第55話((なれていた)) | **我が人生の旅路**

**我が人生の旅路**

                     英 満(はなぶさ みつる)

 「サラリーマンにはなれないかもな。」、小学4年生、当時10歳だった私がふと思ったことがあった。
 家の近所を歩いていて(お散歩するのは小さい頃から好きだった。)何気に思ったことなのだが、今思い返せば、祖父は既に働いていなかったし、毎日同じ時間に起きて、小学校に行くのでさえ結構しんどい思いをしていたので、当然だったのかもしれない。
 そんな中、朝ネクタイをきちんとし、勤めに行っている多くの大人を見るにつけ、ますます「無理だ~。」、との思いは強くなっていった。
 たまたま勉強ができていたので、進学を続けることができ、いつの間にか大学院に通うことになっていたのだが、社会人(勤め人)になりたくないが故の大学院進学であった。
 このままずっと大学にいられたら、との思いで自分なりに頑張った結果、運良く大学に残れることになったのだが、家庭の事情が生じて、故郷に戻ることになってしまった。
 故郷に戻ってからの経緯は、この「我が人生の旅路」で書いたような次第である。
 今思えば、私にとっての30代は、無我夢中で駆け抜けたような気がする10年間であった。
 そして、40歳になろうとした頃、自分の立ち位置が何となくではあるが分かったとの思いに至った。
 そう、10歳から実に30年の月日を経て、私は、勤め人ではない私に「なれていた」のである。
 幸せな気分で迎えた40歳の誕生日、これからも静かに(コツコツ)生きていこう、と改めて思った。
<対応年代:10代~30代>