北村生活史博物館:人々の暮らしをそのままに伝える小さな家。 | なま声:韓国旅行情報

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立派な門を構えた韓屋が建ち並ぶ北村。誰もが、その門の中はどうなっているんだろう?見てみたい!という思いに駆られるのではないだろうか。

どんな部屋で、どんなものを食べて、どんなことをしていたのか。現代とのちがいは?

北村韓屋路の坂を上り三清洞方面へ。花開1道に入ってすぐの場所に素朴な一軒家、「古き時代の香り」北村生活史博物館はある。北村の人々が実際に使っていた衣類や生活の道具が展示された韓屋だ。

長い歴史をもつ北村に住む人々が実際使用した生活用品を、小さな韓屋にコツコツと集めながら展示、いまでは約8,000点以上になるという。建物自体は少し小さめだが、韓屋には珍しく庭があり、そこにも古い壷や瓶などの生活用品がいっぱいだ。




靴を脱いで室内にあがると、朝鮮時代末期から日本の植民地時代を経て近代へと、人々の生活様式の移り変わりがわかるように展示されている。当時の町の人々が使っていたこまごまとしたものまできちんと展示されていて、ほほえましい。

北村の人々の本当の生活を知りたいと思ったら、ここ北村生活史博物館の門を開けてみるのが一番良い方法だ。


家具や食器、雑貨、あらゆる生活用品が展示されている。骨董好きにもたまらない品揃え。
時を経てきれいな飴色になった家具もある。



見事な螺鈿がほどこされた箪笥は圧巻。実際使われていたランプは現代のインテリアにもマッチしそう。



まさに生活の歴史を感じさせる鉄のアイロン。物陰には日本語の酒樽を発見。どういう経緯か気になるところ…。

心から北村を愛する女性、イ・ギョンエ館長。

30年前のこと。慶尚道(キョンサンド:韓国の南東部の遺跡や古都のある地域)から、ひとりの若い女性がソウルにやってきた。

そのとき、偶然立ち寄った北村。
韓屋が軒を並べている様は、故郷の風景のように昔ながらの風情が残り、路地には人々の暮らしと趣が漂う。彼女はこの雰囲気にすっかり惚れ込んでしまい、すぐにでもここに住みたいと考えたほど。当時は、北村の韓屋の一間は女性が住むにはすこし不便で、結局ほかの場所に住むことになったが、以来暇さえあれば北村の路地を散策し、隅々まで知り尽くすようになる。

いつのまにか北村の住人よりも北村に詳しく、北村専門家のようになってしまった女性。もう、おわかりだろう。
この女性は、博物館を運営するイ・ギョンエ館長。
今でこそ北村のブームとともに北村に詳しい人間がたくさんいるが、30年以上、北村とともに生き、北村を愛する人はほかにいないだろう。そして北村の専門家の元祖として、イ・ギョンエ館長は今もその役目を担いつづけている。

後に北村に移り住むようになった彼女は、近所の家の前に捨てられた古い家具、このまま捨てるには惜しいような生活用品をひとつ、ふたつと、集め始めた。

ソウル市が韓屋改修支援政策を開始したため、箪笥、火鉢、カゴ、食器、お盆など、あらゆる生活用品が住宅修理のために捨てられ、路上に溢れ出したのだ。 それを悲しく思ったイ・ギョンエ館長は、その中からまだ使えそうなものや見栄えのよいものを選んで集めてまわった。捨てる人には古いものでも、彼女にとっては愛情のこもった宝物だったのだ。

古いものを集めている人がいる、そんなうわさは広がり、いつからともなく地元のお年寄りたちは、捨てようと思っていた昔のものを持ってきてくれるようになった。

溜まっていく品物の保管も兼ね、骨董品店「古き時代の香り」を開くことにしたが、小柄なイ・ギョンエ館長が手押し車で品物を運んだり、ほこりだらけで汚れた品物をきれいに磨いて手入れをしたりと、大変な労働をこなしながら経済的にも苦しい期間が続く。

思いがけず始まった博物館運営という苦しい道のり。

修理された大量の遺物たちに光を与えるようないい方法はないか? と考えたイ・ギョンエ館長は、このすべての遺物をソウル市に寄贈し生活史博物館をつくることを提案した。

しかし、市での運営は難しく、個人で博物館を運営してみてはどうかと逆に提案されるという自分では思いもよらなかった展開となる。運営どころか支援もできないという市からの回答を受け、結局、個人で博物館をつくることにしたという。

博物館の運営などまったくわからないのに、市の担当者に言われたひとことで始めることにした私立博物館の準備はたやすいものではなかった。個人の資金で場所を借り、維持していかなければならない。それでも彼女には、若い世代に昔のことを知ってもらいたい、子供たちが楽しめるような施設にしたいという思いが強かった。

昔使われていた道具を実際に使えるよう準備したり、いろいろな体験プログラムを企画し、学びながら楽しめるようにした。彼女からみたら孫のような小さな子どもたちを相手に一日中動き回るのもいとわない。そんな苦労がだんだんと評判を呼び、最近では訪ねてくる人もじわりじわりと増えつつある。

しかし、この収入だけでは博物館を維持していくのは難しいのが現状。イ・ギョンエ館長は心身ともにすっかり疲れ果てている。




博物館といえば立派な建物に歴史的名品の数々、そいういう目線からすれば、北村生活史博物館は素朴であり、ともすればみすぼらしくも映るだろう。私立博物館に対する人々の認識も希薄で5,000ウォンという入場料に苛立たしげな人さえいる。過去の遺物を集め、展示し、きれいな状態を維持していく、その苦労に思いを寄せれば、気持ちよく払うべきものなのに。内情をわかってもらうのは簡単なことではない。

イ・ギョンエ館長は、韓国で私立博物館を運営するということが、こんなに大変なことだとは知らずに始めてしまったというが、それでも、これが自分の使命であると、この博物館をさらに成長させることに余念がない。
館長ご自身は仏教放送ラジオドラマの作家であると同時に、高僧らの伝記を執筆する仏教関連の作家でもある。しかし、彼女にとって、この北村生活史博物館の館長以上に適任なものはなさそうだ。

SELF-STYLEが今回の北村の取材を通して出会った人の中で、一番北村を愛している人は、今一番支援を必要としている人だった。この博物館でイ・ギョンエ館長に会ったときには、ぜひ励ましの言葉を。


通りに面して掲げられたこのかわいい看板が目印。日本語の表示はないが、展示品を見るだけで充分伝わってくる。
ぜひ門をくぐって見てほしい。


古き時代の香り 北村生活史博物館
アクセス 地下鉄3号線安国(アングッ)駅 2番出口から徒歩約15分
営業時間 3月~10月 10:00~18:00
11月~2月 11:00~18:00
休館日 年中無休
入場料 大人 5,000ウォン
学生 3,000ウォン
住所 ソウル市 鍾路区(チョンノグ)三清洞(サムチョンドン)35-177
電話 02-736-3957