
作品データ :
原題 Die unendliche Geschichte
英題 The NeverEnding Story
製作年 1984年
製作国 西ドイツ アメリカ
配給 東宝東和
上映時間 95分
日本公開 1985年3月16日
ミヒャエル・エンデ(Michael Ende、1929~95)の有名な児童小説“Die unendliche Geschichte”(1979)(上田真而子・佐藤真理子訳『はてしない物語』岩波書店、1982年)を、『U ・ボート』のウォルフガング・ペーターゼン監督がイマジネーション豊かに映画化したファンタジー大作。人間の子供が夢や希望を失ってしまったために、崩壊しかけている“ファンタージェン(Phantasien)”という国を救おうとする少年の物語。「幻想の国」が“無(The Nothing)”に襲われ危機に瀕するというファンタジーと、その物語に読み耽る少年を並行して描く。3人の子役【バレット・オリバー(Barret Oliver、1973~)、ノア・ハサウェイ(Noah Hathaway、1971~)、タミー・ストロナッハ(Tami Stronach、1972~)】が、主役【〈読書好きのいじめられっ子〉バスチアン、〈ファンタージェンの勇士〉アトレーユ、〈ファンタージェンの女王〉幼ごころの君(The Childlike Empress)】を、それぞれ務めている。
撮影はヨスト・ヴァカーノ、音楽はクラウス・ドルディンガー、ジョルジオ・モロダー、ロバート・ハザウェイ、特殊効果(SFX)はブライアン・ジョンソンが担当。主題歌をリマールが歌っている。
もともと西ドイツ公開版には主題歌がなかった。北米・日本公開版で、ワーナー・ブラザースの意向によりクラウス・ドルディンガーからジョルジオ・モロダーの楽曲へ変更され、イギリスのロックバンド、カジャグーグー(Kajagoogoo)の元ボーカリスト、リマールの歌う主題歌「The NeverEnding Story」(邦題:「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」)が追加された。
ストーリー :
バスチアン(バレット・オリバー)はいじめられっ子で、母を亡くしてからは父親と二人だけの寂しい生活を送っていた。ある日、悪ガキ3人に追いかけられて逃げこんだ古本屋で、彼は『ネバーエンディング・ストーリー』という不思議な本を見つけるが、店主のコレアンダー(トーマス・ヒル)は意地悪く売ってくれそうもない。コレアンダーが電話に出ている隙(すき)に、バスチアンは本をつかむと店を出て、学校の屋根裏部屋へ行き、本を読み始め、次第にネバーエンディング・ストーリーの世界に浸っていく。…夜の闇に包まれたハウレの森には、とんがり鼻の夜魔(ティロ・プラックナー)と赤いシルク・ハットに赤い服のティーニー・ウィーニー(ディープ・ロイ)がいた。あとから岩を食う巨人(Rockbiter)もやって来た。壮大な“ファンタージェン”という名のこの国で、誰の目にも見えぬ何者かが嵐とともに襲来し、すべてを“無”に変えていた。彼らはこの異変を女王に報告しに行く途中だった。この国を治める女王(タミー・ストロナッハ)は、もう何千万年も生きているのに今でも可憐な少女の姿のまま、象牙の塔に住んでいた。女王は原因不明の病に冒されており、その病を治せるのは、草原の勇者アトレーユ(ノア・ハサウェイ)だけだという。召されてきたアトレーユは、幼い少年であった。女王の命を救うため、アトレーユは危険な旅に出て巨大な亀のモーラから「女王が今でも子供の姿のままなのは、新しい名前を次々ともらっていたからだ。次に新しい名前をつけてくれる者を知りたければ、南のお告げ所ウユララに行き尋ねてみろ」と教えられた。空飛ぶ竜のファルコンに助けられて、アトレーユは南のお告げ所へ行く。お告げは人間の子供だけが新しい名前を授けられるというものだった。強大な“無”はすさまじい勢いで広がり、ファルコンに乗ったアトレーユは荒海へ落下した。気がつくと彼は海辺にいた。ここも“無”に侵触されており、廃墟と化した町の一角で、アトレーユは“無”の手先である人狼のグモルクと対決し、何とかグモルクを倒す。人間は見つからなかったと項垂(うなだ)れて報告するアトレーユに、女王は「あなたは連れて来たのですよ、もうそこまで来てます」と答える。…女王が言っているのは自分のことだと、はたと気がつくバスチアン!…女王は「バスチアン、新しい名前をつけてちょうだい」「お願いよ!助けて!」と懇願する。バスチアンは「僕は地上にいたい」と尻込みするが、泣いている女王を見て、決然と窓の外に向かって新しい名前「ムーンチャイルド!」を叫ぶ。次の瞬間、“ファンタージェン”は爆発し、バスチアンは女王と暗闇の中にいた。女王はファンタージェンの最後の1粒をバスチアンに握らせ、好きなだけ願い事をするよう促し、願い事が多ければ多いほど、新しい素敵な「ファンタージェン」が生まれると話す。やがてバスチアンはファルコンに乗って、生まれ変わった「ファンタージェン」を飛び回る。ファルコンはあの悪ガキ3人組を追いかけてくれる。巨大なドラゴンに追われ、いじめっ子たちはゴミ箱の中に逃げ込む。バスチアンは自信を取り戻し、それから数々の冒険を楽しみ次々と望みを叶えて人間の普通の世界に戻る。それでも、バスチアンに夢や希望がある限り、この果てしない物語は続いていくのだ―。
▼予告編
▼ Movie CLIP ― “Call My Name” :
▼ Last Scene :
▼ Full Movie :
▼ 主題歌 “The NeverEnding Story” :
【歌唱:リマール(Limahl)、作詞:キース・フォーシー(Keith Forsey、1948~)、作曲:ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder、1940~)】
*映画も大ヒットしたが、リマールことクリストファー・ハミル(Christopher Hamill、1958~)の歌うテーマ曲も多くの国で大ヒットした(ちなみに、「リマール(Limahl)」は「ハミル (Hamill)」のアナグラム)。ノリがよくてキャッチーで綺麗なメロディー!リマールは滑らかな発声の持ち主で、歌が抜群に上手い。女性とのデュエット場面でのマッチングも完璧!映画のタイトル通り、この曲には明確な始まりも終わりもない。冒頭でフェードインし、最後でフェードアウトすることにより、「終わりがない」ことを演出している(なお、ライブで歌唱する場合は、演奏の都合上フェードイン・フェードアウトとならずカットイン・カットアウトの形式となる場合や、女性のデュエット参加がない場合もある)。
■私感 :
33年ぶりの再見である。
1985年の初見時は、女房と息子が一緒だった。親子が揃って楽しめた作品の一つとして懐かしく忘れがたい。
そもそも本作が限りなく魅力的なのは、バスチアン少年の読書を通して現実世界と小説世界がシンクロする(【現実世界/主人公バスチアン⇔ファンタジー世界)/主人公アトレーユ】)という世界観的な構えの取り方にある。そして、CGだけに頼った映像表現とは質感の違う、素朴なSFX技術の結晶たる、清々しいファンタジー・ワールドもまた、格別に味わい深い。
私は今回も1時間30分余り、無理なく素直に楽しめた。
今更のように、大亀モーラ、岩男ロックバイター、犬の顔をした竜ファルコン…斬新なキャラクターに知らず知らず惹きつけられるとともに、本作と実によくマッチしたリマールの主題曲~“物語の中に迷い込み、空想の世界を飛翔する”映画のイメージを端的に象徴する名曲!~に、身を乗り出すようにして聞き入った。
年齢を重ねたとはいえ、「お伽の国」へ緩やかに飛翔する私の想像力はいまだ健在なり、と一安心した次第である