10年前に終わった不倫相手の妻から
300万円の慰謝料を請求されています。
→こちら
慰謝料支払い期限まであと3日。
慰謝料は払わない。
でも、早く、回答を送らないと…。
頭の切れる、頼れそうな先生だった。
だけど、
同じ方向を向いて、
同じゴールをめざしていける先生と
言い切れるだろうか…？
それにしても、
30分の無料相談といっても
思った以上に、有益な話を
聞けることがわかった。
他の先生の見解も聞いてみたい。
時間は限られてきているが、
他の弁護士事務所の門も
叩いてみることにする。
次は、
個人で開業している弁護士さんの
事務所を訪ねてみることにした。
前回の
大手法律事務所の無料相談は、
どの先生に担当してもらいたいかを
自分で決めることができない。
今度は、個人開業の事務所だから、
最初から、プロフィールや経歴、
顔写真もわかっている先生が
対応してくれるので、安心感がある。
今回の先生は、
国内有数の一流大学のご出身。
休日にもかかわらず、
メールにお返事をくれて、
私のために急きょ事務所を
開けてくださった。
私は、前回鼻で笑われた回答書に
加筆修正した案を先生に見せた。
回答書（案）
※赤字が前回からの加筆修正箇所
○○法律事務所
東出×子様代理人
弁護士 △△△△先生
東京都●△区▲□町○○
関ララ
2020年●月×日付で貴職より拝受した通知書に対し、以下のとおり回答いたします。
東出氏は、交際中に自らが既婚者であることを隠して、私にアプローチをしてきました。
結婚指輪もしておらず、交際中も、配偶者の存在が疑われるような言動は一切なく、独身であることを疑う余地はございませんでした。
また、私は2010年★月に東出氏より初めて、既婚者である旨知らされて以来、東出氏とは一切連絡をとっておりません。
従って「東出氏が既婚者であると知りながら不貞行為を行っている」という事実は認められません。
上記により、2010年★月には、通知人東出×子は配偶者の不貞行為の事実とその相手を知ったと考えるのが妥当です。
よって、本件には民法第724条による3年の消滅時効が適用されるため、私への慰謝料請求が法的根拠に基づくものでないことは明らかです。
加えて、通知人と配偶者は不法行為があったとされた日から現在まで、離婚や別居に至ることなく、婚姻関係を継続されています。
よって、通知人が受けられた精神的苦痛と本件不法行為との間に、因果関係は認められないものと思料いたします。
東出氏との交際で通知人にはご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げますが、本件につき私には慰謝料支払いの義務はなく、お支払いは誠に遺憾ながら致しかねます。
以上、回答といたします。
30分しかないから、と
おもむろに先生は切り出した。
「ふーん。おたくは、
騙されていたというわけか。
あなた、売られたかもね。
彼に。」
「売られた…？」
「最近、他の浮気が見つかって、
そちらの相手をかばうために、
おたくを生贄に差し出した。」
生贄……
突拍子もない先生の話は、
私には理解ができなかったが、
10年経った今頃になっての
慰謝料請求じたい、
そもそも突拍子もない話ではある。
背景に、私には理解が追いつかない
どんなストーリーがあったって
おかしくはない。
「確かに、先生が仰る通り、
彼がまたやらかして、
奥様がついでに10年前の余罪を
掘り起こしている可能性は
あると思っていました。
しかし、今のお相手の代わりに、
10年も前に終わった私のことが、
取引材料になるでしょうか…？」
10年前の不倫相手が生贄とは、
またずいぶん斜め上をついてくる
発言だが、
いずれにしても、
この夫婦にはきっと最近、
何かがあった。
「今の浮気相手を守るために、
あなたとまだ続いていたように見せて
奥様の矛先をおたくに向けさせた、
とか。」
「あるいは。」
先生は意味ありげに
語りだした。
「彼は今の浮気相手と再婚したく、
奥様との離婚を
希望しているのかもしれない。
奥さんとしては、
医者の妻の立場を
失いたくないだろう？
有責配偶者から離婚をすることは
できないから、
離婚を避けるために奥様が、
不倫の証拠を挙げたいと思っている。
でも今の不倫相手を困らせたら
ご主人とその後の関係修復が
難しいから、
あなたをターゲットにした。
あなたに過去の不倫を
認めてもらえればそれでいい。
「それじゃあ私は
スケープゴートということ
ですか！？」
「まあ、すべては想像ですけどね」
それに10年前の不倫が原因で
有責配偶者といえるかどうかは
法的に難しいところだけど。
と先生は付け加えられた。
すべては想像の話とはいえ、
彼が、ほかにいい人がいて、
奥さんと離婚したい…？
確かに、今頃になって
東出×子がこんなことを
仕掛けてきた背景には、
近年あの夫婦に何かあった、
と考えるのが自然だ。
東出さんが、今度は遊びでなく
本気の不倫をしていると
いうことなのか。
私は、何だったのだろう。
ただただ淋しく、虚しくなる。
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