前回来店から約1週間後しんは現れた

「また来ちゃいました」

「ありがとうございます」

最初は堅苦しかった私たち


この日は支援者のような方と一緒

その人はほろ酔いでテンションを上げて話まくる

「ねぇ、ねぇ、君の友達を誰か誘ってダブルデートしようよ

しんさんはこの辺じゃデート出来ないから

自分が色んな段取り組んで場所もセッティングするからさ」


私は一瞬目が点になって

「わざわざ遠くに行かなきゃいけないの?

たとえばこの辺の店でちょっと食事とかはダメなの?」

と思わず訊ねると

「ダメだね。。。

どう見てもプライベートで飲んでるとしか思われないから」

「もしかして。。。結婚してるんですか?」

「うん、してるよ

ダメ。。。ですか。。。」

不安そうに言ったしん

「ダメなわけないですよ

年齢的にもしてておかしくないし

魅力があるから1人なわけないし」

営業トークを交えた言葉を発した私汗

ショックと言えばちょっとショックだったのかもしれない

でも自分がお客様を好きになるのは嫌だったし

これで深入りしない歯止めがかかると思った


するとしんは続けて話をしだした

「色々とうるさいからプライベートもあるようでない

こうしてこのお店に来てることも本来はだめだから

連れて来られてるならいいけど今日は違う

自分が来たいから、せなさんに会いたいから来てる」

「またまた~うまいんだから」

私は真剣に言われるのが苦手でどうしてもこういう言葉しか出ないあせる

それにデートにしても店に来るとしても

色々とめんどうなんだということが初めてわかった私

本当に世間知らずで何も知らない私。。。


「でもね、厳しくてもね、会いたいから来ちゃうんです

好きになっちゃったみたいなんです。。。」

この日のしんは酔ってる感じではなかった

でもかっこつけることなくまっすぐに言われるとどうしたらいいものかはてなマーク

「まだ会ったばかりだしね!!

最初だけかもしれないし。。。」

「そんなに気が多いわけじゃないよ

2回とも勇気がなくて聞けなかったんだけど

今日はアドレス交換してもらえる?」

「いいですよ

これで少しずつ会話していきましょう」


そしてアドレスの交換をし終わったころには1時間終了前の延長確認が入る

「帰ります」

「え?もう帰っちゃうんですか?」

売上も考えたけどもう少し一緒にいたかった私

「世間の目があるからね

こうしてせなさんがずっと横にいると指名して飲んでるってわかっちゃうし

短い時間でも顔を見る事が出来て会えただけでも満足しなきゃいけないから」


しょっちゅう会えるわけではない

もしプラーベートで会うには色々な段取りが必要

結婚してなければ平気だったんだろう

そんなことを考えながら交換したアドレスをただ見つめるだけの私がいた





しんと再会してから1週間ほど経ったころ

以前しんと一緒に店に来た人達が飲みに来た

私もたまたまフリーでその席に座ると

「あれ?君、しんが指名してる子だよね?」

(よく覚えてるな。。。)

そして、しんのいない場所で噂話が始まった


どうやら同じ議員さんらしい

「あいつは俺なんかよりもずっと上の立場だし

正直、あんなに出世すると思わなかった」

「演説とかさ、マイク握らせると説得力あるけど

普通に話すと口下手だし人見知りはするし

真面目だからあんまり面白くないでしょ?」

「クールでカッコイイなんてよく言われるけど

ただ喋らないだけ(笑)」

などなど、色んなことを話し出した


「クールでカッコイイ。。。

やっぱりもてるんですね」と聞くと


「こういう店には付き合いで行くのは確かで

女の子から気に入られることはよくあるね

でも相手にしてないし指名してるのなんて見たことないから

君を指名で飲んだときはびっくりしたよ

いつもそんな飲み方をしないからよっぽどタイプなんだろうね」


「そうなんですか。。。」

そんな言葉でしか答えられなかったけど

選ばれた人間という意味で嬉しかったのは確か

私にいいように印象付けたくてそんなことを言ってるだけか?

そんな気持ちにもなったけどこの日はこの言葉を受け入れた


そして最後に

「仕事柄、遊んでるように見えるだろうけど

実際は全然そんなことないんだよ

ヘタに何か出来ないように監視されてるようなものだし

たまにしか来れないだろうけど君に会ってる時間が

立場やプレッシャーから解放されて唯一癒されてる

束の間のプライベートだと思うから」


こんな私が必要とされている

精神的にきつい状況を抱えていた私には

とてもありがたい言葉だった


しんと出会って一週間後


私は馴染みのお客様から指名を受けていた

その時、スタッフに席を抜かれ他の席からの指名を伝えられる


「あ!」

まさか来てくれるとは!

お客様に特別な感情を持つことなどない私が今思うとなぜかドキドキしていたラブラブ


時間のタイミングですぐに席に着けなかったため

他の女の子がしんの周りにいる

私が来たのがわかるとすかさず

「自分は彼女を指名したので」とクールに言っていた


この日は少し酔ってる感じだけど穏やかにニコニコしていた

「酔ってますか?」と聞くと

「はい、ちょっと酔ってます。。。嫌いになっちゃいましたか?」

「いえ、楽しい時間を過ごしていたのかなって

でも本当に来てくれると思ってませんでした

もし来たとしても本当に指名してもらえるなんて

「最近忙しかったので来るのが遅くなってしまって

でもどうしても会いたかったし

まだ忙しいけど束の間の休息時間を作りました

名前も忘れなかったし来るって約束しましたから」

「ありがとうございます」


確かに忙しい時期だったと思う

でもどう対応していいのだろう?

政治家相手というのは難しい

嫌いになった?と聞かれてもまだ好きにもなってませんと答えたいくらい

総勢5人で来ていたのでみんなで会話をする時間があり

私が指名が重なっていたのもあり

あっという間に時間は過ぎた

1時間半という短い時間だったので

せっかく来ても1時間半?

やっと来れたと言うわりにはあっけない

でもその理由は後々わかる事になる


意識をしてない

ただの指名客

その時私はそう自分に言い聞かせてたのかもしれない