映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年10月1日(火)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、14:15~鑑賞。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」

作品データ
原題 C'era una volta il West
英題 Once Upon a Time in the West
製作年 1968年
製作国 イタリア/アメリカ
上映時間 165分

<141分短縮版>日本初公開 1969年10月31日
<165分オリジナル版>日本初公開 2019年9月27日

「ウエスタン」⑴
「ウエスタン」⑵
「ウエスタン」⑸

マカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)で知られるイタリアの巨匠セルジオ・レオーネ(Sergio Leone、1929~89)が1968年に手がけた西部劇巨編。『荒野の用心棒』(64年)、『夕陽のガンマン』(65年)、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(66年)で3年連続イタリア年間興行収入ナンバーワンを記録したレオーネが、方向性を大きく変え、自らの作家性を前面に打ち出した野心作。若き日のベルナルド・ベルトルッチ(『ラストエンペラー』監督)とダリオ・アルジェント(『サスぺリア』監督)を共同原案に抜擢したレオーネは、ルキノ・ヴィスコンティ監督『山猫』(63年)を下敷きに、女性主人公ジルの目を通し、西部開拓時代の黄昏期と共に滅びゆくガンマンたちの落日を、スタイリッシュかつ重厚壮麗なバロック的演出を駆使して描き、それまでのマカロニ・ウエスタンともハリウッド製西部劇とも似て非なる、異形の大作として完成させた。そして、エンニオ・モリコーネ作曲・指揮による名曲の数々が、この一大叙事詩を感動的に彩った。出演は『山猫』のクラウディア・カルディナーレ(Claudia Cardinale、1938~)、『十二人の怒れる男』のヘンリー・フォンダ(Henry Fonda、1905~82)、『荒野の七人』のチャールズ・ブロンソン(Charles Bronson、1921~2003)、『墓石と決闘』のジェイソン・ロバーズ(Jason Robards、1922~2000)。

1969年の初公開時、欧州各国では高い評価を得たが、アメリカでは理解されずにオリジナル版から20分短縮されて興行的にも惨敗。日本では米公開版をさらにカットした2時間21分の短縮版が『ウエスタン』の邦題で公開され、アメリカ同様に批評家から無視された。しかし、70年代以降、海外ではその評価は年々高まり、スタンリー・キューブリック、ヴィム・ヴェンダース、ジョン・ブアマン、ジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシ、ジョン・カーペンターといった名監督たちが挙って讃え、1973年、NYの「フィルムコメント」誌は「『2001年宇宙の旅』と並ぶ60年代の偉大なる革新的/神話的作品の一本」と記した。2012年、英国の「サイト&サウンド」誌が実施した世界の現役映画監督358人から募った【映画史上最も偉大な作品】アンケートでは44位につけ、西部劇ジャンルに限れば『捜索者』『リオ・ブラボー』、自身の『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』『ワイルドバンチ』など名だたる傑作を抑え、本作がトップに輝いた。
短縮版の日本初公開から50年を経た、レオーネ生誕90年・没後30年にもあたる今年2019年、原題の英訳『Once Upon a Time in the West』をそのまま訳した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』に邦題を改め、2時間45分のオリジナル版が日本初公開される。

ストーリー
大陸横断鉄道敷設によって新たな文明の波が押し寄せていた西部開拓期。ニューオーリンズから西部に嫁いできた元・高級娼婦のジル(クラウディア・カルディナーレ)は、何者かに家族全員を殺され、広大な荒地の相続人となる。莫大な価値を秘めたその土地の利権をめぐり、ジルは鉄道会社に雇われた殺し屋フランク(ヘンリー・フォンダ)、家族殺しの容疑者である強盗団のボス、シャイアン(ジェイソン・ロバーズ)、ハーモニカを奏でる正体不明のガンマン(チャールズ・ブロンソン)たちの熾烈な争いに巻き込まれていく…。

「ウエスタン」⑷
「ウエスタン」⑶

▼予告編



▼本編映像 /音楽: Ennio Morricone
[エンニオ・モリコーネ(1928~)は、小学校時代の同級生、セルジオ・レオーネが監督したマカロニ・ウエスタン『荒野の用心棒』の作曲を担当、そのテーマ曲「さすらいの口笛」が全世界で大ヒットし、一躍名を上げる。以後レオーネとのコンビ作『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』、本作、『夕陽のギャングたち』(71年)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84年)まで6作品を担当した。クエンティン・タランティーノ監督『ヘイトフル・エイト』(2015年)で、第88回アカデミー賞作曲賞を受賞。1960年代から現在までに430本を超える映画/TVの作曲を手がけている。池田満寿夫監督『エーゲ海に捧ぐ』(79年)では初めて日本映画の音楽を担当。2004年6月、2005年10月には東京と大阪で来日コンサートを開催。]


Opening sequence



Finale