映画『タレンタイム~優しい歌』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年1月29日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、15:50~鑑賞。

「タレンタイム」

作品データ
原題 Talentime
製作年 2009年
製作国 マレーシア
配給 ムヴィオラ
上映時間 120分

マレーシア公開 2009年3月26日
日本公開 2017年3月25日

2009年に51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマド(Yasmin Ahmad、1958~2009)の遺作となる青春群像ドラマ。多民族・多宗教で構成されたマレーシアの国情を背景に、高校の音楽コンクール“タレンタイム”に臨む高校生たちが周囲と織りなす恋と友情、家族との葛藤と絆を瑞々しいタッチで綴る。ドビュッシーの「月の光」、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」などのクラシックに加え、マレーシアの人気アーティスト、ピート・テオ(Pete Teo、1972~)が作曲したオリジナル曲「I Go」、「Just One Boy」、「Angel」など、多彩な音楽が物語を彩る。

ストーリー
ある高校で、音楽コンクール「タレンタイム」(マレーシア英語〈タレント+タイム〉で、学生の芸能コンテストのこと)が開催される。
ピアノの上手な女子学生ムルー(パメラ・チョン)は、裕福なムスリム(イスラム教徒)家庭の娘。父はマレー系と英国系の混血者、母はマレー系。2人の妹、マワールとムラティがいる。また、家族同然の中国系のメイド、メイリンがいる。タレンタイムのリハーサルのためにバイクで送迎してくれるマヘシュに恋をする。
マヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)は、耳が聞こえず(聴覚言語障害者)、手話で会話する高校2年生(最終学年)。インド人ヒンドゥー教徒で、母と姉バヴァニの3人家族。幼い頃に父を亡くし、母方の叔父ガネーシュに可愛がられている。ムルーのバイク送迎を仰せつかり、いつしか彼女に恋をする。
ハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィップ)は、マレー人のムスリム。転校生(高校2年)で、学業優秀、歌もギターも得意。たった一人の家族である母は、末期の脳腫瘍で闘病している。自分で作った曲でタレンタイムに挑戦する。
二胡を演奏する優等生カーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は、ハフィズのクラスメイトで中華系。父に学校で一番の成績を取るよう厳しく言われている。転校生のハフィズに成績トップの座を奪われ、彼と打ち解けることができない。

ヒロインのムルーは最初、マヘシュが聾唖であることに気づかず不愛想な態度に怒るが、やがて誤解が解けて互いに惹かれるようになる。ムスリムであるムルーの家庭はマヘシュに寛大だが、ヒンドゥー教徒であるマヘシュの母は息子の恋人がムスリムと聞いて激怒し、交際を禁ずる。中国系のカーホウは、口には出さないが、密かにムルーへの恋心を抱いている。敬虔なムスリムのハフィズは、入院している母を毎日のように見舞い、ムルーとマヘシュの橋渡しをしてやる優しい男だ―。

マレー語・中国語・タミル語・英語など言語も複数飛び交う多民族国家マレーシア。マレー系、インド系、中国系など、民族や宗教の違いによる葛藤を抱えながら、彼ら若者たちはいよいよタレンタイム当日を迎える…。

▼予告編(「I Go」&「Angel」2バージョン連続版)