ブログの記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 

今回は、痛みについての記事を書きます。

 

痛みに「敏感」な状態について、以前の記事で書きました。

 

https://ameblo.jp/sekainokesiki/entry-12812944636.html

 

この記事の中で、一つの例として、変形性関節症の痛みとの関係について、簡単に記載しました。

 

変形性関節症(この記事では、分かりやすくするために、膝に限定して書きます)の痛みについて、実は大変興味深いテーマです。

 

例えば、有名な医学雑誌(Lancet)に掲載された論文でも指摘されていますが、関節は本来、痛みに鈍感な部位です(「変形性関節症の痛みのマネジメント」の講習会で説明)。

 

体を動かす際に、膝関節には、相当な負担がかかります。走る、急にストップする、向きを変える、飛ぶ、着地する、その他にもいろいろとありますが、こうした動きの時に、膝関節には相当な負荷が加わります。

 

しかし、通常であれば、上記のような動きを行っても、ほとんどの場合、膝に痛みは感じません。もし、後になって痛みが生じたとしても、それは太もも等の筋肉の痛み(遅発性筋痛)が多いと思います。しかし、そうした痛みは、関節の痛みではありません。

 

例えば私は、20代の頃にいわゆるウェイトトレーニングを熱心に行っていた時期があり、その頃は200kg近いバーベルを使ってスクワットを行っていましたが、それでも膝は全く痛くありませんでした。

 

このように、本来であれば、膝に限らず、関節は痛みに鈍感な部位です。言い換えると、痛みを感じにくい部位です(もし、関節が痛みを感じやすい部位だとしたら、例えば走るたびに痛みを感じることになるので、スポーツのように体を激しく動かす行為は困難になってしまうでしょう。ましてや、高重量のスクワットなんて、とてもできません)。

 

それでは、膝の変形性関節症になると、本来であれば痛みに鈍感なはずの関節が、なぜ痛くなるのでしょうか。

 

こう書くと、例えば、関節の軟骨が減っているからだと答える人がいるかもしれません。

 

しかし、軟骨の異常は、痛みがない人でも見られます。

 

例えば、症状がなく、怪我や手術の経験もないのですが、MRIの検査を行って変形性膝関節症の画像所見が見られた成人について報告している、様々な研究の結果を集めて分析したシステマティック・レビュー(メタアナリシスも含む)があります(「変形性関節症の痛みのマネジメント」の講習会で説明)。この論文によると、例えば軟骨の欠損については、40歳以上の成人では43%(95%信頼区間で、29%から57%)にありました。

 

このように、膝関節に痛みがない人でも、軟骨の異常が見つかることがあります。そのため、軟骨の異常があるからと言って、痛みと関係しているとは必ずしも言い切れません。

 

また、上記のような研究は、時間の要素を考慮していないので、時間の要素を加味した研究ではどうなるのでしょうか。

 

例えば、症状がある変形性膝関節症を有する方を対象として、3年後のフォローアップを含めて、画像上の変化と、痛みや能力の関係について調べた研究によると、画像上の変化と痛みに有意な関連はありませんでした(「変形性関節症の痛みのマネジメント」の講習会で説明)。

 

こうしたテーマに関する研究には様々なものがありますが、いずれにしても、軟骨の異常を含めた画像上の変化について、痛みと関係しているとは限らないということは、言えると思います。関係がある場合もありますが、関係がない場合もあると思います。

 

それでは、変形性関節症の痛みに関して、画像上の変化以外の要因で、何かあるのでしょうか。

 

変形性関節症の痛みについて、様々な要因の関与が考えられますが、重要な要因として、痛みに「敏感」な状態が挙げられます。

 

痛みに「敏感」な状態になっているからこそ、椅子から立ち上がる、歩くといった日常的な動き(負担が軽い)でも、痛みが起こります。

 

実際、末梢性感作(簡単に言うと、末梢レベルにおける、痛みに「敏感」な状態への変化)は変形性関節症における関節の特徴の一つであり、中枢性感作(中枢レベルでの変化)も起こりうると指摘されています(「変形性関節症の痛みのマネジメント」の講習会で説明)。

 

関節は本来であれば痛みに鈍感なのですが、敏感になる変化が生じることがあり、そうなると痛みが発生しやすくなります。痛みについて考える時に、このような変化についても、知っておく必要があります。

 

こうした内容について、変形性関節症の痛みについては、「変形性関節症の痛みのマネジメント」の講習会で説明しています。

 

また、痛みに「敏感」な状態に特に焦点を当てた内容については、「痛みに「敏感」な状態への対応」の講習会で説明しています。

 

痛みについて考える時に、痛み自体に加えて、痛みを増加させやすい状態についても、知っておくと便利です。痛みに詳しい医療従事者が増えることで、痛みがある方の悩みが減ることを、期待しています。

 

(この記事について、当ブログの管理人が運営しているサイトにて、管理人自身が執筆した記事を見直して修正を加えたものです。https://www.tclassroom.jp