映画『海の産屋 雄勝法印神楽』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年4月1日(月)ユジク阿佐ヶ谷(東京都杉並区阿佐ケ谷北2-12-19-B1 JR阿佐ヶ谷駅北口から徒歩3分)で、12:00~ 鑑賞。

「海の産屋」

作品データ
製作年 2017年
製作国 日本
配給 ヴィジュアルフォークロア
上映時間 75分


東日本大震災から1年後の雄勝法印神楽(おがつほういんかぐら)を通して、被災と芸能が交叉する姿をとらえたドキュメンタリー。神楽の担い手である漁師たちの、絶望の淵から力強く立ち上がる姿を描く人間ドラマ。監督は『ほかいびと 伊那の井月』の北村皆雄と、NHKテレビ「にっぽん百名山」などを手がけた戸谷健吾。ナレーションを『半落ち』『博士の愛した数式』に主演の寺尾聰が担当。

ストーリー
宮城県雄勝半島、石巻市の漁村・立浜(たちはま)は、東日本大震災の大津波で46軒中、1戸だけを残し被災した。絶望的状況の中、12人の猟師が村に残ることを決断する。「いっさい、いっさい、海を恨んでいねぇ」と、男たちは生活の再建とともに、祭りの復興に乗り出す。600年続く“雄勝法印神楽”※は、修験者がもたらしたと伝えられる、日本国指定「重要無形民俗文化財」である貴重な文化遺産。流出した一切の神楽面と祭具を作り直し、何もない海辺の居住地に柱を立て、舞台を作った。
海辺に立てられた舞台、そこでの大トリは「産屋(うぶや)」という演目、それは新しい命を再生し、力強く鼓動させてくれる海の豊穣と時として凶器に変わる海の荒々しさの二つが、一つの神の中に同居している。神楽に憑かれて“好き神”を自称する漁師が祈りの神楽を舞い、笛と二人の太鼓打ちが息を合わせて600年前と変わらぬリズムを打つ。産屋の庭は神楽が舞い遊び、笛・太鼓の音が、命の誕生を告げる産声のように響く。
石巻や仙台、県外に避難した人たちも帰ってきた。仮設住宅で暮らす人々も、祭りの神楽に元気をつけられ、夢をふくらませる―。

※雄勝法印神楽は、宮城県石巻市(旧・雄勝町〈おがつちょう〉)に伝わる民俗芸能の神楽。1996年12月20日に「重要無形民俗文化財」に指定された。出羽三山・羽黒山の羽黒派の修験者により伝えられたとされ、山伏神楽の系統を継いでいる。旧・雄勝町内の各神社の春・秋の祭で奉納される。

▼予告編