平屋の古い一軒家のガラスの壁面に、ご主人のお気に入りらしい舞台や展覧会のポスターとピザの写真がところ狭しと貼られている。その隙間からガラス越しに店内を覗いてみれば、みんなおいしいそうになにやら食べている。
嘉会洞(カフェドン)は、近ごろ特にパワーを感じるエリアだが、なかでも今一番の注目なのが、この「鍛冶屋 釜焼きピザ」だ。
看板もなく、知らなければピザ屋だとはわからずに通りすぎてしまいそうだが、オーブンで焼いたピザとは違う香ばしい味わいと、使用する食材へのこだわりが評判を呼び、予約をしなければ入れないほどの人気だ。
大通りの嘉会路から目印のトンミ薬局を曲がってすぐのガラス張りの店。ポスターやちらしがいっぱい。
外から見ただけでも居心地が良さそうな予感が…。
店舗の外見も個性的だが、店内のインテリアにもご主人のこだわりが詰まっている。 20席ほどの店内は、椅子の形もバラバラで、それがまたこの店の素朴な雰囲気を演出していて、なんだか落ち着くようなわくわくするような気持ちになってくる。
大きな釜のある厨房と客席とを仕切る壁は、韓屋の古い外壁だ。昔はよく見られた韓屋の外壁もこうなるとなんだかおしゃれに見える。 厨房で使う道具類もまるでディスプレイのように並べられ、ご主人が作ったという照明や、梁の突き出た木の天井もいい雰囲気を演出している。
ワイルドに木と鉄の金具で作られたグラスホルダー。店内には工夫がいっぱい。
壁にかけられたピザを焼くための道具類も無造作になのになぜかお洒落。
むむ?ジュースやお菓子のパッケージも立派なアートに! いろんな形の使い込まれた椅子もこの店らしい演出。
むきだしの屋根裏から下がるのはご主人手作りの照明。スパイダーマンが覗く遊び心も!
一番人気のメニューは、モツァレラチーズ、たまねぎ、きのこ、ベーコントマトソースをピザ生地で包んで焼いたカルツォーネ(Calzone pizza:18,000ウォン)。外はサクッと中はしっとりとろりとした味わいが秀逸。
ゴルゴンゾーラチーズのピザ(Gorgonzola Cheese Pizza / 14,000ウォン)は、クセのあるブルーチーズと香ばしいピザ生地のシンプルな組み合わせ。はちみつをかけて食べると絶妙なおいしさが醸し出される。
ハウスワインは、実力のあるワイナリーとして有名なチリのモンテスのもの(Montes Alpha Classic Chardonnay)を提供、グラスで7,000ウォンと、うれしい価格だ。 ほかに、ハウスサラダ(7,000ウォン)、ハンドドリップコーヒー(5,000ウォン)など、細部まで行き届いたメニューが揃う。
ピザも、大きな釜でひとつひとつ焼いている手間に考えると、かなり良心的な価格設定ではないだろうか。 すぐそばの大きな釜でピザが焼かれるのを見ているだけでもなかなか楽しい。
ピザ1枚焼くたびに1歩近づく夢。
ピザをサクッと香ばしく焼き上げるご主人、イ・ジェソンさんは、実は金属工芸作家としての一面をもっている。
自らを「鍛冶屋」と称するイ・ジェソンさんにとって、創作活動に釜(炉)はつきものであり基本の道具。だが、2008年に「鍛冶屋 釜焼きピザ」をオープンしてからは、釜に金属ではなくピザ生地をいれて焼きはじめた。
というのには、わけがある。
イ・ジェソンさんは、いつか「鍛冶屋ギャラリー」を自分で設計して作り、思う存分自分の世界を展開するという夢がある。いろんな人がゆっくり過ごせるギャラリーと、自分だけの工房。工房からはときどき金槌の音がリズミカルに聞こえてきて、訪れた人を楽しませる…。
つらい世の中に疲れきっている人々にエネルギーを与える作品をつくるのが自分の使命であり、夢なのだと語るイ・ジェソンさん。
ピザ一枚作るたびに「鍛冶屋ギャラリー」のレンガを一個積み上げているのだという思いで、作品をつくりだすようにピザ一枚一枚を丁寧に焼き上げているという。
ご主人のイ・ジェソンさん。後ろにあるのが、商売道具の釜。釜でピザを焼く姿は、間近に見られる。
当初、嘉会洞でピザ屋を開こうと決めたときには、町はずれだからお客さんが入らないのではないかと周囲の人からは心配されたそう。でも、イ・ジェソンさんには、いずれお客さんが押し寄せるにちがいないという確信があった。そしてそれは、現実のものになったのだ。
強い意志によって、描いていた夢を確かなものへと変えていく力が、イ・ジェソンさんの自信につながっているよう。
オープン当初、北村は今のような人気はなく静かなエリアだったが、今では一日に数百人もの人が訪れる地となった。「鍛冶屋 釜焼きピザ」も、とくに週末は予約なしでの入店は難しい。平日も予約をしてから行くのをおすすめする。
この店を支えているもうひとりは、イ・ジェソンさんの従弟、朴マネージャー。 彼にこの店のピザについて聞くと、予想していなかった答えが返ってきた。
「まず、妊娠している女性や子供たちが食べることができるように…」
食材の安全性にもかなりこだわっているようだ。
「新鮮な素材を使って。」とか「まごころをこめて。」と言うよりも、よっぽど彼らの気持ちが伝わってくる。ますます信頼できるお店だという思いがわいてきた。
「鍛冶屋 釜焼きピザ」を一度知ってしまったら、北村にいくなら必ず寄ろうと思わせる、そんな店。あの軽くて香ばしいピザを食べるのが、北村を訪れたときのこれからの楽しみになりそうだ。
| 鍛冶屋 釜焼ピザ | |
| アクセス | 地下鉄3号線安国(アングッ)駅 2番出口から徒歩約5分 |
| 営業時間 | 12:00~20:00 |
| 休日 | 毎月最後の火曜日(月1回休み) |
| 住所 | ソウル市 鍾路区(チョンノグ)嘉会洞(カフェドン)62 |
| 電話 | 02-765-4298 |

