするのだろう?

もちろん離婚は出来ないと答えた

でもこうして会えたことはかけがえのない時間になったのは事実

その後は暗くなることもなく普通に話をして数時間過ごし店を出た

タクシーを拾い帰ろうとしているのはわかっていた

私はあまり積極的な方ではないし人前でベタベタするタイプではない

でも自然としんの手をに握った

「あ、ありがとう

何か凄く嬉しい」

しんは優しい笑みを浮かべてタクシーを停めた

その後タクシーの中でもずっと手を握り合ったまま帰路へ向かった


前日に雨の予報だった約束の日

しかし予報とはうらはらにとても良い天気だった

眩しい日差しが気持ちを明るくさせてくれた

私はよく晴れた時の青空を見るのが大好き

こんな時に会えるのがたまらなく嬉しかった


待ち合わせの30分ほど前に駅に着き時間を潰し

10分前に場所へ行くとその5分後しんは現れた

お互いの第一声は「こんにちは」だった

「ずいぶん待ったの?

自分は早く着いたんだけどまだここに来るのは早いと思って

他をフラフラして時間をつぶしてたんだ」

「私もそんな感じです」

そこから歩き始めると少し電車移動をしてある博物館のような場所へ向かった

「興味なかったらごめんね

どうしても自分が行きたかったらその場所にせなさんと行きたくて」

「普段来る機会はないけど新しい場所を開拓するのは良い事だから」

今までデートというとどこにしようか?などと言い合うばかりでなかなか決まらずに

ただフラフラして終わったしまう相手が多かった

博物館などの展示物がある場所は見るのが楽しいし

率先して連れて来てもらった方がありがたい

この博物館の存在を知らなかったし

始めて目にするタイプの博物館なので新鮮で楽しかった

しんの楽しそうな姿を見てこの人の好きなものや趣味ってこういうものなんだと感じ取ることも出来た


その後場所を移動して高層ビルの中にあるレストランへ行った

店の雰囲気やコースメニューからして高そう。。。

ずっと夜働いていたが恥ずかしい話、

私の住んでいる場所は高級なものがあるばしょではないので

こういった食事を演出してくれる人はいなかった


「ここは何ヶ月か前に知り合いの結婚式の2次会で来たんだ

いい感じだったから今日はここにしたんだよ」

「景色もいいし落ち着いてていいですね

こういうところに連れて来てもらえることなんてなかなかないから緊張しちゃうけど」

その後も美味しい食事を食べながらゆっくりと会話が進んだ

「今日会えて良かったよ

時間がかかったけどずっと会いたかったから」

私は私で少し意地悪い言い方をして

「気持ちは嬉しいけど会いたかったらもっと連絡したりすると思う

機会があったら会えればいいな。。。くらいでしょ?」

「そんな事はないよ

仕事が変わって忙しいと思ったし自分からは連絡しずらかった

1度キャンセルされた時は正直ショックだったし

会いたいって言い寄ったところで自分は結婚もしてるし

強引には出来ないでしょ?

でもこのまま会えないのは絶対に嫌だった」

「あの時は本当にごめんなさい

忙しかったのも事実だけど私は嫌われてもいいから本当のことを話します

出会ったのが店だったから嘘をついていたけど付き合ってる人がいました」

どんな相手だったかも正直に話した

しんは多くは突っ込んで来なかったけど

今は何もなく暮らしているなら良かったと言っていた


その後、しんが行ってみたかったというバーへ向かった