映画『パリに見出されたピアニスト』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年10月1日(火)シネマカリテ(東京都新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F、JR新宿駅東南口および中央東口より徒歩2分)で、18:45~鑑賞。

「パリに見出されたピアニスト」

作品データ
原題 Au bout des doigts
英題 In Your Hands
製作年 2018年
製作国 フランス/ベルギー
配給 東京テアトル
上映時間 105分


夢を持たずに生きてきた貧しい家庭の不良少年が、その類いまれな才能をプロの音楽家に見出され、コンクール目指して過酷なレッスンに打ち込み成長していく音楽青春ドラマ。主演は『アスファルト』のジュール・ベンシェトリ、共演に『神々と男たち』のランベール・ウィルソン、『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマス。監督は長編3作目のルドヴィク・バーナード。バッハ、ショパンをはじめとしたクラシックの名曲の数々が全編で使用されている。

ストーリー
(せわ)しなく人が行き交う、パリの主要ターミナル、北駅。耳を澄ますと、喧騒の中に美しいピアノの音色が聴こえる。“ご自由に演奏を!” そう書かれた誰でも自由に弾ける1台のピアノに向かうのは、おおよそピアニストとは思えない、ラフな格好をした一人の青年だった。
彼の名はマチュー・マリンスキー(ジュール・ベンシェトリ)。パリ郊外の団地で母親と妹、弟と暮らしている。決して裕福とは言えない家庭で育ったマチューは、幼い頃にふとしたきっかけでピアノと出会い、表向きはクラシックを否定しながら、誰にも内緒で練習し続けていた。クラシックは時代遅れだと思い、ラップを聴いている地元の仲間にバレたら、とんだお笑い種(ぐさ)だろうが…。
ある日、マチューが駅でピアノを弾いていると、その演奏を聴いて足を止めた男が一人。パリの名門音楽学校コンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽院)でディレクターを務めるピエール・ゲイトナー(ランベール・ウィルソン)だった。マチューの才能に強く惹かれたピエールは、声をかけ名刺を渡すが、マチューは逃げるように去ってしまう。
その夜、仲間と盗みに入った家でグランドピアノを見つけたマチューは弾きたい衝動を抑えきれず、警察に捕まってしまう。実刑を免れないと言われたマチューに手を差し伸べたのは、ピエールだった。コンセルヴァトワールでの清掃の公益奉仕を条件に釈放されたマチューは、ピエールからもう一つ条件を言い渡される。それは、“女伯爵”との異名を持つピアノ教師エリザベス(クリスティン・スコット・トーマス)のレッスンを受けること。ピエールはマチューをピアニストに育て上げる夢を持ったのだった。
望まないレッスンに、マチューは乗り気ではなく、反抗的な態度を示すことも度々。エリザベスも匙を投げかけたが、ピエールの進退を賭しての熱意に動かされてレッスンを続けていく。
やがて、ピエールは国際ピアノコンクールの学院代表にマチューを選ぶ。課題曲はラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」。コンクールまで4か月。3人の人生をかけた戦いが、いま、始まった…。
周囲の学生との格差や環境の壁にぶつかり、もがきながら、本気でピアノと向き合い自身も成長していくマチュー。そして、彼に夢を託した二人の大人たちもまた、図らずもマチューに影響を受け変化していく。マチューが拓く未来には、一体、何が待ち受けているのだろうか―。

▼予告編




Full Movie