思わず長居したくなる、シンプルで居心地のいい空間。
北村エリアを南北に走る大通り、嘉会路を上がっていくと右側に現れるシックなたたずまいの小さな店が人目を引く。実にシンプルで落ち着いた雰囲気。つい、北村散策で疲れた足を休めたい誘惑に駆られ、ドアを開けてみた。
その小さな空間には、本当にコーヒーを大切にし、コーヒーを愛する人たちでいっぱいだった。
コーヒー専門店「無為 Koee(ムイゴイ)」は、2010年6月にオープンした。
「歴史ある北村という土地柄、イコール伝統茶」というような固定観念にとらわれることなく、この珍しい名前のコーヒー専門店がこの地で愛されていることがすぐに伝わってきた。
白と黒でまとめられた店内は明るく清潔感が漂う。テーブル席が12席に、カウンター4席。小さな空間だけれど一面ガラス張りの壁面からは大通りが見渡せ、その狭さをまるで感じさせない。


店内はシンプルで清潔感が漂う。コーヒーを入れる手際も小気味いい。通りが見渡せる明るい窓辺の席は
開放感がありまるでオープンカフェのよう。
コーヒーに愛をそそぐバリスタの至福の一杯。
「無為 Koee」という難しい店の名前を見て、なんだろうとは思っていたが、メニューの最初のページには、その説明があった。
『無為:コーヒーの実の、自然のまま味を』
『Koee(ゴイ):念入りにという意味の韓国語』
コーヒーに対する自分の哲学を店名に表したかった、というのは社長であり、バリスタ(コーヒーに関する専門的知識と高い技術をもつ人)のジョン・スッヒさん。情熱的で繊細な感覚をもつ女性なのだろう。清潔感あふれる「無為 Koee」の雰囲気がどうして生まれたか、彼女を見ればわかる気がする。


社長でバリスタのジョン・スッヒさん。穏やかに見えてコーヒーに寄せる思いは誰よりも熱い。
コーヒーを注文すると、物静かな微笑みをたたえたジョン・スッヒさんが、味の好みを聞いてくれる。
自動化されたコーヒーマシーンとは違い、バリスタが神経を使い大切に淹れてくれるコーヒー。その人の気分や好みに合わせてバリスタが作ってくれるというコーヒーに、期待が高まらないはずがない。「無為 Koee」の小さな空間が、私に無限の広がりを感じさせる。 ジョン・スッヒさんと彼女の淹れるコーヒーが好きだという人たちで、この空間が共有されているのがわかる。
差し出されたコーヒーは、驚くほど新鮮で美味しい。コーヒーは自然の産物であるという「無為 Koee」の主張が伝わってくるようだ。
実は今、ソウルはコーヒー専門店のラッシュ。 韓国人がこんなにコーヒー好きだったかと思うほど、街中のあちこちにコーヒー店ができ、決して安くないコーヒーをまるでファッションのように口にしているのをよく見かけるが、この店ではおいしいコーヒーを提供したいという主人の思いが本当に深く感じられる。

ジョン・スッヒさんのコーヒーへのこだわりは徹底している。焙煎の段階からコーヒーの香りや味、 品質の良し悪しを客観的に、総合的に判断し、自分が納得する生豆だけを選んでブレンドしている。清潔なガラス容器に、焙煎した日時をひとつひとつ記して陳列されたコーヒー豆からは、彼女のコーヒーに対する徹底した姿勢がうかがえる。
オープンしてからわずか半年だが、近所だけでなく遠くからもコーヒー好きが集まり、かなりの評判らしい。これからもにぎわっていくに違いない。
ジョン・スッヒさんは、コーヒーの最大の魅力は多様性だと語る。 選び抜いた新鮮な生豆に、バリスタとしての彼女の真心と、店に訪ねてきてくれる人たちへの愛情が加わって、コーヒーはさらにおいしくなるという。
この店のもうひとつの自慢は、韓国の米餠である烝片で作ったサンドイッチだ。米を醗酵させてつくった餅、烝片のシコシコする歯触りと、具のコンビネーションは、今までまったく経験したことがない食感と味わい。
伝統的な食材を使った新しい試みであるこの烝片サンドイッチは、伝統を守る地、北村に新しく誕生した「無為 Koee」の象徴でもあるように思う。
北村の路地散策の途中でコーヒーが飲みたくなったなら、「無為 Koee」の窓辺でゆっくりと美味しいコーヒーを楽しむのを、ぜひおすすめしたい。
窓から見える通りの人々の姿に、北村のまた別の顔を見られるかもしれない。
| 無為 Koee(ムイ ゴイ) | |
| アクセス | 地下鉄3号線安国(アングッ)駅 2番出口から徒歩約6分 |
| 営業時間 | 8:00~23:00 |
| 休日 | 年中無休 |
| 住所 | ソウル市 鍾路区(チョンノグ)嘉会洞(カフェドン)25-1 |
| 電話 | 02-744-7922 |
