成駒屋型、松嶋屋型、G習院型 | 歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

歌舞伎ライター 関亜弓「そば屋のカレー日記」

俳優、ダンサー、歌舞伎ライター関亜弓による大衆向日記です。

封印切は学生時代にに務めさせていただいた大事な演目。
(師匠も私のことを未だに梅川さんと呼ぶくらい)

今回の

亀屋忠兵衛  藤十郎
傾城梅川  扇雀
井筒屋おえん  秀太郎

って、私たちがお手本ビデオその一にしていたあの奇跡の配役でござんす。

配役を見てわかるように、成駒屋型でしたよ。
型って、普段はそんなに気にしないけど

封印切に関してはわかりやすく違いがある。

成駒屋型のほうは、封印を切るのはアクシデント。
松嶋屋型のほうは、自ら決意して封印を切る。

成駒屋型のほうは、先に梅川が引っ込み、そのあと忠兵衛が引っ込む
松嶋屋型のほうは、花道の引っ込みは忠兵衛と梅川のふたり一緒


稽古期間も長かったし、色んな配役で
一番見ている芝居だ。

最近意地悪系のお役が多かったから、扇雀さんの梅川に
感情移入できるかしらと思ってしまったのだけど、さすが
何十回とやってきていらっしゃるだけあって素晴らしかった。

梅川はすぐ泣くし、優柔不断の忠さんに振り回されるし、
八右衛門にもいろいろ言われるけど
自分で意見できなくってまた泣いちゃうし、いわゆるザ・女の子。
だけどそれだけじゃないと思う。
忠兵衛に一緒に死んでくれっていわれたとき

「わしゃ礼いうて死にますわいな」

っていえる覚悟がある。
(今の時代にはソグワナイ言葉だけどね)
だから引っ込みに関しては、二人で一緒に行くパターンのほうが
絆があっていいのにと思っていたけど、梅川の
キャラクターを深堀りしていくと
最後の花道を一人で決心して歩く成駒屋型に共感するようになった。

「嬉しいやら哀しいやら、夢のようでござんすわいなぁ」

って、心中するっきゃない状況下でいえる
梅川は女の真の強さを感じるし。

自分にとってもすごい大事な科白でした。

ちなみに処々の理由で松嶋屋型と成駒屋型をミックスした
「学習院型」という舞台を後世に残したことは
リアル型破りだったなと今、思い出されます。

追記
個人的に、BUMP OF CHIKINの「everlasting lie」という曲は
勝手に封印切のテーマ曲でした。
「愛する人の 命に値がついた」とかすごい封印切の
世界っぽいんですよ。要ちぇけらー