第17話((幸せ)) | **我が人生の旅路**

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                     英 満(はなぶさ みつる)

 京都にいたとき、Uちゃん(男)と知り合いになった。彼とはとある塾で出会った。
 塾の仕事で一緒になったときは帰る方向が一緒ということもあって、帰る道々よく話をするようになった。
 彼は当時医学部(国立大学)の学生であった。話を聞いて、医学部での勉強は大変だなぁと思った。
 だんだん彼と親しくなった私は、時々食事をしたりしていた。
 月日は流れて、彼が5回生になろうとしていた春のことである。私は久しぶりに昼間家にいたのだが、そのUちゃんから電話がかかってきた。
 「○○さん、今日お時間あります!?」と聞かれたので、「今日は暇やけど。」と答えた。
 「そんなら会って相談したいことがあるんですけど、会ってもらえますやろか!?」と言ってきた。それで私は、「なんかあったんかね!?まぁ、会ってからゆっくり聞こか。」と言って、JR京都駅で待ち合わせることにした。
 Uちゃんは、新大阪に住んでいた。私は伏見に住んでいたので、京都駅で待ち合わせするのが丁度よかったからだ。
 駅でUちゃんを見つけて一緒に地下街に入った。食事をしようと思ってである。おそば屋さんに入ったと思う。注文をすませて、Uちゃんの話を聞き始めた。
 話の内容は次の通りであった。
 付き合ってる彼女との間に子供ができてしまって、これから先どうしたらいいのか迷ってしまった。それで家族や周りの者に相談したら、せっかくここまで医学部に通ったのだから、がんばってあと2年何とか大学にいくことを全員からすすめられた。というものであった。
 いろいろ話を聞いているうちに、「実は○○さんやけ言うんですけど、5回生になると実習ばっかりになる中、血見るのが怖いんですよ。」とぽつりとつぶやいた。
 私は、ははぁ~んと思った。こいつ大学辞めたいんちゃうやろかと思った。
 「Uちゃん、大学辞めたらいいんちゃうの!?」と私は彼にストレートに言った。「彼女が妊娠してなくてもそうしたかったんやない!?」とその後に付け加えて言った。
 それを聞いたUちゃんは、目をパッと見開いて、「うわっ、きっついこと言いはりますね。でもそれ本心ですわ。」と言った。
 みんなから大学辞めたらいかんと言われる中、彼はきっと私からその反対のことを言ってもらいたかったに違いない。なぜなら、私がそんな性格の男だとUちゃんも分かっていたからだ。
 私は、「他学部で考えたら、丁度大学卒業する年やけいいやん。就職先のことは俺が何とかしてやるけ。」とUちゃんを励まして言った。
 「ありがとうございます。」とUちゃんは深々と頭を下げた。「さぁ、食べよや。」と私は言って注文していたそばを食べ始めた。
 それからちょっとして私はトイレに行った。戻ってきたとき、ハッと思った。なんと、Uちゃんの後ろ頭の上の方に大きな10円はげが二つあったのだ。
 「Uちゃんどうしたん!!その頭!?」と思わず大きな声を出してしまった。その声は店の中にいたお客さん全員の視線をあびる程のものであった。
 Uちゃんは恥ずかしそうに、「この件のストレスでこないなってしまいました。朝起きて髪の毛といたら、ブラシに髪の毛がめっちゃついてたんです。」と答えた。
 食事をすませると私はUちゃんを[ア○ラ○ス]に急遽連れて行った。彼の髪を一日でも早く取り戻したかったからだ。
 家に戻ってからは、友人・知人に電話をして彼の就職のお願いをしまくった。Uちゃんにまかしときとは言ったもののあてはそう簡単にはあろうはずはなかったからだ。
 某公務員のお偉さんの父親をもつUちゃんにとって大学を辞めて働くことを認めさせることは並大抵のことではなかったに違いない。
 彼女の方も父親はN○Kのアナウンサーであったので、なおさら彼にとっては大変だったことだろう。
 彼の頑張り=説得と私の援護射撃=就職先確定によりUちゃんは大学を辞めた。就職して何ヶ月後かに晴れて彼女と結婚した。
 結婚式ではテレビで見たことのあるアナウンサーの方が式の司会をされていた。いい結婚式であった。
 あれからもう10年以上の歳月が過ぎた。Uちゃんはバリバリ仕事をして大阪市内にマンションを購入して今は3人の子供たちに囲まれて暮らしている。
 奥さんとなった彼女からは、「あのとき○○さんの一言があったから今の私たちがあるのだと思います。本当にありがとうございました。」と以前電話したときに言われたことがあった。
 人の将来=幸せはどうあればいいかなどということは本当のところ誰にも分からないと思う。
 その人のためを思うが故に間違った選択をさせてしまうことだってあるかもしれない。Uちゃんにとって私は、近すぎず遠すぎずの存在であったのではないだろうか。
 程よい距離にいることで、客観的に彼のことを判断できたことがきっとよかったのだろう。
 教育に携わる今の私には正にこの程よい距離を生徒との間に保っていくことで、生徒一人一人に明るい将来への「切符」を持たせてやることができるのではないかと思う☆
 そしてその「切符」は21世紀幸せの駅へと必ずや導いていってくれるに違いない♪
<対応年代:20代>