北村東洋文化博物館:北村韓屋路の丘の上で知る朝鮮時代の文化。 | なま声:韓国旅行情報

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北村韓屋路のまるで山登りのように急な坂道を上りきると、かわいらしい建物が現れる。2009年に開館した博物館、北村東洋文化博物館だ。
「東洋」「文化」「博物館」と、カタイ名前を聞いただけで興味のわく人は少ないかもしれないが、ここは東洋美術のコレクターである館長の熱い情熱が作り上げた私設の博物館なのだ。


通りから見えるドラゴンの壁が目印。エクステリアには統一感があり、庭も広々として開放感がある。



庭にはこんな立派な門や通路が設けられ個人のものとは思えない凝った造り。

北村東洋文化博物館は、韓国の儒教と仏教文化をテーマにしている。
第1展示館は、韓国と中国の文人文化を伝える筆や硯といった書の道具や有名な文人たちの書画の展示、第2展示館ではアジア各国の仏教遺物、仏像など、韓国における仏教の流れがわかりやすく展示されている。


書画の展示室と、仏頭などの歴史的美術品の展示室。こんなに間近で見られるのは貴重な体験だ。

2階には、古美術や家具が置かれ、古仏軒と名付けられた韓国式のオンドル部屋(床暖房)もあり、そこで様々な体験プログラムや講習会もおこなっているそうだ。
ちなみに、ここの窓からの眺めは最高で、景福宮の勤政殿まで見渡せる。ひそかな絶景スポットだ。

過去からのめぐりあわせ、クォン・ヨンヅゥ館長と孟思誠。

クォン・ヨンヅゥ館長は、元は建築会社の経営者だった。会社経営のかたわらでこの施設を作りはじめたが、今では立派な博物館になっている。

クォン館長は、学生時代から東洋文化に関してはマニアックなコレクターだったそうで、30年余にわたって集めた所蔵品の価値と数には皆驚くそうだ。 博物館にはコレクションのうちの一割程度しか展示できていないというから、その量と情熱はかなりのものだろう。

実際、韓国で個人が博物館を作るというのは、かなり無謀な話だ。博物館に対して一般の人たちの意識はあまり高いとはいえず、政府の支援も多くは期待できない。相当の情熱と信念がなければ達成できないはずだ。

クォン館長が博物館を建てることに決めたこの地、北村の三清洞35-91番地は、朝鮮時代、孟思誠(メン・サソン:1360~1438)の住居があった場所だ。 孟思誠は清廉潔白な官吏であったことで有名で、世宗(セジョン:朝鮮王朝第4代王:在位1418~1450)が、師として仰いだ人物としても知られている。

世宗は毎夜、住まいである王宮・景福宮から孟思誠の家を見て、師が灯を消すまで本人も絶対に寝床に入らなかったという。国を動かす王も、学問への修練を積んで、師に対する礼を欠かさなかったというエピソードだ。



600年前には孟思誠も同じ風景を見ていただろうか。王宮が見える窓には、世宗と孟思誠のエピソードが日本語でも説明されている。

クォン館長は、この世宗孟思誠の話のような、今まで韓国を支えてきた儒教的な思想が、今の世の中には薄れつつあると嘆き、仁義礼智信の五常の教えを改めて伝えたいと一念発起、会社経営から苦難の道である博物館の運営に転換を決意したという。

その決意の陰には、こんな運命的な理由もあった。

クォン館長が博物館を建てる以前、たまたま孟思誠の家の跡を訪ねた際のこと。なんとこの跡地を売りに出す、というではないか。それを聞いた館長は、その場で即決。値引き交渉もせずにこの跡地を買ったのだそうだ。

縁は異なもの…とはいうが、こうしたことも運命だったのかもしれない。 というのも、孟思誠世宗の師だったが、孟思誠にもまた師と仰ぐ人がいた。権近(クォン・グン)(1352~1409:別名 陽村)という人物だ。2人は固い師弟関係で結ばれ、権近孟思誠が政治的危機に陥った際には常に支援を惜しまなかったという。

実は、その孟思誠の師、権近の18代目の子孫にあたるのがクォン館長だ。 こうなると、ご先祖さまがこの地と引き合わせたにちがいない!という思いもよぎる。歴史上の人物たちがクォン館長を通じて、今の世の中になにかを伝えたいと思っているのかもしれない。




学ぶ博物館、古仏書堂の誕生。

2010年11月、博物館の敷地内に新しい建物が完成した。

孟思誠の号「古仏」からとって古仏書堂と名付けられたこの建物は、韓屋造りの職人たちの手によって、とても丁寧に作られている。ここでは、韓国の若者や韓国を訪れた外国の人たちに、韓国の心と文化を知ってもらうためのセミナーやワークショップを開催していくそうだ。

北村東洋文化博物館は、「個人の博物館ならたいした見どころもないのでは?」と、そのまま通りすぎてしまっては実にもったいないところ。ありきたりな観光でなくて、もう一歩深く韓国を知りたいと思ったら、ぜひ訪れてみてほしい。 歴史的な美術品や遺物を間近に鑑賞して、景福宮が見える景色を眺めつつ思いを馳せれば、歴史上の人物たちがすぐ近くに感じられるだろう。

北村東洋文化博物館
アクセス 地下鉄3号線安国(アングッ)駅 2番出口から徒歩約13分
営業時間 10:00~19:00
※入場は閉場1時間前まで
休館日 年中無休
入場料 大人 5,000ウォン
子供(18歳以下)3,000ウォン
住所 ソウル市 鍾路区(チョンノグ)三清洞(サムチョンドン)35-91
電話 02-486-0191