普通人の映画体験―虚心な出会い -56ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2015年9月25日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:50~鑑賞。

作品データ :
製作年 2015年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 138分


東野圭吾が1995年に発表し、ロングセラーとなっている同名小説を江口洋介、本木雅弘らの出演で映画化したサスペンス・アクション。日本全土の原発破棄を求め、超巨大ヘリを原子力発電所に墜落させようとするテロリストと、事件解決に挑む人々の戦いが描かれる。監督はコメディから人間ドラマまで幅広いジャンルを手がける堤幸彦。

ストーリー :
1995年8月8日、全長34メートル・総重量25トンを誇る自衛隊用超巨大ヘリ「ビッグB」が遠隔操縦によりハイジャックされ、原子力発電所「新陽」の上空で静止。「天空の蜂」を名乗る犯人は、全ての原発の破棄を要求、さもなくば爆発物を大量に積んだヘリを「新陽」に墜落させると宣言する。ヘリの燃料が尽きるまではわずか8時間。「ビッグB」の機内には子どもが取り残されており、その父で「ビッグB」開発に携わったヘリ設計士・湯原(江口洋介)と原子力発電所設計士・三島(本木雅弘)は、子どもの救出と日本が消滅しかねないこの恐るべき危機を打開するために奔走する。しかし、政府は原発破棄に難色を示していた。タイムリミットが迫る中、見えざる敵との攻防が始まる…。

▼予告編


2015年9月24日(木)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、18:25~鑑賞。

作品データ :
原題 Belle et Sebastien
製作年 2013年
製作国 フランス
配給 ミッドシップ コムストック・グループ
上映時間 99分


「ベル&セバスチャン」

セシル・オーブリーの世界的ベストセラ―児童文学『アルプスの村の犬と少年』を原作に『狩人と犬、最後の旅』のニコラ・ヴァニエ監督が映画化。戦時中のアルプスを舞台に、ユダヤ人家族を守るため、冬のアルプス越えに挑む少年と犬の試練を描く。出演は、本作が初映画出演となるフェリックス・ポシュエ、『そして友よ、静かに死ね』のチェッキー・カリョ、ディミトリ・ストロージュ、『オーロラ』のマルゴ・シャトリエ。

ストーリー :
広大なアルプスの麓の小さな村で暮らす孤児セバスチャン(フェリックス・ポシュエ)は、ある日、山の中で一匹の野犬と出会う。家畜や人を襲う“野獣”だとして村人たちはその犬を殺そうとするが、セバスチャンは犬にベルと名付け、懸命に守りながら世話をする。やがて孤独なもの同士、セバスチャンとベルは心を通わせていくのであった。時を同じくして、村には戦争が影を落とし始めていた。ナチスに追われるユダヤ人一家を救うため、セバスチャンとベルは道案内人として危険な冬の“アルプス越え”に挑むのだが…。

▼予告編



▼フランスを代表する国民的なシンガーソングライターZAZ(ザーズ)による主題歌「Belle」

2015年9月24日(木)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、16:20~鑑賞。

作品データ :
原題 Boychoir
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 アスミック・エース
上映時間 103分


名門少年合唱団に入団した少年が、厳しい指導者に支えられながら、成長していく姿を描くヒューマンドラマ。名優ダスティン・ホフマンが少年たちを鍛える指導者に扮するほか、キャシー・ベイツやデブラ・ウィンガーといったベテランたちが脇を固める。監督は『レッド・バイオリン』『シルク』のフランソワ・ジラール。

ストーリー :
12歳の少年ステット(ギャレット・ウェアリング)は、学校でトラブルばかり起こす問題児。生活に追われ酒に溺れる母親と、2人で暮らしている。彼が通う学校の校長スティール(デブラ・ウィンガー)は、彼の歌の才能を見抜き、国立少年合唱団のオーディションを受けるように勧めるが、彼は未来への希望を見いだすことができず、心を閉ざしている。そんな折、突然の事故で母親が亡くなり、初めて会った父親(ジョシュ・ルーカス)からも面倒をみることを拒否された彼は、著名だが厳格なカーヴェル(ダスティン・ホフマン)が指導する全米一の国立少年合唱団の付属学校に転校することになる。
厳しい規律、クラスメイトのいじめ、初めて触れる音楽の難しさを前に、ステットは新しい生活に馴染めずにいた。ベテラン教師のカーヴェルは、自身が過去に才能を否定されたこともあり、才能に恵まれながらも逃げてばかりの彼に厳しく接する。次第にその閉塞感や鬱屈した感情がステットを奮い立たせ、ステットは歌の世界に引き込まれていく。楽譜を読むところからスタートした彼はみるみる上達、そして歌うことの素晴らしさや楽しさに気が付いていく。
ある時、若手教師ウーリー(ケヴィン・マクヘイル)の後押しでツアー隊のオーディションを受けることになったステットは、教師たちの前で奇跡の歌声を披露する。彼の類まれな才能を誰もが認めた瞬間だった。晴れてツアーのメンバーになった彼は、学校を代表して海外公演に参加する。彼の歌への情熱に心を動かされたカーヴェルは、病気で倒れたリードシンガーのデヴォン(ジョー・ウエスト)の代わりに彼を指名する。極度の緊張とトラブルに見舞われながらも、彼は素晴らしい歌声を披露し、コンサートは大成功。評判は瞬く間に広まり、開講以来最大の晴れ舞台、ニューヨーク・リバーサイド教会でのコンサートの話が舞い込む。
だが、合唱団の花形としてのプライドを傷つけられたデヴォンの、ステットへの嫌がらせは激しくなっていく。ついに母親を侮辱されたステットは、暴力事件を起こし、退学処分を宣告されてしまう。歌うことを諦めたくないステットは、退学の撤回を嘆願するが…。

▼予告編



▼合唱シーンハイライト

2015年9月24日(木)シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F、JR新宿駅ルミネエスト側地上1出口から徒歩1分)で、14:15~鑑賞。

「ナイトクローラー」

作品データ :
原題 NIGHTCRAWLER
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ
上映時間 118分


『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが“ナイトクローラー”と呼ばれる報道スクープ専門の映像パパラッチを演じるサスペンススリラー。視聴率のために倫理を踏み外した映像を求めるテレビ局と、次第に常軌を逸していく主人公の姿が描かれる。共演に『マイティ・ソー』シリーズのレネ・ルッソ。『ボーン・レガシー』などの脚本家として知られるダン・ギルロイの長編監督デビュー作。全米公開時には、週間興行収入ランキング第1位。

※PRODUCTION NOTES (本作・公式サイト)
① 歪んだ現代社会が生んだ、主人公ルイス
脚本家として高く評価されていたダン・ギルロイが、本作のインスピレーションを得たのは、まさに“ナイトクローラー”の存在を知った時だ。警察の無線をキャッチしながら、ロサンゼルスの街を猛スピードで走り回るフリーのカメラマンたちの世界は、映画の背景として非常に面白いと直感したのだ。ギルロイは彼らの何人かを取材した時、戦場の兵士と同じようなアドレナリンのほとばしりを感じたと言う。/ギルロイはまた、経済格差がますます拡大した現代に生きる若者たちが、直面している問題についても描きたいと考えていた。最低賃金どころか、研修期間(インターンシップ)という名目により無償で働かされ、成功の夢を無残につぶされる若者たちが大勢いる。そんな社会から疎外された、若い世代を体現する存在が、主人公のルイスだ。彼こそ、現代社会が生んだキャラクターなのだ。/社会の実像を鏡のように映す人物を描く、またとないチャンスだと考えたギルロイは、書き上げた脚本を自らの手で映像化したいと考え、監督デビューを決意する。

② 12キロの減量から始まった不世出の怪演
ギルロイの脚本を読み、そのパワーに感銘を受けたジェイク・ギレンホールが、主役兼プロデューサーとして参加することになる。「これまで演じてきたどの人物とも全く違った」と、ギレンホールはルイスというキャラクターと出会った時の驚きを語る。「実に奇妙な男だ。ルーは何時間もかけてネットで情報を漁り、世の中についての知識をそこから得ようとする。彼は情報を絶対的なものだと捉えて、そのまま吸収し、いつも驚くほど要領を得た喋り方をする。言葉使いやしぐさまで、他人のものをコピーするんだ。そしてその言葉の中に、常に真実があるのも事実なんだ。」 一方、ギルロイはルイスについて、絶望して孤独で、唯一慰めと方針を与えてくれる資本主義を宗教にしていると分析する。「ルーのバイブルは、インターネットで見つけた多国籍企業の社訓だ。彼はその内容を真剣に信じている。そうした自己啓発やビジネスアドバイスなどをネットで見つけ出しては、生き延びるための武器として磨き上げているんだ。」/撮影前に幾度も行われたギルロイとギレンホールのミーティングで、ルイスをイメージで例えるなら、痩せこけたハイエナだろうという話になった。ギレンホールは体重を落とすと宣言し、撮影が始まるまでの2カ月の間に12キロ近くもの減量に成功する。さらに、夜通し起きて昼に眠るという生活を続けた。ギルロイはこの驚異的な変身に対して、「彼ほど自らを駆り立てる役者は稀だ」と称賛を惜しまない。/撮影中のギレンホールについてギルロイは、「彼はこの作品のクリエイティブなパートナーだった。脚本に並外れた敬意を払ってくれて、台詞を一字一句、変えなかった」と振り返る。その件に関してギレンホールは、「ギルロイの台詞は本当に特別だからだ。僕にとって教典のようだった。撮影を終えた時、『もうこの台詞を口にすることはないのか』と寂しかったよ」と語る。/台詞のないシーンでは即興もあった。ルーが鏡を壊すシーンがそうだ。「最初は単なる思いつきだった。何となく叫び始め、鏡を殴るうちに割れて手が切れたんだ」とギレンホールは説明する。ルーが目にするのも恐ろしい感情を、唯一表に出す緊迫したシーンとなった。

③ ルイスに容赦なく人生を変えられる二人のキャスティング
ルイスの映像を高く評価するニーナ役には、ギルロイの妻のレネ・ルッソが扮している。ギルロイはルッソのためにニーナの役を書いたと語る。「レネなら、必ずこの役をこなせるとわかっていたからね。彼女には、外面的なタフさと内に秘めた繊細さを表現する優れた演技力がある。彼女と共に現場で楽しく仕事をし、作品づくりができるなんてラッキーだった。」しかし、ルッソの方は、1度だけ撮影中に激昂したと打ち明ける。ギルロイにもっと過剰な演技を求められたからだ。完成した作品を見たルッソは、「でも、彼の言うとおりだった。あのシーンには必要だったわ」と認めている。/ギレンホールは、ルイスの相棒であるリック役のキャスティングに熱意を注いだ。70人ほどオーディションしたが、すべてギレンホール自らが読み合わせを務めた。その結果、1回目のオーディションから全員を驚かせた、パキスタン系イギリス人俳優のリズ・アーメッドが選ばれた。アーメッドは最初に脚本を読んだ時、「散文のような見たこともない脚本に衝撃を受けた」と語る。さらに痩せていくギレンホールを見て、最初は物語と関係ないのにと困惑したと語る。だが、撮影が始まってすぐに、ギレンホールがいかに天才的かと気付いたと言う。「ルーは絶望して飢えている男だ。ギレンホールは、まさに彼そのものだった。」

④ 知られざるロサンゼルスの素顔と激烈なカーアクション
かつて、これほどの広範囲にわたって、ロサンゼルスの街を映し出した映画はない。プロダクション・デザイナーのケヴィン・カヴァナーが、エコーパーク、アンジェリーノ・ハイツなどを探し回り、75か所以上のロケ地を見つけた。ロサンゼルスに20年在住するギルロイは、「自動車で溢れかえる不毛の地」というこの街のステレオタイプ的なイメージを覆したかったと語る。「街を囲む海や山脈、そこに吹く強い季節風などが醸し出す自然本来のフィーリングや、野性的なスピリットを捉えたかった。広大な砂漠を望む街の胸を打たれるほど強烈な美しさを映像に残したかったんだ。」/撮影監督のロバート・エルスウィットは、広角レンズとヴィヴィッドな色彩を駆使し、「人間がアウトサイダーとなる荒野の孤島」というギルロイが思い描くロサンゼルスのヴィジョンを実現した。撮影は主に午前0時から6時の間に行われた。この時間帯の撮影は、キャストにもスタッフにも負担を強いるものだ。だがギレンホールは、深夜に撮影することでインスピレーションを得たと言う。「頭で考えることをやめて、感情に身を任せるようにした。撮影中に感じていたことや、起こったすべての物事は、映画のあらゆるフレームに深く刻み込まれる。それが僕の信念なんだ。」/大がかりなカーチェイスは、通りを封鎖して撮影された。カーアクションのシーンでは、記者たちが鮮烈なニュース映像を求めて、すさまじい勢いで街を駆け巡る。第2ユニット監督のマイク・スミスは、ワールドクラスのスタントドライバーチームを使って、これらのシーンを実現した。「ロサンゼルスのベンチュラ大通りで、時速145キロで走っている3台の車を衝突させるなんてシーンは、どれだけきちんと計画しても予想通りにはいかないものだ。でも、マイクが驚異的な手腕を発揮してくれたおかげで、上手く撮ることができた。予期せぬことも起きたけれど、それはいい意味でのサプライズだったね」とギルロイは振り返る。

⑤ テレビ業界の裏側とおぞましい現代社会の真実
テレビ業界の裏側を描くにあたって、ギルロイはリアリティを追求するために、途方もない量のリサーチを行った。ローカルニュース局が視聴率を上げるために、虚偽の犯罪報道を行うという事実にも迫った。「恐怖を売り物にすることによって、広告料金をキープするというアイデアだ。人々の間に危機感を植え付けることで、彼らを食い物にするんだ」とギルロイは説明する。/だが、ギルロイは誰かを名指しで非難することを避け、常に中立を保つよう注意を払った。一つのスタンスとして、野生動物であるルーのドキュメンタリー映画を撮影しているかのように心がけたと語る。「あらゆる要素に、どのような道徳的判断も下していない。映画の狙いは、観客に自分自身の知らなかった部分を、ルーというキャラクターや、彼の活動する世界の中から見出してもらうことなんだ。各々が、それぞれ異なったメッセージを受け取ってくれることを願っている。」/「捕まらなければ、何をしてもいい」と考えているルイスが、テレビニュースの世界で成り上がっていく様は、古典的なアメリカのサクセスストーリーだ。だが、そこにはダークな仕掛けがあると、ギルロイは解説する。「映画の冒頭では、ルーは失業中で底辺の生活を送っている。物語は彼が仕事を探すところから始まり、成長ビジネスのオーナーになるところで終わる。彼にとってはハッピーエンドだが、社会にとっては悪夢のような結末だ。悪魔が成功するという邪悪なストーリーだと受け取る人々もいるだろう。でも、本当に恐ろしいのはルーではなく、彼という人物を生み出し、褒美まで与えてしまう社会なんだ。そのおぞましい事実を伝えたかった。」

ストーリー :
眠らないロサンゼルスの街で、闇にまぎれて金網を盗もうとしている男(ジェイク・ギレンホール)がいる。呼び止める警備員を殴り倒した男は、戦利品を車に載せて工場に売りつける。そこで男は「僕は勤勉で志が高い人間だ」と自信満々で自分を売り込み、「コソ泥は雇わない」と断わられても笑顔で去って行く。自分をルーと呼ばせる、この不気味な男の名は、ルイス・ブルーム。仕事も友達も家族もなく、軽犯罪で日銭を稼ぎ、ネットとテレビと共に孤独に暮らしている。
帰り道、交通事故現場を通りかかったルイスは、事件や事故報道のスクープを専門にしている映像パパラッチ、通称〈ナイトクローラー〉と遭遇する。悲惨な映像がテレビ局に売れると聞いたルイスは、盗んだ自転車と交換にビデオカメラと無線傍受器を手に入れる。
その夜から警察無線を盗み聞き、車で現場に急行するようになったルイスは、カージャックの被害者の撮影に成功する。しかも、先に到着していたナイトクローラーより接近した生々しい映像だ。あるテレビ局に早速映像を持ち込むと、女性ディレクターのニーナ(レネ・ルッソ)が映像を買い取ってくれた。そこで「視聴者が求めているのは、刺激的な画。さらに望ましいのは被害者が郊外に住む白人の富裕層で、犯人はマイノリティや貧困層」とアドバイスをもらう。ルイスは何か撮ったら一番に彼女に連絡すると約束するのだった。
本格的に事業を始める決意をしたルイスは、アシスタントを募集し、面接に来た住所不定で何の特技もないリック(リズ・アーメッド)を僅かな賃金で雇う。助手席で進路を指示する仕事さえ満足にできないリックを冷酷に叱咤するルイス…。 
ある夜、住宅街の発砲事件に駆けつけるが、負傷者もなくハデな映像は撮れそうになかった。ルイスは被害宅の裏に回り込み、関係者たちの隙をついてコッソリ中に忍び込み、冷蔵庫の生々しい銃弾跡の横に家族の写真を置いて撮影する。映像を持ち込まれたニーナは、「最高の素材よ!」と絶賛、編集担当の「不法侵入だ」という制止を振り切って放映する。
それからもセンセーショナルなスクープ映像を次々にモノにしたルイスは、車はスピードの出る赤い高級車に、機材も最新型に買い替える。壮絶な横転事故の無線を傍受した時も、その車で誰よりも早く現場に駆けつけ、絶好のアングルのために、ルイスは血だらけの遺体を車の下から引きずり出すという暴挙に出る。ネットで学んだビジネスノウハウや格言を狂信し、成功だけに邁進するルイスの行動はどんどんエスカレートしていくのだった。
そんな絶頂への階段を駆け上がるルイスに、思わぬ落とし穴が待っていた。リックのミスで飛行機墜落事故という最大のスクープを逃してしまったのだ。過激な視聴率争いからニーナにも激しく罵られ、進退窮まったルイスは遂に究極の一線を超えていく…。

▼予告編



■私感 :
ジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal、1980~)の水際立った怪演が素晴らしい!
報道パパラッチ界に新規参入した主人公ルイス・ブルームを、異様に痩せこけて目をギラつかせたギレンホールが超ハイテンション演技で体現する。我々の隣にもいるごく普通の男に潜む、底なしの狂気を恐ろしくも見事に演じきっている。腹を空かせて獲物を漁るハイエナを思わせる不気味な外見に加え、ほとんどサイコパスな男の言動も“奇っ怪”至極。何のコネもないテレビ業界に猛烈な自己アピールで売り込みをかけたかと思えば、ブラックバイトとはつゆ知らず求人に応募してきた貧しい若者をインターンとしてコキ使いまくり、さらには衝撃動画のギャラで警察無線を傍受する機械、トヨタ製ダッジ・チャレンジャーを購入するなど設備投資も積極果敢!
「ブラック時代の成功マニュアル」に従い、大都会の闇を徘徊する一匹の獣~ルイス⇒ギレンホール~は、危うい倫理的なラインを踏み越えてぐんぐん過激化していく。「報道の自由」のもとで揺らぐ“倫理‐良心”という重いテーマが、私という観客の胸をざわつかせる…。
2015年9月19日(土)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、17:35~鑑賞。『Mommy/マミー』15:00~と2本立て上映。

作品データ :
原題 J'AI TUE MA MERE
製作年 2009年
製作国 カナダ
配給 ピクチャーズデプト
上映時間 100分


グザヴィエ・ドラン監督デビュー作。母親との関係に悩み衝突しながら成長する少年を瑞々しく描く。ドラン監督が脚本・主演も担い、自伝的な要素も含まれている。監督が19歳のときに制作した本作品は第62回カンヌ映画祭監督週間にて上映され、C.I.C.A.E賞、Prix Regards Jeune賞、SACD賞を受賞。また、第83回アカデミー賞外国語映画賞カナダ代表に選出され、大きな注目を集めた。

ストーリー :
17歳の少年ユベール・ミネリ(グザヴィエ・ドラン)はカナダ・ケベック州の何の変哲もない町でごく普通に暮らしていたが、ここのところ自分の母親が疎ましく思えてどうしようもなかった。洋服やインテリアを選ぶセンスのなさ、口元には食べカスをつけ、口を開けば小言ばかりと、母親の一挙手一投足が癪に触っていた。母親を受け入れ難く思う一方、理由もなく苛立ってしまう自分にも嫌気がさしていた。そして母親のことを、愛情表現が素直にできず、ユベールのことをコントロールしたがるくせに、それについて罪悪感を抱くような自己矛盾があると分析する。かつては大好きだった母親への憎しみは日増しに膨れていく中、ユベールは夕暮れのセント・ローレンス川沿いの土手に腰をかける母親を偶然見かける。その光景は無垢だった幼い頃に見た情景と重なり、安心感を覚える。そんな幼少期への郷愁と折り合いをつけるべく、ユベールはある行動に出る…。

▼予告編


2015年9月19日(土)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、15:00~鑑賞。『マイ・マザー』17:35~と2本立て上映。

作品データ :
原題 MOMMY
製作年 2014年
製作国 カナダ
配給 ピクチャーズ・デプト
上映時間 138分


『わたしはロランス』『トム・アット・ザ・ファーム』のグザヴィエ・ドラン監督が、夫を亡くした母と障害を抱える息子の深い愛情と葛藤を描き出すヒューマンドラマ。出演は『胸騒ぎの恋人』のアンヌ・ドルヴァル、『わたしはロランス』のスザンヌ・クレマンほか。2014年カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作。

ストーリー :
とある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。2ヶ月後、内閣はS18法案を可決する。公共医療政策の改正が目的である。中でも特に議論を呼んだのはS-14法案だった。発達障害児の親が経済的困窮や身体的・精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障した法律である。ダイアン・デュプレの運命は、この法案によって大きく左右されることになる…。喜怒哀楽が激しく、おしゃべりで、いつもケバケバしいファッションに身を包んでいるダイアン・デュプレ(アンヌ・ドルヴァル)は、掃除婦としてギリギリの生計を立てながら15歳になる息子スティーヴ(アントワン=オリヴィエ・ピロン)と暮らすシングルマザー。スティーヴはADHD(多動性障害)を抱え、性格は攻撃的。常に情緒不安定で、他人を罵ったりケンカをふっかけたり、女性とみれば誰かれ構わず親密にタッチしまうクセが抜けないまま大人になりつつある。だが平静なときは、極めて知的でいたって素直などこにでもいる純朴な少年であることが、母親を困惑させていた。スティーヴは矯正施設から退所してきたばかりで、ダイアンは自宅でこの問題だらけの息子の面倒をみることになったのだ。そんな二人が楽しくも困難な生活を送る中、スティーヴと意気投合した隣家のカイラ(スザンヌ・クレマン)は彼の家庭教師を買って出る。カイラは引きこもり気味で神経衰弱の気がある休職中の高校教師。精神的なストレスからか吃音に苦しむカイラだったが、純粋なハートを持ったスティーヴと友情を育み、カイラ自身の心も快方に向かうように見えたのだが…。

▼予告編

2015年9月16日(水)吉祥寺プラザ(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-19、JR吉祥寺駅北口サンロード突き当たり左)で、16:30~鑑賞。

「最後の警官」

作品データ :
製作年 2015年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 120分


警察庁特殊急襲捜査班“NPS”の活躍を描く、ビッグコミック連載の同名作を基にした人気ドラマの初めての劇場版。犯人を生かしたままの「確保」を信条とするNPSのメンバーたちが、日本壊滅を目論む恐るべき敵に立ち向かう姿が綴られる。ドラマ版から続投の向井理、綾野剛らに加え、宿敵・正木役のオダギリジョーなども出演する。

ストーリー :
警視庁特殊部隊“SAT”、警視庁特殊犯捜査係“SIT”に次ぐ“第3のS”として新設された警視庁特殊急襲捜査班“NPS”(=National Police Safetyresucue)。“SAT”の機動力と“SIT”の捜査権を併せ持ち、犯人の生死を問わない“制圧”ではなく、生かしたまま捕える“確保”を目的とした彼らは、発足以降、数々の事件で実績を積み上げ、日本の治安を守る新たな砦として注目を集めていた。平穏な日々の中、普段と変わらない生活を送る人々。だが、その日常を切り裂くように突如、バスジャック事件が発生する。神御蔵一號(向井理)を始めとしたNPSは、出動要請を受けて現場に急行。だが、一向に犯人からの要求はなく、メンバーは現場の状況に違和感を覚える。そんな中、太平洋沖で巨大な輸送船が何者かに乗っ取られる事件が発生。しかも、積載されている貨物は、日本全土を燃やし尽くすほどの核燃料。一体、誰が何のために?!未曾有の事態に備えて閣僚が緊急招集された首相官邸に、犯人を名乗る男から電話が入る。“裸で私はこの世に来た。裸で私はこの世から出て行かなければならない”スピーカーから響き渡るのは、因縁あるあの男の声だった…。進み始めた日本壊滅へのカウントダウン。そして、新たな“S”との共闘。この国の未来を取り戻すため、“S”最後の作戦が始まる…。

▼予告編



■私感 :
私は映画を鑑賞するとき、いつも各作品を全肯定ないし全否定することのないよう努力している。どんな映画でも、それなりに良いところがあるものだ…。
いろいろな角度から照らし出すとき、個々別々の価値が浮き上がり、ほとんどの作品が私にとって一見に値するものとなる。

だが、本作は一体何なんだ?!
キャストやセット、ロケにもそれなりにお金をかけた作品なのに、この出来はどういうことか!

結論的に言えば、これはただの子どもの喧嘩「映画」(⇒TVドラマ⇒漫画)というべきシロモノだろう。

テロリストの設定が甘すぎる!
アクションシーンをはじめとする各シーンは、あまりにもリアリティーが欠落している!
全体として、ひ弱で浅薄で滑稽なストーリーが展開する!
私は2時間の上映時間を通して、肌が粟立つほどの興奮や胸いっぱいの爽やかな感動などとは全く無縁でありつづけた。

東宝WEB SITEのNOW SHOWING-本作(2015年8月29日公開)introductionによれば https://www.toho.co.jp/movie/lineup/s-movie.html、
〈2009年より「ビッグコミック」(小学館刊)にて連載中の人気漫画『Sエス-最後の警官-』。「海猿」の原案を手掛けた小森陽一が原作、作画を藤堂裕が担当。現代の日本社会が抱える問題点を描いた重厚かつ超骨太なストーリーと主人公をはじめ魅力的なキャラクターたちが織り成す人間ドラマが話題を呼び、2013年、連続ドラマ化と映画化を連続して実現する一大プロジェクトが始動しました。/“人を守る手”を持つ主人公・神御蔵一號役に向井理。天才スナイパーであり一號のライバル・蘇我伊織役に綾野剛、一號の幼馴染の看護師・棟方ゆづる役に吹石一恵、第3の「S」ことNPSの隊長・香椎秀樹役に大森南朋、NPS唯一の狙撃手であり女性隊員・林イルマ役に新垣結衣のほか、日本俳優界を代表する豪華出演者が集結。〉
〈メガホンをとるのは、ドラマシリーズから引き続きとなり、「ブラッディ・マンデイ」(TBS)や「新参者」(TBS)など数々の作品でその演出力を高く評価された平野俊一。映画化でスケールアップした大迫力の映像、物語のカタルシスをより深く綿密に描き「Sエス-最後の警官-」を新たなステージへ導きます。…日本壊滅という未曾有の事態を回避するために奮闘する「S」、そして、其々の“正義”。/『未来』を取り戻す、最後にして最大の作戦が、この夏、幕を開けます!〉

この宣伝文句はまさしく羊頭狗肉もいいところ!
本作には、「日本俳優界を代表する豪華出演者が集結」とのこと。
“日本俳優界を代表する豪華出演者”とは、あの程度の迫真力に欠けた、食い足りない演技力の持ち主なのか!


本作の出演者で、私の関心を引き寄せたのは、国際テロリスト・正木圭吾を演じたオダギリジョー(1976~)ただ一人である。

オダギリはもともと存在感の強い、まったりとした味のある俳優だ。
彼の出演作で忘れがたい作品は、2004年公開の映画『血と骨』(崔洋一監督)。
在日文学作家の梁石日(ヤン・ソギル)が、父親をモデルにした主人公(金俊平)の壮絶な人生を描いた同名ベストセラー小説を映画化した作品。
彼は同作でビートたけし演じる金俊平の息子、朴武を演じた。その出演時間は極めて短かったものの、存在感を印象づける演技ぶりで、ビートたけしとのスリリングな喧嘩シーンが今なお鮮やかに私の脳裏によみがえる。

しかし、本作の脚本がお粗末すぎるのだろう。
彼は全編を通じて、自己の持ち味を生かしきれずに終わった。
なるほど、彼は何らかの形で部分的に「知能犯的な精神性を持つテロリスト」を好演している。とはいえ、自ら言明するところの、「じっとりした静かな狂気を大切にして、悪は悪のまま、新しい正木を作らせてもらいました」といった境地をわがものとするにはいたらなかった[映画パンフ『S-最後の警官-奪還』(編集:東宝ステラ、発行所:東宝映像事業部、2015.8.29)参照]。

終盤、彼が神御蔵一號を演じる向井理と対峙する場面。
この、互いの自己主張をぶつけあう、やたらと長い「アクションシーン」に、私はいささかならず白けた。

私が白けた気持ちに陥ったのは、さらに南郷雅文総理大臣を演じる辰巳琢朗の軽さに対してであり、外国人のテロリストたちがしゃべる、調子っぱずれのカタコトの日本語に対してであり、その他、枚挙にいとまがない陳腐なシーンの数々に対してである。

私はいわゆるアクション映画~【人物の性格描写や心理描写よりも、外面的な動作(アクション)を重視し、視覚的で動きの速い描写に力点が置かれている映画】~については、これまで数多(あまた)の作品を観つづけてきた。
とりわけ映画シリーズとしては、2015年9月現在、
・「007」シリーズ全23作※
・「ミッション:インポッシブル」シリーズ全5作※
・「ダーティハリー」シリーズ全5作(第1作『ダーティハリー』1971年~第5作『ダーティハリー5』1988年)
・「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズ全3作(第1作『ビバリーヒルズ・コップ』1984年~第3作『ビバリーヒルズ・コップ3』1994年)
・「ポリス・ストーリー」シリーズ全4作(第1作『ポリス・ストーリー/香港国際警察』1985年~第4作『ファイナル・プロジェクト』1996年)
・「リーサル・ウェポン」シリーズ全4作(第1作『リーサル・ウェポン』1987年~第4作『リーサル・ウェポン4』1998年)
・「ダイ・ハード」シリーズ全5作(第1作『ダイ・ハード』1988年~第5作『ダイ・ハード/ラスト・デイ』2013年)
・「ボーン」シリーズ全4作(第1作『ボーン・アイデンティティー』2002年~第4作『ボーン・レガシー』2012年)
・「トランスポーター」シリーズ全3作(第1作『トランスポーター』2002年~ 第3作『トランスポーター3 アンリミテッド』2008年)
・「ランボー」シリーズ全4作(第1作『ランボー』1982年~第4作『ランボー/最後の戦場』2008年)
・「インディ・ジョーンズ」シリーズ全4作(第1作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』1981年~第4作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』2008年)
・「ハムナプトラ」シリーズ全3作(第1作『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』1999年~第3作『 ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』2008年)
・「バイオハザード」シリーズ全5作(第1作『バイオハザード』2002年~第5作『バイオハザードV リトリビューション』2012年)
・「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ全4作(第1作『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』2003年~第4作『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命〈いのち〉の泉』2011年)
・「猿の惑星」シリーズ全5作(第1作『猿の惑星』1968年~第5作『最後の猿の惑星』1973年)
・「猿の惑星」新シリーズ全2作(第1作『猿の惑星:創世記』2011年、第2作『猿の惑星: 新世紀』2014年)
・「ターミネーター」シリーズ全5作(第1作『ターミネーター』1984年~第5作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』2015年、本ブログ〈July 24, 2015〉記事参照)
・「マトリックス」シリーズ全3作(第1作『マトリックス』1999年~第3作『マトリックス レボリューションズ』2003年)
等々、これらの諸作品を丁寧に、とくと鑑賞してきたものだ。
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※「007」シリーズ:
第1作『007ドクター・ノオ』1962年~第23作『007 スカイフォール』2012年。
主演は初代ジェームズ・ボンド(イギリス秘密情報部員)のショーン・コネリー(第1作~第5作、第7作)、2代目ボンドのジョージ・レーゼンビー(第6作)、3代目ボンドのロジャー・ムーア(第8作~第14作)、4代目ボンドのティモシー・ダルトン(第15作・第16作)、5代目ボンドのピアース・ブロスナン(第17作~第20作)、6代目ボンドのダニエル・クレイグ(第21作~第23作)。
ちなみに、「007」シリーズの全作品中、その日本公開時に私が鑑賞の機会を逸した映画が1本だけあった。1969年12月に公開の第6作『女王陛下の007』(ピーター・ハント監督)である。
私が同作をようやく鑑賞できたのは、それからちょうど30年後の1999年12月、ニューヨークはマンハッタンに滞在中のこと。
同作は【2代目ボンド=ジョージ・レイゼンビー】が主演した唯一の作品。レーゼンビーは歴代ボンドの中でも唯一、ヨーロッパ圏以外の、オーストラリア出身の俳優。

ニューヨークでついに観ることができた『女王陛下の007 』!
しかし、これはアクション映画としては凡作以外の何物でもなかった。
大体、ボンド役を演じたレーゼンビーは、存在感が薄く、演技がヘタクソすぎる。(今にして思えば)史上最もオーラのない007(「ダブル・オー・セブン〈Double O Seven〉」)の登場!
だからこそ、私はなるほどと合点が行ったものだ。
同作の全世界興収が2400万ドルと前作『007は二度死ぬ』(4400万ドル)・前々作『007 サンダーボール作戦』(5600万ドル)に比べ大幅に減少したことに、また次作『007 ダイヤモンドは永遠に』では再びショーン・コネリーがボンド役に復帰したことに。

※「ミッション:インポッシブル」シリーズ:
第1作『ミッション:インポッシブル』1996年~第5作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』2015年(本ブログ〈August 10, 2015〉記事参照)。
主演は第1作~第5作すべて、米国CIAの特殊作戦部IMFのエージェント、イーサン・ハントを演じるトム・クルーズ。
同シリーズは、米国のテレビドラマ『スパイ大作戦』をベースとしたアクション映画の続き物。
『スパイ大作戦』(原題:Mission:Impossible)は、アメリカ政府が手を下せない極秘任務を遂行するスパイ組織IMF(Impossible Mission Force)メンバーの活躍を描くアクションドラマ。CBSテレビで1966年9月17日から73年3月30日まで、毎回1時間枠の全171話が放送された。
日本では、その全話がフジテレビ系列で1967年4月8日から73年9月27日まで放送された。
私は67年から73年にかけて、土曜か月曜か木曜の、午後10時半~か午後9時~の1時間、このテレビドラマのほぼ半数を無心に楽しんで観たものだった。
私が強く惹かれたのは、特に① スパイ組織に対する“当局”からの「指令」の伝達方法の妙味であり、②ラロ・シフリンが手掛けた4分の5拍子のテーマ曲(「ミッション:インポッシブル」シリーズにも使用)におけるラテン・パーカッションが際立つ激しいリズムの躍動感であり、③日本語吹替版における声優・若山弦蔵の「レディー・キラー・ボイス」の魅力である*。 

*①『スパイ大作戦』の基本的な話の流れは、「IMFのリーダーが“当局”からの指令を受ける」→「リーダーが作戦を立て、作戦に参加するメンバーを選ぶ」→「打ち合わせ」→「作戦開始(~作戦実行)」→「任務完了」である。指令の伝達において、“当局”の人間とリーダーは直接に会わない。リーダーは事前に何らかの連絡方法で伝えられた「指令伝達場所」に出向いて、小型オープンリール式テープレコーダー等(LPレコード、ワイヤー式レコーダー、8トラックテープなど)に録音された指令を聞き、写真や資料を閲覧→入手する。指令の最後には「リーダーやメンバーが捕えられ、あるいは殺されても当局は一切関知しない」、「なお、このテープは自動的に消滅する」とのメッセージが入っており、指令再生が終わると化学反応で自然発火するなどの仕掛けにより、録音部分は消滅し再生が不可能な状態になる。また、独自に録音テープ等を破棄せよとの指令の場合は、焼却炉等に投げ込んで処分する。
②ラロ・シフリン(1932~)はアルゼンチン出身の作曲家・演奏家。ジャズやファンクの要素を取り入れたクールな、『ブリット』(スティーヴ・マックイーン主演、1968年)、『ダーティハリー』(クリント・イーストウッド主演、1971年)、『燃えよドラゴン』(ブルース・リー主演、1973年)など、数々の映画音楽の名作を生み出した。
③若山弦蔵(わかやま・げんぞう、1932~)は日本・樺太大泊町出身の大御所声優の1人。『スパイ大作戦』(日本語吹替作品)の主演【IMFメンバー初代リーダー=ダン・ブリックス→二代目リーダー=ジム・フェルプス】を務めた彼の日本人離れした独特の、重厚感のある甘い低音が今でも私の耳の奥に心地よく響いている。

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そんな私が己(おの)が鑑賞眼を恃(たの)んで、はっきりと主張したい。
日本映画の場合、少なくとも「時代劇」※を除いたアクション映画については総じて、欧米映画~さらには「香港アクション」~と比較して、スピード感やスリルに縁取られたストーリーの展開が格段に見劣りする、と。


※日本の時代劇映画として私がすぐに情景を味わい返すのは、例えば『七人の侍』(黒澤明監督、1954年)→『蜘蛛巣城』(黒澤明監督、1957年)→『柳生一族の陰謀』(深作欣二監督、1978年)→『魔界転生』(深作欣二監督、1981年)→『里見八犬伝』(深作欣二監督、 1983年)→『将軍家光の乱心 激突』(降旗康男監督、1989年)等々であり、これらはアクション映画として十分見応えのある作品である。
2015年9月8日(火)ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町イトシア・イトシアプラザ4F、アクセス:JR山手線・有楽町駅中央口から徒歩1分)で、21:10~ 鑑賞。

作品データ :
原題 THE BEST OF ME
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 ブロードメディア・スタジオ
上映時間 118分


『きみに読む物語』The Notebook(1996)を始め、著作が次々と映画化されているニコラス・スパークス(Nicholas Sparks、1965~)のベストセラー小説を映画化したラブストーリー。高校時代に深く愛し合う男女の姿と、20年後に再会した2人の揺れ動く心情を描く。出演は『ミッション:8ミニッツ』のミシェル・モナハン、『X-MEN』シリーズのジェームズ・マースデン。

ストーリー :
ルイジアナ州の田舎町。海上の石油採掘基地で働くドーソン(ジェームズ・マースデン)は、爆破事故から奇跡的に助かったことをきっかけに、一度は捨てた“物事にはすべて意味がある”という考えを再び信じるようになる。奇しくも事故直後、人生の恩人でもある友人タックが他界。彼の遺言を、高校時代の恋人アマンダ(ミシェル・モナハン)とともに実行することに。一方、アマンダは結婚して幸せな主婦となったはずだったが、実は夫との間で徐々に溝が広がっていた。20年間、それぞれの人生を歩んできたドーソンとアマンダの運命が再び交錯し、2人が心の奥に封印していた“想い” が愛おしくも切ない思い出とともに甦る。彼らの再会には、果たしてどんな意味があるのだろうか…?

▼予告編

2015年9月8日(火)ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町イトシア・イトシアプラザ4F、アクセス:JR山手線・有楽町駅中央口から徒歩1分)で、19:10~ 鑑賞。

作品データ :
原題 THE FACE OF AN ANGEL
製作年 2014年
製作国 イギリス イタリア スペイン
配給 ブロードメディア・スタジオ
上映時間 101分


イタリアで実際に起きた英国人女子留学生殺害事件を[『いとしきエブリデイ』のマイケル・ウィンターボトム監督が映画化。狂騒的なメディアの報道合戦の中、事件の闇に切り込む映画監督の姿を描く。出演は『ラッシュ/プライドと友情』のダニエル・ブリュール、『アンダーワールド』シリーズのケイト・ベッキンセイル、『アンナ・カレーニナ』のカーラ・デルヴィーニュ、『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』のヴァレリオ・マスタンドレア。

ストーリー :
2011年。気鋭の映画監督トーマス・ラング(ダニエル・ブリュール)は、2007年にイタリアの古都シエナで起きた殺人事件の映画化をオファーされ、そのリサーチのためローマに降り立つ。ここ数年、思い通りの映画を撮ることができずにいた彼にとって、この新作プロジェクトは再起のチャンスでもあった。ローマ在住のアメリカ人ジャーナリストで、事件に関するノンフィクションの著者でもあるシモーン・フォード(ケイト・ベッキンセイル)と対面したトーマスは、映画化するならフィクションにすべきだとアドバイスされる。当時、シエナの大学に通うイギリス人留学生エリザベスが、共同フラットの自室で遺体となって発見、まもなく彼女のルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカとその恋人のイタリア人青年、そしてエリザベスのバイト先のバー経営者の3人が殺人容疑で逮捕された。だがその後、ジェシカのセクシーな容姿や奔放な振る舞いが脚光を浴び、過熱したメディアは虚実入り混じったスキャンダル報道を連発。すでにジェシカは一審で有罪判決を受け、今まさに世界中が注目する控訴審が始まろうとしていた。シモーンとともにシエナを訪れたトーマスは、想像をはるかに超えたメディアの狂騒に驚きを隠せない。警察や裏社会の事情に通じる謎めいた人気ブロガーのエドゥアルド(ヴァレリオ・マスタンドレア)は、訳知り顔でジェシカは無罪だとトーマスに言い放つ。そんな中、自宅があるロンドンに一時帰国したトーマスは、映画関係者とのミーティングに参加するが、まだ作品の方向性も定まっていない段階で有名女優の起用にばかり興味を示す彼らに違和感を抱く。さらにトーマスはプライベートでも離婚した女優の妻との間で、ひとり娘の親権を巡り揉めていた。その問題から現実逃避するかのように再びイタリアへやってきたトーマスは、エリザベス殺害事件を単なる犯人捜しの再現映画にするのではなく、独自の真実をあぶり出す作品にしたいと考え、ダンテの『神曲』をベースにした3部構成のアイデアを思いつく。だが、それはセンセーショナルな犯罪スリラーを作りたがっているプロダクションの意向に反するものだった。創作上の苦悩に苛まれ、ドラッグに依存するようになったトーマスは、エドゥアルドこそがエリザベス殺しの真犯人ではないかと妄執に囚われていく。そんな彼の心を癒やしたのは、シエナの街のガイド役に雇ったイギリス人大学生メラニー(カーラ・デルヴィーニュ)の存在だった。彼女に娘にも似た愛おしさを感じるようになったトーマスは、懸命に脚本の執筆を続けていく。それは被告のジェシカではなく、何者かによって輝かしい未来を絶たれた被害者エリザベスとその遺族の立場に寄り添った“愛”の物語であった…。

▼予告編

2015年9月8日(火)ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町イトシア・イトシアプラザ4F、アクセス:JR山手線・有楽町駅中央口から徒歩1分)で、17:35~ 鑑賞。

作品データ :
原題 BALLETTGUTTENE
製作年 2014年
製作国 ノルウェー
配給 アップリンク
上映時間 75分


ノルウェーのバレエスクールに通い一流のバレエ・ダンサーを目指している3人の少年に4年間密着したドキュメンタリー。真剣にバレエに打ち込み、互いに対抗心を持ちながら切磋琢磨し合い、夢に向かっていく3人。自分の才能だけでなく周囲の環境を含め現実に直面せざるをえない厳しい世界の中で、大人の入口にさしかかり岐路に立つ少年たちの友情と成長を見つめていく。監督は数々のドキュメンタリー作品を手がけるケネス・エルヴェバック。劇場公開に先駆け、北欧映画を集めたトーキョーノーザンライツフェスティバル2015で上映された。

ストーリー :
ルーカス、シーヴェルト、そしてトルゲールの3人は、一流のバレエ・ダンサーになることを目指してノルウェーのバレエスクールに通っている。ふざけたり女子の話をしたりと少年らしい顔を見せる一方、厳しい練習にも真剣に打ち込み切磋琢磨し合っていた。数々のコンクールに出場し、3人は狭き門をくぐり抜けクラシック・バレエのコースのあるオスロ国立芸術アカデミーへの入学資格を手に入れる。そんな彼らに大人たちは、別の選択肢に備えバレエばかりではなく勉強もしておくよう忠告した。大人の入口に立つ彼らは、自分の才能について、将来について、周囲の環境について向き合わざるをえなくなる。そんな中、バレエ以外の道はないと言い切りいつも誰よりも早くスタジオに入り準備していたルーカスが、多くの有名ダンサーを送り出してきたイギリスにあるロイヤル・バレエスクールに招待される…。

▼予告編