普通人の映画体験―虚心な出会い -12ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年6月11日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、18:05~鑑賞。

HIGH LIFE

作品データ
原題 HIGH LIFE
製作年 2018年
製作国 ドイツ/フランス/イギリス/ポーランド/アメリカ
配給 トランスフォーマー
上映時間 113分


『パリ、18区、夜。』『ガーゴイル』のクレール・ドゥニ監督が自身初の英語作品で挑んだSFサスペンス。ある実験に参加した元死刑囚たちが乗り込む宇宙船の人間模様を描く。『トワイライト』シリーズなどのロバート・パティンソンを主演に迎え、『イングリッシュ・ペイシェント』などのジュリエット・ビノシュ、『サスペリア』などのミア・ゴスらが共演。

ストーリー
遥か漆黒の宇宙の涯て。モンテ(ロバート・パティンソン)とまだ赤ん坊である娘のウィローは、宇宙船「7」で共に暮らしている。厳格な自制心によって欲望から身を守る男・モンテは、自らの意志に反して彼女の父となっていた。2人の旅は、どこに向かっているのか、おそらく彼らにも分からない…。
―かつて、宇宙船には9人のクルーがおり、その全員が死刑や終身刑を告げられた重犯罪人たちだった。モンテや、彼の幼馴染みの少女ボイジー(ミア・ゴス)らは、時の政府と取引し、死刑や終身刑と引き換えに生きて地球へ戻る保障のない宇宙船に乗り込み、“人間の性”に関するある実験に参加することを選択したのだった。船内で彼らは、科学者であり医師であるディブス(ジュリエット・ビノシュ)に薬でコントロールされ、生殖実験のためのモルモットとして協力させられていた。宇宙空間では様々な放射線の影響により、新たな生命が産まれる可能性は低かったが、ディブス医師は強い執念で実験を続けていた。地球を離れて3年以上が経ち、宇宙船という密室の中で終わりなき旅が続く彼らの精神状態は、限界に近づきつつあった―。
そんな中、彼らの最終目的地「ブラックホール」が目前に迫っていた。「ペンローズ過程」※の実現のため、時間と空間が消滅すると言われる「ブラックホール」に接近を試みるクルーたち。しかし、そんな彼らを悲劇が待ち受けていた…。

ペンローズ過程:1969年、イギリス人宇宙物理学者ロジャー・ペンローズ(Roger Penrose、1931~)により提唱された、自転するブラックホールからエネルギーを取り出す過程のこと。現段階では思考実験でしかない。

▼予告編

2019年6月4日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、20:10~鑑賞。

godzilla

作品データ
原題 GODZILLA:KING OF MONSTERS
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 東宝
上映時間 132分


「ゴジラ」

日本が生んだ怪獣王ゴジラをハリウッドが映画化した『GODZILLA ゴジラ』(2014年)の続編。前作から5年後を舞台に、世界各地で伝説の怪獣たちが次々と復活し、地球壊滅の危機が迫る中、再び目を覚ましたゴジラと人類の運命を壮大なスケールで描き出す。本作ではゴジラに加え、日本版オリジナル・シリーズでおなじみのキングギドラ、モスラ、ラドンら人気怪獣も登場し、迫力の究極バトルを繰り広げる。前作から引き続き、芹沢猪四郎博士役を演じた渡辺謙が出演するほか、カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、サリー・ホーキンス、チャン・ツィイー、ミリー・ボビー・ブラウンらが共演。『スーパーマン リターンズ』『X-MEN:アポカリプス』などで原案や脚本を担当してきたマイケル・ドハティが、脚本を手がけたほか自らメガホンも取った。

ストーリー
太古の巨大生物ゴジラ(GODZILLA)と巨大生物ムートー(M.U.T.O.)との戦いから、5年の月日が流れた。モスラ(MOTHRA)、ラドン(RODAN)、キングギドラ(KING GHIDORAH)などの神話時代の怪獣たちが復活し、世界は新たな危機に晒されようとしていた。人々は自分よりも巨大な生物に恐怖を抱き、逃げ惑う。各国政府や議員たちは対応に追われるが、これと言った解決策は見つからなかった。たくさんの怪獣が出現する中、どの怪獣が人間の味方でどの怪獣が敵なのかを見極めなければならない。ゴジラも再び姿を現わし、世界の覇権を懸けての怪獣たちの争いが繰り広げられる。生物学者の芹沢(渡辺謙)や古生物学者のヴィヴィアン(サリー・ホーキンス)、考古人類学者のアイリーン(チャン・ツィイー)らが所属する、未確認生物特務機関モナーク(MONARCH)は、世界の破滅を食い止めるため活動を開始した。果たして、人類は生き残ることができるのだろうか!?…

▼予告編



▼ cf. 歴代ゴジラの登場シーン集 :



▼ cf. 歴代ゴジラの放射熱線シーン集 :

2019年6月4日(火)「ココロヲ・動かす・映画館○(通称ココマルシアター)」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、18:10~鑑賞。

「キュクプロス」

作品データ
製作年 2018年
製作国 日本
配給 アルミード
上映時間 108分


妻を殺された上、濡れ衣を着せられて投獄された男の復讐を描くノワール劇。監督・脚本の大庭功睦による自主製作映画で、フランスの印象主義・象徴主義の画家オディロン・ルドン(Odilon Redon、1840~1916)の絵画「キュクプロス」に着想を得て描かれた。主演は池内万作、共演に斉藤悠、佐藤貢三、あこ、杉山ひこひこ。

オディロン・ルドン
オディロン・ルドン作「キュクロプス
(オランダ・オッテルローのクレラー・ミュラー美術館〈Kröller-Müller Museum〉所蔵)
【この作品は、“最も有名なキュクロプス(単眼の巨人)であるポリュペモスに愛された、不運なナイアス(水辺の妖精)であるガラテイア”を主人公とするギリシャ神話を題材としている。】

ストーリー
妻とその愛人を殺害した罪により14年の服役を終えた篠原(池内万作)。事件が起きた町に戻って来た彼の目的は、妻を殺し自分を罠に陥れた真犯人を見つけ出し、復讐することであった。篠原は事件の捜査を担当した刑事・松尾(佐藤貢三)と、その情報屋・西(斉藤悠)の協力を得て、稲葉組の若頭・財前(杉山ひこひこ)が真犯人であることを突きとめる。そんな中、財前殺害に向け、西の手ほどきを受けながら銃撃の訓練を始める篠原だったが、同時に事件の記憶が蘇り、悪夢に苛まれながらも、亡き妻の亡霊との邂逅に束の間の安らぎを見出すのであった。ある日、篠原はふらりと立ち寄ったバーで、亡き妻と瓜二つの女性・ハル(あこ)と出会う。一度目は、逃げるように店を後にした篠原であったが、それ以降、事態は思わぬ方向に転がり始める…。

▼予告編

2019年6月1日(土)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、12:40~鑑賞。

「ビリーブ」 (2)

作品データ
原題 ON THE BASIS OF SEX
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ギャガ
上映時間 120分


「ビリーブ」 (1)

 “RBG”の愛称で親しまれるアメリカ合衆国最高裁判所女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg、1933~)の若き日の物語を描いた伝記ドラマ。1970年代のアメリカで男女平等裁判に挑んだヒロインの不屈の闘いを、彼女を支えた夫との関係とともに描き出す。主演は『博士と彼女のセオリー』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のフェリシティ・ジョーンズ。共演にアーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、キャシー・ベイツ。監督は『ディープ・インパクト』『ペイ・フォワード 可能の王国』のミミ・レダー。

ストーリー
「女子学生は男子の席を奪ってまで入学した理由を話してくれ」 ― ハーバード大学法科大学院に入学したルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は、女子学生歓迎会の席で、学部長のグリスウォルド(サム・ウォーターストン)からそう促されて驚く。時は1956年、500人ほどの新入生のうち女性はわずか9人、ルースは「法科の2年生にいる夫のマーティン(アーミー・ハマー)を理解できる良き妻になるためです」と皮肉たっぷりに答えるのだった。
子育てと家事を夫と分担しながら、弁護士になる夢へと踏み出したルースだが、突然マーティンが倒れ、癌を宣告される。「絶対にあきらめない」と夫を励ますルースは、彼の講義にもすべて出席し、代わりにノートをまとめる。ルースの献身的な看病で回復したマーティンは、無事にハーバードを卒業、ニューヨークの弁護士事務所への就職が決まる。ルースはマーティンと片時も離れないために、コロンビア大学法科大学院へと移籍するのだった。
1959年、大学院を首席で卒業したルースは、大きな壁にぶつかる。“女性・母親・ユダヤ系”であることを理由に、13の弁護士事務所全てで就職を断わられたのだ。弁護の現場で活躍することを諦めたルースは、ラトガース大学の教授に就任する。
1970年、ルースは学生たちに、性差別と法について教えていた。憲法では「すべての人間は法の下に平等」と定められているのに、「女性は残業禁止」「夫の名前でしかクレジットカードが作れない」など、堂々と男女差別を認める法律が、数多く存在していた。そんな法律を変えようと情熱に燃える学生たちを、弁護士に育てるのがルースの仕事だったが、マーティンには「わたしが弁護士になりたかったのに」と、つい不満をぶつけてしまう。
そんなルースに、マーティンはある訴訟の記録を見せる。それは、親の介護費用控除が認められなかったチャールズ・モリッツ(クリス・マルケイ)という男性の事例だった。モリッツは働きながら母親を介護するために、介護士を雇ったけれども、未婚の男性であるという理由でその分の所得控除が受けられない状態にあった。当時の法律は家を守り、親を介護するのは女性の役目という考えに基づいており、その条文には「介護に関する所得控除は、女性、妻と死別した男性、離婚した男性、妻が障害を抱えている男性、妻が入院している男性に限られる」とあり、税金の控除が一度も結婚したことがない男性には認められなかった次第。ルースはもしこの男性差別の法律を憲法違反だと認めさせることができれば、“男女平等”~男性への差別⇒女性への差別⇒性差別全て~への第一歩となると気づき、自ら無償でモリッツの弁護を買って出る。
ルースは米国自由人権協会(ACLU)のメル・ウルフ(ジャスティン・セロー)に協力を求めるが、「勝てるわけがない」と断わられてしまう。マーティンのボスも訴訟への関与は許すが、「絶対に勝てない」と断言する。ルースは女性の権利のために長年闘ってきた憧れの弁護士ドロシー・ケニオン(キャシー・ベイツ)にアドバイスをもらおうと会いに行くが、「社会が変わらないと法律は変わらない。まだその時期じゃない」と、冷たく追い返される。
八方ふさがりのルースに勇気をくれたのは、娘のジェーン(ケイリー・スピーニー)だった。15歳の女の子が活動家の集会へアクティブに出かける姿に「時代は変わった」と刺激されたルースは、訴訟の趣意書を書き上げ、ケニオンに送る。その内容に心を打たれたケニオンは、ルースと共に闘うようにウルフを説得してくれるのだった。
「わたしのために闘って」という娘の言葉を胸に、弁論の練習を重ねるルース。だが、この裁判が、自分たちが守ってきた、男女を区別するすべての法に影響すると気づいた政府は、プライドをかけてルースをひねりつぶそうと、必勝の作戦を練り上げる。果たして、完全にアウェイな法廷で、最強のチームを敵に回したルースの闘いの行方は…?

▼予告編




音符 主題歌 ケシャ(Kesha、1987~) “Here Comes The Change” 〈MV 字幕入り〉→〈Lyric Video〉


2019年5月31日(金)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、10:10~鑑賞。

「記者たち」

作品データ
原題 SHOCK AND AWE
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ツイン
上映時間 91分


「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」

『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』のロブ・ライナー監督が、大衆の「愛国心」を煽(あお)り、根拠なき大義でイラク戦争へと突き進むジョージ・W・ブッシュ政権に対して、大手メディアが軒並み迎合する中、地道な調査報道とそれによって掴んだ真実のみで対抗した実在の中堅新聞社ナイト・リッダーの記者たちの信念と矜持を描いた骨太な社会派ドラマ。物語の中心となる記者役に『スリー・ビルボード』のウッディ・ハレルソン、『X-MEN』シリーズのジェームズ・マースデン。そのほかジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、トミー・リー・ジョーンズが共演。またライナー監督自らも取材チームを率いるワシントン支局長役を熱演。モデルになった実在の記者たちが撮影現場でアドバイザーを務め、記者たちの苦難に満ちた闘いの軌跡をリアリティーたっぷりに映像化する。

ストーリー
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生した。ジョージ・W・ブッシュ大統領はすぐさまテロとの戦いを宣言し、イスラム系テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンが首謀者との疑いが浮上する。そんな中、31紙の地方新聞を傘下に持つ中堅新聞社ナイト・リッダー(Knight Ridder)のワシントン支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)の耳に、驚くべき情報が飛び込んできた。ブッシュ政権がビンラディンを匿っているアフガニスタンのタリバンだけでなく、イラクとの戦争を視野に入れているというのだ。
ブッシュ政権は本当にイラク侵攻を考えているのか。ウォルコットからその真実を探るよう命じられた記者のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)は、中東問題や安全保障の専門家、政府職員や外交官らへの地道な取材を実施。その結果、ビンラディンとイラクのサダム・フセイン大統領がつながっている証拠は見当たらないというのに、アメリカが本気でイラクとの戦争に傾いていることが明らかになっていく。
2002年1月29日、ブッシュ大統領は一般教書演説で、逃亡を続けるビンラディンを残し、アフガニスタンのテロリストはすべて基地に捕らえたと宣言、アメリカは民主主義国家としてテロとの戦いを続けていくと発表。イラクは大量破壊兵器を保持するテロ支援国であると非難した。
“大量破壊兵器の保有”を口実にしてイラク侵攻に突き進む政府の方針にNYタイムズやワシントン・ポストなどの大手メディアが軒並み迎合するなか、ナイト・リッダーはそれに真っ向から抗う批判記事を発表し続けた。元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)を招聘して取材体制を強化したウォルコットは、「他のメディアが政府の広報に成り下がるなら、やらせておけばいい。我々は、我が子を戦争にやる者たちの味方なのだ」と熱弁を振るって部下たちを激励する。
しかし、傘下の新聞社に記事の掲載を拒否されたナイト・リッダーは、なす術もなく社会の潮流から孤立していく。熱血漢のランデーには旧ユーゴスラビア出身の妻ヴラトカ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)、離婚歴のあるストロベルには恋人リサ(ジェシカ・ビール)というよき理解者がいたが、身内からも裏切り者呼ばわりされ、「俺たちの報道は間違っているのか?」と苦悩を深めていく。このときイラクとの開戦は、もはや避けられない情勢になっていた。
それでも八方塞がりの苦境の中で、ウォルコット、ランデー、ストロベル、ギャロウェイの4人は不屈の記者魂を奮い起こし、一丸となって粘り強い取材を続けていく。政府の巨大な嘘を暴き、揺るぎない真実を世に知らしめるために…。

▼予告編



ロブ・ライナー監督(Rob Reiner、1947~)初来日 記者会見(2019年2月1日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で)

2019年5月28日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、19:00~鑑賞。

vice

作品データ
原題 VICE
[タイトルの“Vice”は、単独の名詞としては「悪/悪習/悪徳/欠陥」などのネガティブな意味であるが、接頭語として用い、「vice president(vice president)」とすると「副社長/副理事長/副大統領」などの意味となる。本作の主人公、ディック・チェイニーに備わる複数の属性を一語で巧みに表わす題名である。]
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ロングライド
上映時間 132分


「バイス」

『ザ・ファイター』『アメリカン・ハッスル』のクリスチャン・ベールがジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領(バイス・プレジデント)を務めたディック・チェイニーを演じた実録政治ブラック・コメディ。9.11同時多発テロを受けてイラク戦争へと突入していったブッシュ政権の驚きの内幕を、チェイニーの知られざる実像とともに過激かつ皮肉いっぱいに描き出す。これまでも数々の作品で肉体改造を行なってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増量し、髪を剃り、眉毛を脱色するなど、徹底した役作りでチェイニーになりきり、第76回ゴールデン・グローブ賞では主演男優賞を受賞。共演はエイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル。監督は『俺たちニュースキャスター』シリーズ、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアダム・マッケイ。第91回アカデミー賞で作品賞ほか8部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。

ストーリー
1960年代半ば頃、酒癖の悪い青年チェイニー(クリスチャン・ベール)は、才女であり後に妻となる恋人リン(エイミー・アダムス)に尻を叩かれ、政界を目指した。後に国防長官となる型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで政治の表と裏を学び、次第に権力の虜に。やがて頭角を現わし、大統領主席補佐官、国務長官を歴任し、2001年ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権の副大統領に就任。すると、それまでは形だけの役職に過ぎなかった副大統領というポストを逆手に取り、入念な下準備をし大統領を巧みに操って強大な権力を振るうように。2001年9月11日に同時多発テロ事件が起こると、ブッシュ大統領を差し置いて危機対応に当たり、イラク戦争へと導く。幽霊のように自らの存在感を消したまま、意のままに法をねじ曲げ国民への情報操作をし、チェイニーはその後のアメリカと世界情勢に多大な影響を与えていく…。

▼予告編

2019年5月16日(木)「ココロヲ・動かす・映画館○(通称ココマルシアター)」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、16:00~鑑賞。

The Bookshop

作品データ
原題 The Bookshop
製作年 2017年
製作国 イギリス/スペイン/ドイツ
配給 ココロヲ・動かす・映画社○
上映時間 112分


「マイ・ブックショップ」

英ブッカー賞受賞作家ペネロピ・フィッツジェラルド(Penelope Fitzgerald、1916~2000)の“The Bookshop”(1978)を『死ぬまでにしたい10のこと』『しあわせへのまわり道』のイザベル・コイシェ監督が映画化。保守的な時代のイギリスの田舎町で、激しい妨害に遭いながらも、町で初めての本屋を開こうとした女性の奮闘の物語を丁寧な冴えた筆致で綴る。2018年のスペイン・ゴヤ賞では、作品賞・監督賞・脚色賞の3冠に輝いた。主演は『マッチポイント』などのエミリー・モーティマー、共演に『ラブ・アクチュアリー』などのビル・ナイ、『エイプリルの七面鳥』などのパトリシア・クラークソンら。

ストーリー
1959年、イギリス東部の海辺の小さな町。ロンドンから遠く離れたこの町には、まだ新しい時代は遠く保守的な空気が漂っていた。そして、この町には書店が1軒もなかった。
戦争で夫を亡くしたフローレンス・グリーン(エミリー・モーティマー)が、夫との夢だった書店を町に開くことを決意する。長年、悲しみに沈んでいたフローレンスだったが、ようやく顔を上げた瞬間、何をすべきかを悟ったのだ。町の銀行員キーブル(ハンター・トレメイン)から何度も融資を断わられるも、毎晩、本を読んでくれた夫の記憶を胸に、放置されボロボロの建物、通称「オールドハウス」を買い取った。だが、町の人たちはこの期に及んで、建物の転売を勧めたり、別の物件を紹介しようとしたり、腑に落ちない言動でフローレンスに接触する。一人諦めず、書店準備を進めるフローレンスの唯一の楽しみは、海岸まで散歩し、そこで本を読むこと。そんな彼女の姿を、町で唯一の読書家であり、古い邸宅に40年以上引きこもっている変わり者の老紳士ブランディッシュ(ビル・ナイ)がそっと見ていた。
ある日、町一番の有力者ガマート夫妻に招待され、ワンピースを新調してフローレンスは城のように大きな屋敷へ行く。ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)は「町に本屋ができるといい、と町のみんなで祈っている」と感じよく切り出すが、いきなり「オールドハウスを別の用途、町の芸術センターとして使いたい」と申し出る。町の人々の不審な申し出にようやく思い当たるも、慇懃な夫人の申し出にひるむことなく、フローレンスは「書店を開く」と丁寧だがキッパリ返答する。
だが、町では書店を諦めるという噂が流れ、弁護士もなかなか手続きを進めてくれないなど、フローレンスを悩ませる。それでも町に定期的に船でやってくる親切な船頭が気を回し、海洋少年団がオールドハウスの改装を手伝いに来てくれる。続々と注文した本が届き始め、作った本棚に本を並べていくと、邪魔立てをするガマート夫人や銀行員、弁護士らのことは頭から消し飛んだ。そして遂に「オールドハウス書店」のオープンの日を迎え、フローレンスは幸せを噛み締める。そこへ早速、ブランディッシュから推薦本を送ってほしいとの注文の手紙が届く。フローレンスはブランディッシュに、レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury、1920~2012)のSF小説『華氏451度』(1953年)を送る。ブランディッシュは『華氏451度』に新鮮な感動を覚え、ブラッドベリの他の作品も送ってほしいとフローレンスに依頼。本を通して二人の交流が始まる。店は瞬く間に話題となり、興味津々の客が入れ替わりやってくるようになる。一人で切り盛りすることが難しくなってきたフローレンスは、仏頂面でおませな賢い少女クリスティーン(オナー・ニーフシー)を手伝いに雇うことにする。読書が嫌いというクリスティーンもフローレンスを慕い一生懸命仕事をこなしていく。フローレンスはそんな彼女にリチャード・ヒューズ(Richard Hughes、1900~76)の代表作『ジャマイカの烈風』(1929年)を勧めた。
書店が賑わい多忙の中、フローレンスはすっかりガマート夫人のことを忘れていたが、夫人の苦々しい思いは募るばかりだった。周辺社会で賛否両論の渦を巻き起こしている、ウラジーミル・ナボコフ(Vladimir Nabokov、1899~1977)の問題作『ロリータ』(1955年)を仕入れるかどうか迷ったフローレンスは、ブランディッシュに本を送り、意見を求める。ブランディッシュは屋敷にフローレンスを招待し、「あなたは勇気に満ち溢れている。助けたい」と励ます。自信を持って250部も仕入れた『ロリータ』は、店の周りに人だかりが出来るほど大きな話題となる。それをどうしても許せないガマート夫人は、弁護士を通して公共の迷惑だと正式に苦情を申し入れてくる。
遂に夫人の徹底攻撃が始まった。駆け出し政治家の甥っ子を使い、“名所・公的に価値ある資源”の法律を制定し、オールドハウスを公的に強制収用しようと動き出す。また、児童労働を禁じると、クリスティーンを取り締まりに学校へ査察官が現われる。さらに町には新たな書店が出来る予定も持ち上がる。ガマート夫人の包囲網に追い詰められ、海岸で泣き崩れるフローレンスの前に、ブランディッシュが現われる。「君を助けたい。別の人生で出会いたかった」という言葉を残し、彼はガマート夫人に直訴するため、何十年ぶりに町中へ向かった。しかし、ブランディッシュの願い虚しく、夫人は頑なに拒否。腹立たしい感情が騒ぎ立つままに、夫人の屋敷を出た彼だったが、帰宅の途中で倒れてしまい、そのまま目を覚ますことはなかった。
オールドハウスを手放す以外に方法がなくなり、一番の理解者であるブランディッシュが亡くなったことで悲しみに沈むフローレンス。夢は破れてしまった!彼女は想いの詰まった書店を出て、船に乗り込む。そこにクリスティーンがお別れを言いに駆けつけた。胸には『ジャマイカの烈風』を抱いている。その後ろでは、もくもくと立ちこめる灰色の煙。フローレンスはすぐにクリスティーンが書店に火を放ったことを察した。

そして、時が経ち、近代的な書店に女性が一人…。大人の女性になったクリスティーンは、フローレンスの夢を継いで、本屋の夢を叶えたのだった。
 
▼予告編



私感
素晴らしい映画と出会った!名優ビル・ナイが出演する映画に、まずハズレはないだろうぐらいの軽い気持ちで本作を観たのだが…。
本作は美しくも痛切で、なおかつ気高い物語を展開する。小さな港町で本屋を開いたフローレンス~夫を亡くしたあと、不死鳥のごとく自分の人生を立て直そうとする、強く知的で成熟した物静かな女性~の前に立ちはだかる様々な障害と闘いの顛末を、社会の無情や悪意、理不尽に対する憤りを静かに込めながら、あくまでも真っ直ぐな視線で生き生きと誠実に描き出す。
本作はまた、古き良きイギリスの海辺の町の、素朴で懐かしい魅力や、力強い自然の美しさに満ちている。
そしてキャスト陣については、フローレンスを演じるエミリー・モーティマー(Emily Mortimer、1971~)、ブランディッシュを演じるビル・ナイ(Bill Nighy、1949~)が、きわめて自然な風情でこの“心の琴線に触れる”珠玉の小品世界にしっくりと溶け込んでいる。ガマート夫人を演じるパトリシア・クラークソン(Patricia Clarkson、1959~)の場合も、虎視眈々と獲物を狙うかのような目付き、傲慢な女王然とした横柄さなど~さすがに多角的な役をこなす名優だけのことはある~、その迫力は憎たらしいほど上手い!さらに見過ごせないのが、学校の放課後や土曜日にフローレンスを手伝う少女クリスティーンを演じるオナー・ニーフシー(Honor Kneafsey、2004~)の存在だ。いつも不機嫌そうで、妙に大人びた口が達者なオシャマぶりが堂に入っているではないか!

私は本作のエンディングに意表を衝かれた。鮮やかで驚嘆すべきラストシーンだ。
実は、この映画には第三者目線のナレーションが随時挟まれる。このナレーションを担当するのは、ジュリー・クリスティ(Julie Christie、1940~)。前出『華氏451度』を原作とするフランソワ・トリュフォーの監督作『華氏451』(原題:Fahrenheit 451、1966年)の主演女優である※。

※残念ながら、『華氏451』は私の未見作。ジュリー・クリスティの出演作については、私はこれまでに10作ほど観たように思うが、何よりも忘れがたい作品がデヴィッド・リーンの監督作『ドクトル・ジバゴ』(原題:Doctor Zhivago、上映時間:197分、1965年)。ロシアの文豪ボリス・パステルナーク (Boris Pasternak、1890~1960)の同名小説を映画化した壮大な一大叙事詩で、ロシア革命前後の動乱期を生きた医者で詩人の主人公ジバゴの波瀾に満ちた生涯が、ラーラとトーニャという二人の女性への愛と共に描かれる。モーリス・ジャール(Maurice Jarre、1924~2009)による挿入曲「ラーラのテーマ(Lara's Theme)」があまりにも有名。その“革命”と“運命の愛”の物語で、ヒロインのラーラ役を好演したジュリー・クリスティは、まるで昨日のことのように私の記憶に鮮やか!

音譜 cf. Lara's Theme


映画 cf. 『華氏451』予告編 :


本作では、ジュリー・クリスティが演じたナレーター、すなわちモノローグの声の主が正体不明のまま物語が進行していくが、その答えはラストシーンに用意されている。
何と!あの、お手伝いの少女クリスティーンだったのだ。数十年後に書店を営んでいる、大人になったクリスティーンは、ナレーターとして最後に、“文化がある世代から次の世代へと受け継がれ、よりよい世界を作る”と語る―。

読書への純粋で永遠の愛に生きるフローレンスは、勇気をもって凛として本屋を始め、経営した。しかし、古い価値観に縛られて抑圧的な町の人々の無知さや嫉妬心、そして歪んだモラルが、彼女の夢を終わらせてしまう。彼女は戦いに敗れた―。
だが、彼女は究極的に、その自分の情熱、戦う勇気、自由な精神を、本が忘れ去られてはいけない未来の世界を担う子供、クリスティーンに伝えることができた。
そしてまさに、このクリスティーンを媒介にして、1959年の閉鎖的な田舎町に波紋を呼び起こしたちっぽけな本屋をめぐる闘争劇が、一瞬にして60年もの時空を超え、今を生きる私たち観客の胸を射抜く物語として完結する―。
2019年5月14日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、17:05~鑑賞。

「ROMA ローマ」

作品データ
原題 ROMA
製作年 2018年
製作国 メキシコ/アメリカ
配給 Netflix
上映時間 135分


『トゥモロー・ワールド』『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督が自身の少年時代をベースに、メキシコシティの「コロニア・ローマ」に暮らす中流階級の家族の物語を綴った半自伝的ドラマ。1970年代前半の政治的混乱が続くメキシコの社会情勢を背景に、中流家庭で働く一人の若い家政婦とその雇い主家族が織りなす人間模様を、美しくかつスケール感溢れるモノクロ映像で綴る。タイトルはメキシコシティの「コロニア・ローマ」地区に基づいている。ヤリッツァ・アパリシオが家政婦を演じ、TVドラマシリーズなどに出演してきたマリーナ・デ・タビラらが共演。2018年12月14日よりNetflixにて世界同時配信された。第91回アカデミー賞で監督賞・撮影賞・外国語映画賞の3部門を受賞。

ストーリー
1970年、クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)はメキシコシティのコロニア・ローマで、住み込みの家政婦として働いていた。
雇い主の一家は、医者であるアントニオ(フェルナンド・グレディアガ)とその妻ソフィア(マリーナ・デ・タビラ)、ソフィアの母テレサ(ヴェロニカ・ガルシア)、それからトーニョ(ディエゴ・コルティナ・アウトレイ)、パコ(カルロス・ペラルタ)、ソフィ(ダニエラ・デメサ)、ペペ(マルコ・グラフ)の4人の子どもたち。クレオの毎日は、炊事、掃除、洗濯、飼い犬ボラスの世話、子供の世話などで忙しい。子どもたちはクレオによく懐いていて、彼女も子どもたちをかわいがっていた。
一家がベッドに入ると、クレオは家中を消灯してから自分の部屋へと戻る。そして、クレオと同じく住み込みの家政婦であるアデラ(ナンシー・ガルシア)と、寝る前に軽くストレッチをする。いつまでも部屋の電気をつけているとテレサに怒られてしまうため、蝋燭の明かりを頼りにしていた。
医者であるアントニオはカナダのケベックでの会議から一時的に戻ってくるが、またすぐに出かけることになった。ソフィアはそんなアントニオを背中からぎゅっと抱きしめる。「すぐに戻ってくる」と夫は言うが、二人の間には既に大きな溝が出来ていた。
休暇をもらったクレオとアデラは街で昼食を一緒にし、それぞれのボーイフレンドであるフェルミン(ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ)、ラモン(ホセ・マヌエル・ゲレロ・メンドーサ)と合流した。4人で映画を観ようとしていたが、クレオとフェルミンはアデラたちと別れ、部屋を借りる。武術をやっているフェルミンは、全裸姿で武術の型をクレオに披露。母を早く亡くし、スラムで荒れた生活をしていた自分を武術が救ってくれたと彼は告白する。
次の休み、フェルミンと映画を観に行ったクレオは、妊娠しているかもしれないということを伝えた。フェルミンは喜ばしいことだと言い、それを聞いてクレオも微笑んだ。しかし、映画の終盤トイレに行くと言って席を立ったフェルミンは、そのまま姿を消してしまった。
クレオはソフィアに妊娠のことを相談する。「首ですか?」と不安そうに尋ねるクレオに、「首?そんなことはしないわ。でも一度診察してみなくてはね」とソフィアは応える。ソフィアの運転で病院に行き、診察を受けたクレオは妊娠3か月であることを告げられる。
ソフィアと子どもたちは、クレオとアデラを連れて、新年を迎えるために、親戚のアシエンダ(大農園)へ向かう。昼間の野外パーティーでは大人たちが銃を盛んに撃ちまくり、夜は夜で賑やかなどんちゃん騒ぎが繰り広げられる。その夜、山火事が起こり、山に駆けつけた大人も子供も、消火活動に励むが、それはどことなく馬鹿騒ぎの続きのような光景だった。
街へ戻ったクレオは、子どもたちを連れて映画を観に行くことになった。すると街で、ケベックへ出張に行っているはずのアントニオが女性と歩いているのを、クレオは目撃してしまう。
アントニオが家に戻らず、愛人と暮らし始めたことを知ったソフィア。電話口の相手に相談していると、次男のパコがそれを立ち聞きしてしまう。ソフィアは思わず、息子の頬を打つが、すぐに「ごめんね」と抱きしめる。立ち聞きをやめさせなかったとクレオが責められた。他の兄弟には内緒にしておいてほしいとソフィアは息子に約束させる。
クレオはある日、フェルミンが武術訓練場にいると聞き、ラモンに頼んで車で送ってもらう。そこでは大勢が列を成して、武術の訓練をしていた。訓練が終わり、仲間と話しながら帰ろうとするフェルミンをクレオは呼び止める。改めて妊娠していることを告げるが、フェルミンは赤ん坊の父親が自分であることを認めようとせず、「二度と会いに来るな」と凄み、「召し使いが!」と吐き捨ててクレオのもとを走り去っていった。
出産予定日が近づいてきたクレオは、テレサに連れられて家具店にやってきた。その日、街では政府に抗議する学生たちによる大規模なデモが行なわれていて、通りには大勢の警官たちが配備されていた。ベビーベッドを見せてもらっていたとき、突然外が騒がしくなり、窓際によってみると学生たちが襲われ、逃げ惑う姿が見える。店の中にも一組のカップルが逃げ込んできた。4、5人の銃を持った男があとを追いかけてきて、男性を射殺。銃を持った男たちの中にフェルミンがいた。クレオと目の合ったフェルミンは立ち尽くすが、仲間に呼ばれて立ち去る。恐怖で棒立ちになったテレサの隣でクレオは破水してしまう。まだ銃弾が飛び交う道路に出て車に乗り込むと病院へ急ぐが、道路は大渋滞で、なかなか前進できず…。陣痛に苦しむクレオの隣で、テレサはお祈りを続けていた。
病院に到着すると、クレオはすぐに分娩室へ運ばれる。記入が必要な用紙があり、看護師がテレサにクレオの情報を聞く。しかし、テレサはクレオの名前以外は何も答えられないのだった。医師が赤ん坊の心音を確認するが何も聞こえず、手術室で帝王切開が行なわれるも死産に終わる。「抱きますか?」と尋ねられたクレオは、その小さな亡骸を抱いたまま、なかなか離そうとしなかった。やがて医師たちが赤ん坊を白い布に包むのを、彼女は泣きながら見つづけていた。
家に戻ってからも、クレオは塞ぎ込んだままだった。アデラが懸命に励ますが、その声も耳に入らなかった。そこへ、ソフィアが家のガレージに駐めるには大きすぎたフォード・ギャラクシーを売却し、小型の新車を購入。ギャラクシーが引き取られる前にトゥスパンのビーチへ家族旅行に行こうとソフィアは提案し、気晴らしになるから、とクレオも誘う。クレオは迷っていたが、アデラからの後押しもあり、一緒に行くことを決めた。子どもたちも大喜びだった。
ビーチで遊び、ホテルにチェックインするが、子どもたちは日焼けがひどく、処置する際、痛さで悲鳴をあげる。夕食時、ソフィアは父親のアントニオがもう帰ってこないこと、家に自分の荷物を取りに来るというので、この旅行に来たことを告げる。悲しむ子どもたちにソフィアは笑顔を向け、「変化はあるけど私たちはずっと一緒よ、みんなで支え合いましょう。これも冒険よ」と力強く言い聞かせる。野外でアイスクリームを食べながらしんみりしている家族の横では、結婚式が行なわれていた。陽気な音楽と歓声が響き渡っていた。
翌日、再びビーチにやってきた一家。ソフィアが車の点検に行くと言うと、長男のトーニョを除く子どもたちはここに残りたいと言い張る。波打ち際にいるだけならと子どもに言い聞かせ、すぐに戻るからとクレオに声をかけると、ソフィアはトーニョと一緒に立ち去った。クレオは三男のペコの体を拭いてやるため、いったん波打ち際から離れるが、波が荒くなり、長女のソフィと次男のパコがどんどん沖へと離れていく様子を見て慌てて走っていく。泳げない彼女だったが、海に入っていき、二人の子どもを探して押し寄せる波の間を進み続ける。最初にパコ、次にソフィが見つかって、何とか浜辺に戻ってきた3人。そこへ戻ってきたソフィアはトーニョが駆けつける。「クレオが助けてくれた」とソフィが言うと、ソフィアは「ありがとう!」とクレオに心より感謝するが、クレオの口から出てきた言葉は死んだ我が子への悔恨の言葉だった。「生まれてきてほしくなかったの」と涙を流しながら告白するクレオ。彼女が塞ぎ込んでいたのは、罪悪感からでもあったのだ。ソフィアは「みんなクレオが大好きよ」と言って、子どもたちと一緒にクレアを抱き締めた。
家に帰ると、すでに本棚が全て取り払われたあとで、父の部屋が空いて、子どもたちの部屋も入れ替えられていた。「楽しかった?」とアデラに尋ねられたクレオは、「よかった」と応える。彼女は自分の荷物を置きに、階段を上がっていった。すぐに家の仕事が彼女を待っているのだった―。

▼予告編



Chaos scene



▼ cf. “Roma” wins Best Foreign Language Film
[Angela Bassett and Javier Bardem present Alfonso Cuarón (on behalf of Mexico) with the Oscar for Best Foreign Language Film for "Roma" at the 91st Oscars in 2019.]

2019年5月14日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、15:15~鑑賞。

「リアム16歳、はじめての学校」

作品データ
原題 ADVENTURES IN PUBLIC SCHOOL
製作年 2017年
製作国 カナダ
配給 エスパース・サロウ
上映時間 86分


俳優としても活動しているカイル・ライドアウトが監督と脚本を担当し、16歳で初めて学校に通うことになった少年を描く、カナダ製の学園ドラマ。幼いころから母親が先生であり親友だった主人公が外の世界に飛び出し、友情や恋に悩みながらも成長していく。『ジュラシック・ワールド』『アントマン』シリーズのジュディ・グリアが母親、新人のダニエル・ドエニーが息子を演じる。

ストーリー
シングルマザーのクレア(ジュディ・グリア)と仲良く暮らす16歳のリアム(ダニエル・ドエニー)。有名大学に入り、ホーキング博士のような天文学者になることを夢見るリアムは、幼少の頃から学校には行かず、毎日クレアから英才教育を受けていた。勉強が終わると家の壁を相手に一人でサッカー。友達と呼べる相手のいないリアムにとって、クレアが唯一の親友であったが、最近、友達がいないことに寂しさを感じるようになっていた。ある日、高卒認定試験を受けるため、初めて足を踏み入れた公立高校で、義足の美少女アナスタシア(シオバーン・ウィリアムズ)を見かけたリアムは、人生で初めて恋に落ちる。彼女に近づきたい一心で試験にわざと落ち、リアムは高校に通学することを決意。やがて、心配するクレアをよそに、学園生活デビューを果たし、アナスタシアのことはもちろん、初めての友達づくりにも意欲を燃やすリアムだったが…。

▼予告編

2019年4月30日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、16:20~鑑賞。

「アベンジャーズ エンドゲーム」

作品データ
原題 AVENGERS:ENDGAME
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 181分


アメリカン・コミックのマーベル・コミック『アベンジャーズ』の実写映画シリーズ第4作であり、完結作。また、様々なマーベル・コミックの実写映画を、同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズとしては第22作品目の映画。前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 本ブログ〈May 09, 2018〉では、無限大のパワーを持つ6つの“インフィニティ・ストーン”を手にした敵・サノスが全宇宙の生命の半分を消滅させ、アベンジャーズは多くの仲間を失った。衝撃の結末から続く本作では、絶望の淵に突き落とされたアベンジャーズが、その5年後に起きた小さな奇跡をきっかけに最大の逆襲(アベンジ)に出る!それは、彼らが身を投じてきた戦いの軌跡をたどる物語でもあった―。出演はロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ジョシュ・ブローリンらの続投組に加え、新たにキャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンが初参戦。監督は前作に引き続きアンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ兄弟が務めた。

ストーリー
アベンジャーズのメンバーを含む全宇宙の生命は、宇宙最凶最悪の敵“サノス”によって半分が消し去られる。大切な家族や友人を目の前で失い、地球に取り残された35億の人々の中には、この悲劇を乗り越えて前に進もうとする者もいた。地球での壮絶な戦いから生き残ったキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ソー(クリス・ヘムズワース)、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、ハルク(マーク・ラファロ)、ホークアイ(ジェレミー・レナー)と、宇宙をあてもなく彷徨いながら新たなスーツを開発し続けるアイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)は、決して諦めてはいなかった。大逆転へのわずかな希望を信じて再び集結したヒーローたちは、失った者たちを取り戻す方法を探る。キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)、そしてアントマン(ポール・ラッド)といった切り札的存在が、リベンジへの滑車をしっかりと回し始める。後者が身を置く量子世界の時間概念を活かし、サノスが指を鳴らす以前へと移動して、目的の達成を阻止しようとするのだ。限られた条件のもと、総力戦に臨むメンバーたち。残された人々と今ここにいない仲間たちのために、アベンジャーズは最後にして史上最大の逆襲に挑む…。

▼予告編



女性ヒーロー勢揃いシーン/本編クリップ映像 :



◆ cf. メインキャストがMCUを振り返る! :



◆ cf. MCUヒーロー紹介 :



◆ cf. Evolution of MCU in 40 Minutes :