当時私は夜の仕事をしていた


平日で客足も悪い平日のある日

スタッフに指示された席へ目をやると

「あ、あの人」

街中で見た事がある顔

かれこれ10年ほど前から知っていた顔


席に着きちょっと遠慮がちに

「近所でよくお見かけしてます」なんて言ってみた

すると「あ、やっぱりわかっちゃう?悪いことしてるわけじゃないからいいんだけどね」

ちょっと笑みを浮かべた

それがしんと初めて話した会話


その後も騒ぐわけでもなく他愛もない会話をして帰る頃に

「せなさんでしたよね?また来ますから

こういうところは付き合いとかでよく連れて来られるけど今日は本当によかった」

唐突に思ったことをポンと言ってくるタイプのしん


最初の印象は真面目で正直言うと面白みのある人ではない

でも、こういう人は遊んでるというイメージが強い

紳士ぶってるだけなんじゃないか?そう思った


私はちょっと憎まれ口で

「みなさん、そんなことばかり言って来なかったり指名しなかったりですよ汗

それに名前を覚えててくれる人なんてほとんどいません」

私は言われない限り名刺を渡さない人だった。


すると「しっかり覚えました。近々必ず会いに来ます」

半信半疑で終わったその日

でも調子がいいことを言っているとは思えないほど

まっすぐな目で落ち着いて話していたのが印象に残った

しんとの出会いだった




人を好きになるってなんだろう?

この人はいい、この人はだめってあるの?


顔や存在は以前から知ってる人

あちこちにポスターがあるから

それを見てかっこいいなんて思ったこともなかった

政治なんて興味もないし全くわからない


あくまでも一人の人間として、男女として

私たちは惹かれあった


でも禁断の理由...

それは彼が家庭のある人だから

私には今まで不倫の経験なんてない


でも会う場所も時間も制限がある

前途多難な恋愛が始まってしまった