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普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年9月11日(火)TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区有楽町1-2-2、JR有楽町駅・日比谷口徒歩5分)で、14:15~ 鑑賞。

作品データ :
原題 L'INSULTE
製作年 2017年
製作国 レバノン/フランス
配給 ロングライド
上映時間 113分


「判決、ふたつの希望」

第90回アカデミー賞でレバノン映画として初の外国語映画賞にノミネートされたヒューマン・ドラマ。宗教や政治が複雑に絡まりあったパレスチナ情勢を背景に、最初は個人と個人のささいな諍いだったはずが、いつしか国中を巻き込んだ泥沼の法廷闘争へと発展していくさまを描き出す。主演はアデル・カラムとカメル・エル=バシャ。監督はレバノン出身で、クエンティン・タランティーノ監督のアシスタント・カメラマンという経歴を持つジアド・ドゥエイリ。

ストーリー :
レバノンの首都ベイルート。パレスチナ難民でイスラム教徒のヤーセル・サラーメ(カメル・エル=バシャ)は、現場監督として住宅の補修作業にあたっていた。するとアパートの住人で、キリスト教徒のレバノン人男性トニー・ハンナ(アデル・カラム)と、アパートのバルコニーからの水漏れをめぐって諍いを起こす。翌日、ヤーセルは上司に伴われ、トニーのもとへと謝罪に赴く。神妙なヤーセルだったが、トニーの放った“ある一言”~「シャロンに抹殺されていればよかった!」~に感情を抑えられず、思わず手を上げてしまう。ついに二人の対立は法廷へと持ち込まれるが、弁護士同士の激論は火に油を注ぐ結果に。そこにメディアが飛びつき、両陣営の衝突を大々的に報じたことから、事態はトニーとヤーセルの思惑を超えてレバノン全土を巻き込んだ巨大な政治問題へと発展してしまう…。

▼予告編



▼ジアド・ドゥエイリ監督(Ziad Doueiri、1963~) メッセージ映像→インタビュー映像→トークイベント映像 :



2018年9月7日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:00~鑑賞。

「マガディーラ」

作品データ :
原題 MAGADHEERA
製作年 2009年
製作国 インド
配給 ツイン
上映時間 139分


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インド映画史上歴代最高興収を達成し、日本でもロングランヒットを記録した『バーフバリ』2部作(本ブログ〈January 19, 2018〉)のS・S・ラージャマウリ監督と、『バーフバリ』のスタッフが集結し、2009年に製作されたスペクタクル・アドベンチャー。互いに愛し合いながらも裏切り者の陰謀によって非業の死を遂げた伝説の戦士と王女が、400年の時を経て生まれ変わり、再び立ちはだかる裏切り者と繰り広げる時空を超えた壮大な愛と復讐の物語を圧倒的スケールで描き出す。出演は、これが出演作日本初公開となるテルグ映画のスター、ラーム・チャラン、『バードシャー テルグの皇帝』のカージャル・アガルワル。

ストーリー :
1609年のウダイガル王国。国王の娘ミトラ姫と愛し合う近衛軍の伝説的戦士バイラヴァ(ラーム・チャラン)は、王国とミトラ姫(カージャル・アガルワル)を我が物にしようと企む軍司令官ラナデーヴ(デヴ・ギル)の邪悪な陰謀により、無念の死を遂げる。そして時は流れ、400年後のインド、ハイデラバード。バイラヴァはバイクレーサーのハルシャ(ラーム・チャラン)という若者に生まれ変わっていた。ある日、町で偶然、1人の女性の手に触れた瞬間、前世の記憶が一気にあふれ出すハルシャ。その女性を見失ったものの、やがてミトラ姫の生まれ変わりであるインドゥ(カージャル・アガルワル)と運命の再会を果たす。だが、かつて二人の仲を引き裂いたラナデーヴもまた、インドゥの従兄弟ラグヴィール(デヴ・ギル)に生まれ変わっており、再び悪逆非道な罠を仕掛けてくる…。

▼予告編

2018年8月31日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:55~鑑賞。

「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」

作品データ :
原題 MAMMA MIA!HERE WE GO AGAIN
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 114分


ABBAの名曲の数々で綴る人気ミュージカルをメリル・ストリープとアマンダ・セイフライドの主演で映画化し世界的に大ヒットした『マンマ・ミーア!』の10年ぶりとなる続編。前作と同じくギリシャの架空の島“カロカイリ島”を舞台に、前作のその後の物語と、ドナがソフィの父親候補3人と出会った青春時代を中心に、過去と現在を行き来して、そこからどのように現在に繋がっているのかが描かれる。出演はオリジナル・キャストに加え、若きドナ役で『シンデレラ』のリリー・ジェームズ、ドナの母にしてソフィの祖母ルビー役でシェールが登場。監督は『17歳のエンディングノート』のオル・パーカー。

ストーリー :
どこまでも青く輝くエーゲ海に浮かぶギリシャのカロカイリ島。母ドナ・シェリダン(メリル・ストリープ)との夢だった新築ホテルをついに完成させたソフィ・シェリダン(アマンダ・セイフライド)は、支配人に就任したセニョール・シエンフエゴス(アンディ・ガルシア)と共に、オープニング・パーティの準備に奔走していた。人生で最高に晴れやかな日。だが、ソフィの心は揺れていた。ニューヨークでホテルビジネスを学んでいる夫のスカイ(ドミニク・クーパー)が、そこで働かないかと誘われていたのだ。ニューヨークで新たな人生を始めることに魅力を感じるスカイと、母の夢にこだわるソフィ。2人の間には、かつてない危機が訪れていた。そんな中、ソフィの妊娠が発覚。思わず、若き日の母と自分を重ねるソフィ。1人で私を身籠った時、ママはどんな気持ちだったのか?3人のパパたちとはどのように出会い、なぜ別れたのか…?時は遡り1979年、オックスフォード大学を卒業した若き日のドナ(リリー・ジェームズ)は、広い世界へ羽ばたこうとひとりで旅に出る。やがて宿泊先のホテルで若き日のハリー・ブライト(ヒュー・スキナー)と出会うドナだったが、それは彼女の人生を変える三つの出会いの始まりに過ぎなかった…。

▼予告編



▼特別映像 - マンマ・ミーア!レガシー :



▼特別映像 - “若きドナと3人のパパ候補の出逢い” :



▼てっぱんの“ダンシング・クイーン” 本編歌唱シーン→メイキング特別映像 :


2018年8月28日(火)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、20:45~鑑賞。

作品データ :
製作年 2017年
製作国 日本
配給 SPOTTED PRODUCTIONS
上映時間 101分


「少女邂逅」

若手映画監督・ミュージシャンの登龍門となっている映画祭「MOOSIC LAB 2017」で長編部門観客賞を受賞した青春ドラマ。いじめに苦しむ女子高生と、彼女の救世主のように現われた転校生が織りなす残酷で美しい青春模様を綴る。監督は『さよならスピカ』(2013年)で第26回早稲田映画まつり観客賞・審査員特別賞を受賞した枝優花。ミスiD 2016グランプリの保紫萌香とモデルのモトーラ世理奈が、二人の少女をみずみずしく演じる。

ストーリー :
いじめをきっかけに声が出なくなった小原ミユリ(保紫萌香)。自己主張もできず、周囲にSOSを発信するためのリストカットをする勇気もない。そんなミユリの唯一の心の支えは、山の中で拾った蚕。ミユリは蚕に「紬(ツムギ)」と名付け、こっそり大切に飼っていた。「君は、私が困っていたら助けてくれるよね、ツムギ」 この窮屈で息が詰まるような現実から、いつか誰かがやってきて救い出してくれる─とミユリはいつも願っていた。ある日、いじめっ子の清水に蚕の存在を知られ、捨てられてしまう。唯一の友達を失い絶望するミユリ。その次の日、ミユリの通う学校に「富田紬(つむぎ)」という少女(モトーラ世理奈)が転校してくる…。

▼予告編

2018年8月28日(火)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、18:45~鑑賞。

「輝ける人生」

作品データ :
原題 FINDING YOUR FEET
製作年 2017年
製作国 イギリス
配給 アルバトロス・フィルム
上映時間 114分


長年連れ添った夫の浮気をきっかけに人生を見つめ直すことになる女性の姿を、笑いと涙、音楽とダンスを交えて、英国を代表する名優たちの共演で描いた人生賛歌。主演は『ヴェラ・ドレイク』『パレードへようこそ』のイメルダ・スタウントン、共演にティモシー・スポール、セリア・イムリー。監督は『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』のリチャード・ロンクレイン。

ストーリー :
35年寄り添った夫がナイトの称号を授与され、自身も“レディ”となり鼻高々のサンドラ・アボット(イメルダ・スタウントン)。順風満帆に見えた人生だったが、記念すべき日に夫と親友の浮気現場を目撃。傷心を抱えながらサンドラは、大きな荷物を担ぎ、ロンドンに住む姉ビフ(セリア・イムリー)の家に転がり込む。金や名誉とは無縁の自由奔放なビフは、なんでも話せる親友のチャーリー(ティモシー・スポール)やダンス教室の仲間に囲まれて、人生を心から謳歌していた。ある日、妹の窮地を心配する姉は、サンドラをダンス教室へ無理やり連れて行く。気の進まないサンドラだったが、音楽とダンスは、かつてダンサーを目指したこともある彼女の心を癒やし、忘れかけていた恋と情熱を思い出させるのだった。街でダンス、ロンドンでデート、友だちとパーティー、そしてローマへの旅へ…。サンドラは魅力的な彼/彼女から少しずつ勇気をもらいながら、息苦しい世界から抜け出していく…。

▼予告編



▼ Full Movie :

2018年8月28日(火)シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F、JR新宿駅東南口および中央東口より徒歩2分)で、16:55~鑑賞。

「クリミナル・タウン」

作品データ :
原題 NOVEMBER CRIMINALS
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ・プラス
上映時間 86分


『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴートと『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツが主演した青春ノワール・ミステリー。親友が命を落とした銃撃事件の真相解明に挑む高校生の姿を描く。共演はデヴィッド・ストラザーン、キャサリン・キーナー。監督は『ヒッチコック』のサーシャ・ガヴァシ。2010年にアメリカで発表された、サム・マンソン(Sam Munson)のヤングアダルト小説“The November Criminals”(金井真弓訳『クリミナル・タウン』早川書房、2018年)を原作にしている。

ストーリー :
趣味は読書とデヴィッド・ボウイを聞くこと、ビデオ日記をつけること。ワシントンD.C.にある
公立高校の卒業を控えるアディソン・シャクト(アンセル・エルゴート)は、変わり映えのない毎日をやり過ごしていた。その日、幼馴染みで恋人未満のフィービー(クロエ・グレース・モレッツ)から、大学に進学する前に処女を捨てるため「心許せる相手と寝たいの」という、どびきりの爆弾を持ちかけられ、初めて二人で親密な時間を過ごした直後、親友のケヴィン(Jared Kemp)が、バイト先のコーヒーショップで銃殺されたという知らせを聞く。
警察は「チンピラの黒人少年が麻薬を巡るギャング同士の抗争に巻き込まれたのだろう」と、早々に捜査を畳むが、アディソンは優等生のケヴィンが麻薬に関わっていたはずがないと納得が行かない。アディソンはフィービーと共に、校内や各所に「目撃情報求む」と張り紙をし、独自の調査に乗り出すが、証言を取り合おうとしない警察や、大学への推薦状をちらつかせ、調査を制止させようとする学校、「深入りするな」と脅しをかけてくる同級生…。まるで街全体が事件をなかったことにしようとしているかのような不自然な動きだった。
ひるまずに調査を続けるアディソンとフィービーは、ケヴィンのバイト仲間、担当したカウンセラー、両親などに会う。話を聞くうちに二人は、何かと違和感を抱き始める。食い違う人物像、不可解な行動…。「ケヴィン、君は一体何者なんだ?」
危険を感じたフィービーが、調査を止めよう訴えるのをよそに、アディソンは事件の核心へと近づいていく。だが、それはワシントンD.C.の巨大な闇を突く、最も危険な行動だった…。

▼予告編


2018年8月24日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:00~鑑賞。

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 123分


『犯人に告ぐ』などで知られる雫井脩介の同名ミステリー小説を『無限の住人』の木村拓哉と『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』の二宮和也の主演で映画化した社会派ミステリー。一つの殺人事件を巡り、容疑者として浮上した男を自らの“正義感”からあらゆる手段で追い詰めていくエリート検事と、そんな上司の捜査方針に次第に疑問を抱き始める新米検事の対立の行方をスリリングに描き出す。共演は吉高由里子、平岳大、大倉孝二、松重豊、酒向芳、山﨑努。監督は『突入せよ!あさま山荘事件』『日本のいちばん長い日』の原田眞人。

ストーリー :
都内で発生した殺人事件。犯人は不明。事件を担当する検察官は、東京地検刑事部のエリート検事・最上毅(木村拓哉)と、刑事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野啓一郎(二宮和也)。最上は複数いる被疑者の中から、一人の男に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。その男・松倉重生(酒向芳)は、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の重要参考人だった人物。最上を師と仰ぐ沖野は、被疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるのだが、松倉は犯行を否認し続け、一向に手応えが得られない。やがて沖野は、最上の捜査方針に疑問を持ち始める。「最上さんは、松倉を、犯人に仕立て上げようとしているのではないか?」互いの正義を賭けて対立する二人の検事。彼らの戦いに、待ち受けていた決着とは…。

▼予告編



◆原田眞人(1949~)監督 インタビュー(読売新聞東京本社版2018年8月10日付夕刊6面) :
「検察側の罪人」
2018年8月21日(火)ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町イトシア・イトシアプラザ4F、アクセス:JR山手線・有楽町駅中央口から徒歩1分)で、20:55~ 鑑賞。

「ヒトラーを欺いた黄色い星」

作品データ :
原題 Die Unsichtbaren – Wir wollen leben
製作年 2017年
製作国 ドイツ
配給 アルバトロス・フィルム
上映時間 111分


第二次世界大戦下のベルリンでナチスによるホロコーストを免れて戦後まで生き抜いたユダヤ人たちの驚きの実話を、実際の4人の生還者たちへの取材をもとに再現した実録サバイバル・ドラマ。出演は、『ヴィクトリア』のマックス・マウフ、『ゴーストハンターズ オバケのヒューゴと氷の魔人』のルビー・O・フィー、『Das Leben ist zu lang』のアーロン・アルタラス、『あの日 あの時 愛の記憶』のアリス・ドワイヤー。監督は、テレビドキュメンタリーを中心に活躍してきたクラウス・レーフレ。

ストーリー :
第二次世界大戦下の1941年から1945年にかけて、ナチスに虐殺されたヨーロッパのユダヤ人は約600万人と言われている。そのうちドイツ国籍を持っていたのは16万人。ドイツ系ユダヤ人の国外移住は禁じられ、違法ルートでの脱出もほぼ不可能だった。1943年6月19日、ナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは、ドイツの首都ベルリンからユダヤ人を一掃したと正式に宣言した。
しかし、事実は違っていた。約7000人のユダヤ人がベルリン各地に潜伏し、最終的に約1500人が戦争と迫害を生き延びたのだ。ユダヤ人迫害の嵐が吹き荒れる極限状況下、彼らはいかにして身分を隠して住居や食料を確保し、ゲシュタポの追跡や密告者の監視を掻い潜ったのか。
この物語に登場するツィオマ・シェーンハウス(マックス・マウフ)、ルート・アルント(ルビー・O・フィー)、オイゲン・フリーデ(アーロン・アルタラス)、ハンニ・レヴィ(アリス・ドワイヤー)の4人は、いずれも潜伏開始時に16歳から20歳だった若者。

宝石ブルー ツィオマ・シェーンハウス(男性/1942年に潜伏開始。当時20歳):ベルリンで暮らしていたツィオマは当局から移送命令を受けたが、集合場所で担当官に「工場に戻れと言われています」と咄嗟に嘘をつき、運よく収容所行きを免れた。両親と生き別れて独りぼっちになったツィオマは、出征を控えるドイツ人兵士に成りすまし、ベルリン市内の空室に寝泊まりすることに。危険な長居を避けて20軒ほどの空室を転々としたのち、親切な家主の女性にめぐり合い、身を落ち着かせることができた。やがて器用な手先を生かしてユダヤ人向けの身分証の偽造を行なっていたツィオマは、ユダヤ人を支援する中年男カウフマンから大量の偽造依頼を受注。さらに友人のルートヴィヒから人目につかない作業場を紹介され、多くのユダヤ人の命を救うことができるこの闇仕事に没頭し、幼い頃からの夢だったボートを購入できるほどの報酬を得ていった。しかし、不注意によるトラブルで指名手配されてしまい、新たな潜伏先に向かうことに―。
宝石赤 ルート・アルント(女性/1942年に潜伏開始。当時20歳):ユダヤ人はダンスホール入場が禁止されていたため、友人宅でレコードをかけて踊りを楽しんでいたルートは、ユダヤ人弾圧の激化によって潜伏を考え始める。ルートとその家族を最初に匿ったのは、医師であるルートの父親を娘の恩人として敬うキリスト教徒のゲール夫人だった。いつ逮捕されるか絶え間ない不安のなか、ルートは友人のエレンとともに戦争未亡人を装って外出するようになる。やがて隠れ家を失った二人は凍てつく路頭をさまようが、ドイツ国防軍のヴェーレン大佐の邸宅でメイドの仕事を得た。連日、豪勢なパーティーを開くヴェーレン大佐は、ルートらがユダヤ人だと気づきながらも、なぜか掃除や子守の仕事を与えて守ってくれた。そしてベルリンへの空襲が激化するなか、家族のもとへ帰ろうとしたルートは、死体があちこちに散乱する市内中心部の惨状を目の当たりにする―。
宝石ブルー オイゲン・フリーデ(男性/1943年に潜伏開始。当時16歳):母親の再婚相手がドイツ人だったため、オイゲンは家族の中で唯一、ユダヤ人と識別するための黄色い星のバッジを付けなくてはならなかった。両親と別れて潜伏する破目になったオイゲンは、共産主義者の一家に受け入れられ、その家の娘との淡い恋を経験する。しかし、その穏やかな日々は長く続かなかった。郊外の活動家ヴィンクラーの家に引き取られたオイゲンは、周囲に怪しまれないようヒトラー青少年団の制服を与えられた。ある日、テレージエンシュタットの収容所から脱出してきた男ヴェルナーがヴィンクラー宅に身を寄せてきて、ユダヤ人虐殺の恐ろしい実態を打ち明ける。「皆殺しだ。翌日には全員死んでいる。ガスで殺すんだ!」。オイゲンはヴィンクラーやヴェルナーによる反ナチスのビラ作りを手伝うことに。やがてヴィンクラーらは密告によって逮捕され、屋根裏部屋に身を潜めることになったオイゲンのもとにはゲシュタポの手入れが迫ってくる―。
宝石赤 ハンニ・レヴィ(女性/1943年に潜伏開始。当時17歳):両親を亡くし、知り合いのユダヤ人一家と同居していた孤児のハンニは、ひとり収容所行きを免れて着の身着のまま家を出た。母の友人であるキリスト教徒のベルガー夫人を頼ったハンニは、ハンネローレ・ヴィンクラーという偽名を使い、美容院で髪を金色に染めて別人となる。こうしてユダヤ人としての素性を隠すことに成功するが、隠れ家を失って孤独の恐怖に苛まれることに。ある日、ハンニは映画館で若い男性に声をかけられた。ハンニに好意を寄せるその男性は、戦地行きを間近に控えており、映画館の窓口係をしている母親の話し相手になってほしいと頼んでくる。「私はユダヤ人で、逃げ場がないんです」。男性の母親に意を決してそう伝えると、その女性はハンニを自宅に匿ってくれた。やがて二人は本当の母子のような絆を育むが、戦争の終わりが近づくなか、ベルリンに侵攻したソ連兵が彼女たちの前に現われる―。

▼予告編

2018年8月21日(火)TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区有楽町1-2-2、JR有楽町駅・日比谷口徒歩5分)で、18:15~ 鑑賞。

「スターリンの葬送狂騒曲」

作品データ :
原題 THE DEATH OF STALIN
製作年 2017年
製作国 イギリス/カナダ/フランス/ベルギー
配給 ギャガ
上映時間 107分


1953年のロシア(旧ソ連)を舞台に、独裁者ヨシフ・スターリンの死によって巻き起こった政権内部の争い~最高権力者の座を巡る狂気の椅子取りゲーム~を辛辣かつコミカルに描き、ロシアで上映禁止となって話題を集めたブラックコメディ。モスクワ党第一書記のニキータ・フルシチョフを演じたスティーヴ・ブシェミら、個性派俳優たちの熱演がユニークな物語を盛り上げる。監督は英国のTVを中心に活躍し長編映画は2作目となるアーマンド・イアヌッチ。
映画化の経緯を見ると、2014年にフランスでファビアン・ニュリ作、ティエリ・ロビン画のグラフィックノベル『La Mort de Staline』が出版され、その映画化権をフランス人プロデューサー陣が獲得→英国で辛口政治ドラマの作り手として実績のあるアーマンド・イアヌッチに監督を依頼→主要な登場人物のキャスティングを英米の俳優でほぼ固め、全編英語の台詞で語る、豪華な舞台劇のような趣を備える。

※本作に対するロシア側の反応(『ウィキペディア日本語版』「スターリンの葬送狂騒曲」2018年8月25日閲覧) :
<2017年9月、ロシア文化省の高官は「社会の隆起を引き起こしてロシアを不安定化させる西側の陰謀」の一部となる可能性があると主張し、ロシア当局がこの映画の上映禁止を検討していると述べた。作家・政治活動家のニコライ・スタリコフは、映画が「英国の知的階級による非友好的行為」であり「反ロシア情報戦争」の一部であることは明らかだと主張した。/一般公開の2日前である2018年1月23日に行われた上映会には国家院議員、文化省高官、映画業界関係者が出席した。2日後、文化省は映画の上映許可を取り消したが、いくつかの映画館が「上映不許可の連絡が届かなかった」と主張して上映を開始したため、文化省は上映を強行した映画館に対して訴訟を起こしている。ゲオルギー・ジューコフの娘エイラ・ジューコヴァ、映画監督のニキータ・ミハルコフやウラジーミル・ボルトコ、ロシア国立歴史博物館館長アレクセイ・リフキンを含む文化省顧問弁護士グループは、文化大臣ウラジーミル・メジンスキーに対して映画の上映を許可するように要請したが、彼は「『スターリンの葬送狂騒曲』の過激論者は憎悪と敵意を煽り、ロシア(ソ連)の民族と社会の尊厳を損なっている。我々は、この映画が“1950年代のソビエト連邦は人々に憎悪と嫌悪のみを感じさせた”という過去に歪めるために作られたと確信している」と返答した。また、ロシアの作家たちからは「第二次世界大戦の戦士たちの記憶を中傷する」という批判が起き、さらにスターリングラード攻防戦の戦勝75周年を前に「全ての戦死者と生存者に対して唾を吐く行為だ」という批判も起きている。/映画はロシアを始めベラルーシ、カザフスタン、キルギスで上映禁止となった。ユーラシア経済連合の加盟国の中ではアルメニアのみが上映を許可しており、2018年1月25日にエレバンの2劇場で公開され、カザフスタンでは小規模な映画祭でのみ公開された。>

ストーリー :
“敵”の名簿を愉しげにチェックするスターリン(アドリアン・マクローリン)。名前の載った者は、問答無用で“粛清”される恐怖のリストだ。時は1953年、モスクワ。スターリンと彼の秘密警察がこの国を、20年にわたって支配していた。
下品なジョークを飛ばし合いながら、中央委員会書記長スターリンは側近たちと夕食のテーブルを囲む。道化役のモスクワ党第一書記のフルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)の小話に、大笑いするNKVD(秘密警察)警備隊長のベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)。スターリンの腹心のマレンコフ(ジェフリー・タンバー)は空気が読めないタイプで、すぐに場をシラケさせてしまう。
明け方近くまで続いた宴をお開きにし、自室でクラシックをかけるスターリン。無理を言って録音させたレコードの袋には、ピアニストのマリヤ(オルガ・キュリレンコ)からの「その死を祈り、神の赦しを願う、暴君よ」と書かれた手紙が入っていた。それを読んでも余裕で笑っていたスターリンは次の瞬間、顔をゆがめて倒れ込む。
お茶を運んできたメイドが、意識不明のスターリンを発見し、すぐに側近たちが呼ばれる。驚きながらも「書記長職は代理の私が務める」と、すかさず宣言するマレンコフ。側近たちで医者を呼ぼうと協議するが、有能な者はすべてスターリンの毒殺を企てた罪で獄中か、死刑に処されていた。仕方なく集められたヤブ医者たちが、駆け付けたスターリンの娘スヴェトラーナ(アンドレア・ライズブロー)と側近たちに、スターリンは脳出血で回復は難しいと診断を下す。その混乱に乗じて、ベリヤはモスクワの警備を、軍から警備隊の自分の部下たちに交代させる。
その後、スターリンはほんの数分間だけ意識を取り戻すが、後継者を指名することなく、まもなく息を引き取る。この混乱に乗じて、側近たちは最高権力の座を狙い、互いを出し抜く卑劣で姑息な駆け引きを始める。表向きは厳粛な国葬の準備を進めながら、マレンコフ、フルシチョフ、ベリヤに加え、各大臣、ソビエト軍の最高司令官ジューコフ(ジェイソン・アイザックス)までもが参戦。進行する陰謀と罠―果たして、絶対権力のイスに座るのは誰?!

アップ アーマンド・イアヌッチ監督(Armando Iannucci、1963~)のCOMMENT :
≪“悲劇的なコメディ”を作るつもりだった。全編を通してコメディと悲劇があり、しばしばこの二つが同じシーンに起こる。強烈な緊張と不安と恐怖が絶妙に混ざることで、神経衰弱ぎみな状況から奇妙なおかしさが込み上げてくる。/登場人物は皆、残忍で凶悪なところがある。観客が共感する人物や、毛嫌いしたくなる人物もいる。しかし、常に覚えておいてほしいのは、たとえ登場人物を応援したくなったとしても、実際には彼らの行動が普通の人々にひどく壊滅的な影響をもたらしていたということだ。/本作を手掛けるにあたって意識したのは、1930年代から50年代にかけて、当時何百万もの人々が命を落とし、姿を消したという事実を決してないがしろにしてはいけないということ。避けて通ったり、軽いジョークで簡単に片づけたりできる歴史ではない。映画製作のすべての段階において、このことを念頭に置き、細心の注意を払う必要があった。≫(映画パンフ『THE DEATH OF STALIN スターリンの葬送狂騒曲』〈発行日:2018年8月3日、編集:(株)東宝ステラ、発行所:東宝(株)映像事業部、定価:本体667円+税〉)

▼予告編



▼冒頭映像



▼本編映像



■私感 :
ウーン…、唸るほど面白い!これはブラックコメディの到達点か!
ヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・スターリン(Iosif Vissarionovich Stalin、1878~1953/03/05)。“粛清”という名の大量虐殺による恐怖で、国民はもちろん部下たちも支配し、30年近くソ連に君臨した、20世紀を代表する独裁者だ。
彼の死後、スターリンの補佐役だったマレンコフ、モスクワ党第一書記のフルシチョフ、秘密警察を牛耳るベリヤが3大トップとなり、各大臣にソ連軍最高司令官のジューコフ元帥までもが参戦し、権力バトル開始のゴングが鳴る!嘘と裏切り、仕掛け合う罠―勢力地図は1秒ごとに目まぐるしく塗り替えられ、国を担うはずの男たちの“なんでもあり&やったもん勝ち”のゲスな本性が暴かれていく…。

フルシチョフを演じた『ファーゴ』などコーエン兄弟作品の常連、スティーブ・ブシェミ、ベリヤを演じたシェークスピア俳優として知られる英国の名優サイモン・ラッセル・ビール、マレンコフを演じた『ハングオーバー!』シリーズの名脇役ジェフリー・タンバーら、個性派俳優たちが熟練工のような熱演を披露!史上最もドス黒い実話に基づく仰天エピソードを大真面目に冷徹な笑いを込めて演じきる。
スターリンが寝室で倒れ失禁した場所に、時間差で駆けつけた側近たちが一様に足を踏み入れたり、閣僚会議で互いの出方をうかがって手を挙げたり下げたり。そして、より強烈なのは、スターリンのために医者を呼ぼうにも良医は処刑されヤブ医者しか残っていないという話や、時局に翻弄され命を奪われる人々など、恐怖政治が生み出した不条理でシュールな状況の数々…。

ロシアでは政府が急遽上映を禁止。しかしヨーロッパを始め、アメリカ、オーストラリアなど各国では続々スマッシュヒットを記録!どの国の観客も笑いに引きつりながら、時にひょっとしてこれは今のわが国のことでは!?とヒヤリと背筋が冷たくなる思いに駆られながら…。
イアヌッチ監督は本作が“現在の世界情勢とリンクする物語”である点について、こう述べている。「この物語の時代設定は60年以上も前だが、今日の政治に対しても有効な教訓を示唆している。私がこの映画に取り掛かったのは2、3年前、まだ誰もイギリスのEU脱退やトランプについて知らない頃だった。当時、独裁主義や全体主義に目を向け、一個人によって国家がどのように脅かされるのか調べていた。本作にトランプの選挙やEU脱退といった映画の外の世界で起こったことを反映させるつもりはなかったが、奇妙に共鳴しているところはある」「彼らは嘘を語る。一瞬のうちに国民の敵になり、また次の瞬間には復権する。使う言葉によって、話の内容は全く別のものになる。私たちは今、嘘に塗られた、真実を失った時代にいる。この映画は、政府が情報をコントロールして、人々に何が真実で何が嘘かを伝える時に起こることを教えてくれる。私たちは、情報収集のために独立した手段を持つべきだ。『私の言うことに同意するなら、あなたに語りかけましょう』と言う人だけに耳を傾ければ、あなたは何も実感することができない場所で、彼らを信じるしかなくなってしまう。私はこの映画を現代政治への批判とするつもりはなかったが、もしそうなっているとしたら、観る人にスクリーンからそれぞれの結論を導き出してほしいと思っている。」(前出『THE DEATH OF STALIN スターリンの葬送狂騒曲』)

排外主義が勢いを増し、自国ファーストを説く独裁的な手法の政治家が大衆に支持され、民主主義の“終わりの始まり”のムードが漂う昨今…。本作はまさしく今の時代を生きる私の胸に重く響く刺激的な傑作にほかならない。
2018年8月21日(火)有楽町スバル座(東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル2階、JR有楽町駅・日比谷口正面)で、16:05~鑑賞。

作品データ :
原題 CHURCHILL
製作年 2017年
製作国 イギリス
配給 彩プロ
上映時間 105分


Churchill

英国首相ウィンストン・チャーチルの「ノルマンディー上陸作戦」“決行”までの96時間を描いたヒューマンドラマ。チャーチルを『ボーン・アイデンティティー』のブライアン・コックス、チャーチルを支える妻を『魅せられて四月』のミランダ・リチャードソンが演じる。監督は『レイルウェイ 運命の旅路』のジョナサン・テプリツキー。

ストーリー :
ダンケルク救出作戦から4年後の1944年6月、第二次世界大戦中のイギリス。英国首相のウィンストン・チャーチル(ブライアン・コックス)は、ナチスドイツ占領下の北西ヨーロッパに侵攻する“ノルマンディー上陸作戦”の遂行に反対していた。第一次世界大戦中の1915年、自ら計画・遂行した“ガリポリ上陸作戦”で約50万人もの死傷者を出した惨敗が繰り返されることを恐れていたからだった。チャーチルは英国王ジョージ6世(ジェームズ・ピュアフォイ)が同席する前で、この作戦を率先して推進している連合国軍最高司令官アイゼンハワー(ジョン・スラッテリー)に真っ向から反対意見を述べるが、却下される。チャーチルは遂行阻止のために奔走するが、連合国軍はすでにイギリス南岸に100万人もの兵士を配備していた。長年の戦争と不況に疲弊した国民は、チャーチルがヒトラーの電撃戦に抵抗し続けたという功績を評価していなかった。四面楚歌になり、秘書のミス・ギャレット(エラ・パーネル)に八つ当たりするなど孤独を深めていくチャーチル。だが、夫の様子を見かねた妻クレメンティーン(ミランダ・リチャードソン)の愛情溢れる行動が、チャーチルを奮い立たせる。作戦は“決行”され、勝利の演説を準備するチャーチルの側には妻の姿があった。1944年6月6日午前6時、チャーチルは国民を勇気づける世紀の演説を始める…。

アップ ジョナサン・テプリツキー監督(Jonathan Teplitzky)のComment :
≪第2次世界大戦中、連合国軍のノルマンディー上陸に至るまでの96時間に物語を設定したこの作品は、「歴史に残る最も偉大なイギリス人」であるウィンストン・チャーチルの生涯における“最も精神的に不安定な瞬間”をイギリスの名優ブライアン・コックスの強靭かつ感動的な演技に支えられて完成することができました。
この作品では、大いなる責任に伴う抑鬱状態からくるアルコール依存と“ガリポリの戦い”の決断の後悔に苦しみながら、アイゼンハワー、モントゴメリーら連合国軍司令部との対立、何よりも歴史の定説を覆す「チャーチルはノルマンディー上陸作戦を止めようとしていた」という知られざる真実を詳らかにしました。チャーチルは偉大な指導者としてもう終わった存在なのか、それとも再びリングの上で立ち上がることができるのか。
何万もの若い命を失う責任を再び問われかねないことへの強い抵抗感、同時に人生最大の敵―老いと判断力低下―との戦いに向かわせることとなるのです。この作品は、時代遅れになりつつある偉人がその能力や影響力、そして何より指導力の衰えを受け入れながら歴史的事態に抗う姿を描こうと思いました。
また、物語に厚みを持たせるために、夫唱婦随の距離間で愛し合っているはずの妻クレメンティーンとの関係がどんどん離れてしまう様子も描いています。妻クレメンティーン役のミランダ・リチャードソンは、ブライアン・コックスと同じく強靭な演技で、第2次世界大戦末期におけるチャーチルの立ち居振る舞いや決断に大きく影響を与え貢献してきたか、を見事に演じてくれました。この関係性がチャーチルの個人的な物語と政治的側面を均等に提示し、責任と代償を伴う決断をすることに直面したチャーチルの精神にどう絡まり合ってるかを観客は紐解いていくことになります。そこに深い感動が顕れます。
チャーチル個人の立場に非常に密接に寄り添うようにして撮られたこの作品は、傑出した偉人の胸に抱えていたものを明らかにし、この短くも激動の96時間が、どれほど後の歴史を決定づけるような転機であったかを描いています。チャーチル個人の精神的な戦いと彼が耐えなければいけなかった心の闇の深さに焦点を当てることで、私たちは彼の人間性を明らかにし、どのようにして多くの政治的偉業が実際に成し遂げられたかの、新たな心理的解釈を添えています。≫(映画パンフ『チャーチル ノルマンディーの決断』〈発行日:2018年8月18日/発行者:高澤吉紀、発行:彩プロ、定価:700円〉3頁)

▼予告編



■私感 :
今年2作目のチャーチル映画である。
私が5月29日に鑑賞した『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(日本公開:2018年3月30日、本ブログ〈June 01, 2018〉)は、第二次世界大戦を語る上で欠かすことの出来ない「ダンケルクの戦い」が物語のキーであった。1940年5月の第1次チャーチル内閣発足から、ダイナモ作戦(ダンケルク大撤退)までの4週間が描かれる。
今作(日本公開:2018年8月18日)の場合、ダンケルク撤退作戦と同等、否それ以上に重要な意味を持つ、1944年6月の「ノルマンディー上陸作戦」に焦点が定められ、同作戦の4日前から96時間の経過~同作戦に最後まで抵抗したチャーチルの、知られざる苦悩と真実~が克明に描かれる。
本作の原タイトルは、そのものずばり“Churchill”。そこでは、第二次大戦という重厚なテーマが扱われたとはいえ、回想も含め一切の戦闘シーンが見られないのが特徴的。また、ドイツ、イタリア、もちろん日本の、同盟国軍のいわゆる「敵兵」は、1シーンたりとも登場しない。本作はあくまでも史上稀に見る重大な“決断”を迫られる一人の老宰相の内面を真摯かつ雄弁に物語る人間ドラマ(社会派サスペンス)である。

私は本作を堪能!上映時間1時間45分、ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill、1874~1965)の知られざる一面を明らかにする本作に知らず知らずのうちに引き込まれた。歴史の奔流の中、一国の指導者が過去のトラウマと闘う姿を見せて、実に興味深い。
そして特筆すべきは、チャーチルに扮した、英国の舞台俳優として名高いブライアン・コックス(Brian Cox、1946~)の演技力が秀抜である点。チャーチルの悲哀や苦悩~兵士をコマとしてではなく、一つ一つの命として大切にしたいという信念と、戦争という大きな動きへの抗えないフラストレーション~を人間味たっぷりに表現する、その大いなるリアリティーをもたらす老練な演技に、私は魅せられ、いつまでも目が吸い寄せられつづけた。

メモ 本作の一番のキーワードは、“ノルマンディー上陸作戦(Invasion of Normandy)”である。
本作戦は第二次世界大戦中の1944年6月6日に連合軍による、ナチス・ドイツ占領下の北西ヨーロッパへの侵攻作戦。正式作戦名は「ネプチューン作戦(Operation Neptune)」。上陸からパリ解放までの作戦全体については、「オーバーロード作戦(Operation Overlord)」が正式名称。
右矢印 本作戦では、最終的に200万人近い兵員がドーバー海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディー海岸に上陸した。夜間の落下傘部隊の降下から始まり、続いて上陸予定地への空襲と艦砲射撃、早朝からの上陸用舟艇による敵前上陸が行なわれた。この史上最大規模の上陸作戦に続くノルマンディー地方の制圧には、ドイツ軍の必死の抵抗により2か月以上要した。 なお、本作戦で用いられた用語「D-デイ(D-Day)」は、作戦決行日を表わし、現在では一般的に作戦開始当日の1944年6月6日について使われる。
右矢印 「D-デイ」上陸は、イギリスのバーナード・モントゴメリー将軍の総指揮の下、「ユタ」(Utah Beach)、「オマハ」(Omaha Beach)、「ゴールド」(Gold Beach)、「ジュノー」(Juno Beach)、「ソード」(Sword Beach)の5つの管区に分けられた。1944年6月6日午前6時30分、5管区で一斉に上陸を開始→オマハ以外では犠牲を比較的少数にとどめ、上陸を果たした―。
オマハ・ビーチでは、上陸部隊の第一波が独軍守備隊の抵抗により海岸へ釘付けとなり、死傷者が続出。そこへ第二波以降の部隊が次々に詰めかけ、海岸線はパニックに陥った。その光景はさながら、地獄絵図そのものであった。2500名とも4000名とも言われる、多数の死傷者が出、死傷率が一番高かったので「ブラッディ(血まみれの)・オマハ」と呼ばれている。多大の犠牲を払いながらも、生存者たちは午後1時頃には防衛戦を突破。夕刻までには1・5キロメートルほど内陸へ進出した―。

映画 cf. 地獄の戦場 「オマハ・ビーチの8時間」(HELL’S BATTLEFIELD/D-DAY OMAHA BEACH/EIGHT HOURS OF DEFEAT) :


右矢印 ノルマンディー上陸作戦の映画シーンと言えば、私はただちに、かつて鑑賞した『史上最大の作戦』(1962年)と『プライベート・ライアン』(1998年)の2作品をまざまざと思い起こす。
『史上最大の作戦』(原題:The Longest Day、上映時間:178分)は、ノルマンディー上陸作戦の「D-デイ」を米英独の3人の監督が各国の立場から描き、米・英・仏・独のトップスター総出演と、大画面いっぱいに展開される戦場の再現で戦争映画に大きな一石を投じた作品(モノクロ・スぺクタル巨編)。

映画 cf. “The Longest Day” Trailer :


映画 cf. “The Longest Day” Omaha Beach :


『プライベート・ライアン』(原題:Saving Private Ryan、スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演)は、ノルマンディー上陸作戦を舞台に、行方不明になった1人の兵士を敵地から救出するために送り込まれた8人の精鋭部隊を描いたヒューマンな戦争映画。冒頭23分にも及ぶ、ノルマンディー上陸のオマハ・ビーチでの苛烈な戦闘シーンは、否応なしに私という視聴者を第二次世界大戦の戦火の中に引きずっていく…。

映画 cf. “Saving Private Ryan” Trailer :


映画 cf. “Saving Private Ryan” Omaha Beach Scene - Part 1~4