当事者研究とピアスーパービジョン、スキゾフレニクスアノニマスグループやピアカウンセリングなど、自助グループが形成される仕方の差異や共通点について考えて行きたいと思います。
当事者研究とは、ワイワイガヤガヤをモットーに、自分自身が苦労の主人公となり、「自分自身で共に」を理念として仲間と共に苦労を眺めて研究する自主的なグループです。
また、ピアスーパービジョン(以下、PSV)とは、通常の教師役のスーパーバイザー(以下、SVr)と生徒役のスーパーバイジー(以下、SVs)との二者関係におけるSVsの職業的成長を目指すスーパービジョンとは構成が異なり、SVsのみの対等なグループによって構成されています。このピア(対等な、という語義)であるということが、安心して率直に苦労を棚卸し出来ることと安心して率直に他のメンバーも体験談を話すことが出来るというグループ力動を促し、各SVsの職業的成長を促進することにつながります。
対等な関係性とか率直に苦労を語れるという共通点があるように見えますが、では、当事者研究とPSVは似ているのでしょうか。
それには、一概に類似の自助グループと言い切れない点が幾つも考えられます。
まず、手法や技法的な点において、PSVは輪になって座り、語り合うという静的な構成で、各自の内面の力動に焦点が当たることに対し、当事者研究は同じ輪になるにしても、役割交代というサイコドラマの手法も取り入れたロールプレイングも技法として行い、徹底的に課題を外在化する行動を取ります。
グループの密度や安全性についても、PSVは安全性が保障されたグループ構成(決まったメンバー)であることに対し、当事者研究は誰もが参加出来る代わりに混沌も生まれ、その軋轢という問題こそが順調であると肯定します。PSVより当事者研究の方がより、リスクも含まれる現実の社会構造に近いと考えられます。
更に、PSVはSVsの内面的な自己覚知を促し個人の資質の研鑽をはかることに対し、当事者研究は課題や苦労にスポットライトが当たり、個人の内面は大きな課題とはならないという、目的性の違いも見受けられます。
では、他の自助グループとの差異と類似点はどうでしょうか。
スキゾフレニクスアノニマス(以下、SA)は、自助グループとして、同様の課題として精神疾患を持つ仲間が集まるグループです。ピアという参加者の参加要件がある点で上記の二つに似通っているようにも見えますが、SAには「回復へのステップ」という毎回踏襲されるテキストがあります。メンバーはこのステップに沿って自分の体験談を話し、それに意見をはさまれることのない「いいっぱなしききっぱなし」という発言ルールにのっとって、安心して苦労を棚卸しして行きます。そして、閉会後は、今日聞いた話で持ち帰りたいものは胸にとどめて、持ち帰りにくいものは置いて行くことが出来る、という保障がルールとして与えられていることで、安心してSAミーティングの語り合いの場から社会生活に戻って行くことが出来ます。
似通ったルールを持つものとして、ピアカウンセリングがあります。ピアカウンセリングは、SAのステップが無い状態です。参加者同士がその日の話題やテーマを練り上げて行きます。ですが、同様な内容の、安心のためのルールが作られています。
更に、WRAPグループは、自分自身のWRAPを作るという目的のために、語り合いをします。安心のためのルールは、その日の参加者によって自主的に作られ、また随時改変されて行きます。より、その場の唯一的な関係性に視点を置いたグループの運営となります。
このように、これらのグループの特徴を概観するだけでも、それぞれ対等な関係性の構成メンバーによって運営されているグループであるという共通項がありながら、全てのグループが異なるグループ力動を生み出す手法や技法または目的性や理念を持っていることが分かります。
では、参加者は何を基準にグループを選べば良いのでしょう。
更には、運営母体は何を目的に何のグループを編成すると良いのでしょう。
これは、個々の苦労へのアプローチをより良く交通整理することが必要です。
参加者も自分の苦労を交通整理する主体となることが人生から求められていると考えてもらいたいと感じます。
また、運営母体も、その個人を固定した人として扱うのではなく、そのときその場の苦労の本質をつかみ、交通整理を共に行い、より実りのある経験へと共に歩む必要があると感じます。
事例として、職員集団へのアプローチとして、PSVではなく職員当事者研究を助言したケースを紹介します。
他者とのコミュニケーションが出来ず担当職員一人がつきっきりで対応している利用者の方についての話題が出たときです。私は、人間不信はうつりますからね、と言い含めました。担当職員が孤立しないこと、を助言しました。他の職員に担当職員が支えられて苦労を情報公開出来る状況にあるから毎日元気に出勤出来て利用者の方へ対応出来ている、という空気をかもし出すことで、逆感染が起きるとお伝えしました。そのために、勧めたのが当事者研究です。既に一人で疲れきっている担当職員を上手く対応しきれていないから問題児だというあつかいにしないグループとして、苦労を徹底的に外在化する、苦労をグループの真ん中に自分から切り離して出して置き、共に手を取り合って研究するという当事者研究をするよう助言しました。
これは、担当職員の困惑と疲れの度合いから推し量った助言ですが、そのときの苦労の質や量によって、どのグループにも振り分けられる可能性はあります。
このように、自助グループについての相違点を知っておくことは、それらを効果的に活用する自分助けにもつながります。
(katsuko.)