堕落 | 歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

俳優、ダンサー、歌舞伎ライター関亜弓による大衆向日記です。


21_21 DESIGN SIGHTで行われている
企画展「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」
に行ってきました。
 

この展覧会を回っていたその瞬間は


圧倒というよりも、終始心地よかった。



空間として、ずっといたいと思うような感覚。


でも見終えて
いくつかの事実を知って
鳥肌が立った。


ひとつは展覧会にまで
足を運んでおいて
恥ずかしいのだが、


2009年にアーヴィング・ペンが死去していること


もうひとつは
超高精細プロジェクターで映し出された作品群は
87-99年の軌跡だということ。


 



作品すべて
三宅一生とアーヴィング・ペンという人が
つい最近までに
つくりあげたような
パワーと生命力と
先進性を感じたし


 


「流行」と
切っても切れない世界で


時代をシャッフルしても
何の違和感がなく、
古びない作品を作り続けられる
二人の巨匠の才能に感服した。


 


そしてまた驚いたのは


本展覧会のタイトルである


「視覚的対話」


について。


13年にわたって続けられたこの撮影に、
三宅氏は一度も立ち会っていない。
また、ペンも一度もパリコレクションを見ていないそうだ。


作品のみ、成果物のみで行われる、
緊張感に満ち溢れた対話。


そんなクリエイションは
命が削れるくらい
怖くて面白いだろう。


 


そして
三宅一生さんのメッセージ
より深く刻まれた。



「私の服を見て、声を聴き、それを独自のやり方で返してくれる人、
自分自身が堕落しないよう厳しい評価をしてくれる人を必要とし、
それを求め続けた末に巡り会ったのがペンさんだった」
(『「アーヴィング・ペン全仕事」展カタログ』2000年、東京都写真美術館・朝日新聞社刊より)


 


 


どんなに認められ、どんなに高く昇りつめても
それが当たり前に続くと思わない。

堕落しないような環境を自ら
整えることが、堕落しない一歩なのかもしれない。















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この写真をみて、
「堕落」ととらえるか、「より高く」
ととらえるかは貴方次第です。