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ヒアルロン酸注入による失明や脳梗塞の合併症を完全に回避する方法はない 形成外科医が知っておいてほしいこと

 

タレントや芸人、YouTubeなどで活躍するインフルエンサーなどが普通に整形を告白する時代になった。

 

そんななかでも、“シワをきれいにしたい”“鼻を少し高くしてみたい”――そのような“プチ整形”とも呼ばれる美容医療の際に行なわれるのが、ヒアルロン酸注入。

 

メスを入れる整形と比べて遥かにハードルが低い同美容医療。しかし、そこには大きなリスクも存在するという。

 

形成外科・美容医療の専門医として10年以上、臨床と研究に従事。2019年に開業し、現在は東京・恵比寿こもれびクリニックの院長として勤務する西嶌暁生(にしじまあきお)氏。

 

「人はそれぞれに合った健康や美しさがある」をモットーとし、日々“飾らない美”ナチュラルビューティーをサポートしているという西嶌医師は、ヒアルロン酸注入のクを知ってほしいと語る――。

西嶌暁生医師  ※提供画像

西嶌暁生医師  ※提供画像© ピンズバNEWS

 

昨今、美容医療はより身近な医療になってきた。私としては、それ自体は喜ばしいことだと思う。人の価値観や幸せの感じ方は様々であり、超高齢化社会になった日本国民が、笑顔で活き活きと過ごすお手伝いができるなら、美容医療の役割は大きい。

 

むしろ、ありもしない効果をうたい、有名人を使って、人のコンプレックスにつけこみ、美容・健康商品を短期間で売りさばくような商法の方が、よっぽど不誠実だと思う。

 

そんな中、日本国内ではいわゆるメスを使った外科的な治療ではなく、レーザー機器や皮膚充填剤(ヒアルロン酸やコラーゲン製剤など)を用いた「非外科的美容医療」の普及が著しい。

 

というのも、そもそも日本人は、島国生活が数万年間続いたため保守的な性格の人が多く、韓国人の美容愛好者に比べると、ダイナミックに変化する施術を好まない。

 

そのため、体にメスを入れるよりも、「体に負担が少なく、痛みが少なく、簡単にできそうなもの」が選択される傾向にある。

 

そして、非外科的美容医療の代表例が「ヒアルロン酸の注入」である。その昔、注入剤と言えば「コラーゲン」だったのだが、約20年前からヒアルロン酸へと時代は変わってきた。

 

架橋度(硬さ)の種類が増え、注入部位も真皮のみから、皮下、脂肪層、骨膜上など様々で、それに応じて手技が進歩し、医療機器の開発も進んできた。

■美容医療で使用する「ヒアルロン酸」とは

少々専門的になるが、ヒアルロン酸は、Nアセチルグルコサミンとβ-グロクロン酸の2分子結合を1つの単位としてグリコシッド結合を繰り返しているグルコサミノグリカンの高分子のムコ多糖類である。

 

通常、ヒアルロン酸は私たちの体内のいたるところに存在しており、特に、目(硝子体)、皮膚(真皮)、関節液などに多く含まれている。

 

一方で、美容医療で使用する「ヒアルロン酸」とは何なのか、ご存じだろうか? 注入用のヒアルロン酸は、人工的に合成したヒアルロン酸を目的に応じて架橋剤を使用し安定化させ、皮膚内にとどまる構造になっている。

 

このように、ヒアルロン酸は身体の構成成分の1つであるため、理論的にはアレルギー反応のリスクは極めて少ない。したがって注入前の皮内テストは不要であり、クリニック側としても治療を提案しやすい。

 

なお、稀に報告されるヒアルロン酸注入によるアレルギー反応は、ヒアルロン酸そのものというよりも、製剤の生成過程で含まれる少量のタンパク質や架橋剤などによるものであると考えられている。

 

注入治療において、一般的に、ハイドロキシアパタイト(骨や歯に含まれるリン酸カルシウムの一種)やシリコンなどのような非吸収製剤(体内で吸収されない成分)は、重篤な合併症が多く、未知なる合併症についても非吸収製剤の方が多いと考えられている。

 

その点、ヒアルロン酸は良くも悪くも吸収製剤(時間と共に体内で吸収される成分)なので、非吸収製剤に比べると安全であると言える。

 

そして、このような吸収性製剤は、生理的に分解・吸収されるため,治療が可逆性であるという大きな特長があり、美容治療初心者にも敷居が低い施術である。事実、日本では年間 14.9万件(2017年)、12.4万件(2018年)と非常に多くの施術がなされており,すでに一般的な施術となっている。

 

美容医療の世界においてヒアルロン酸の注入は、顔面のシワの改善、骨や脂肪のボリュームロスの補填、形状の補正などを目的として行なわれる。短時間の治療で、シワ・タルミ・形状の改善など、様々な若返り効果を得ることができるのが一番の特徴である。

 

そして、注入方法によって、大きな変化から小さな変化までコントロールが可能である。

ここで少しクリニックの事情をお伝えしたい。ヒアルロン酸製剤は使用中に障害が起こった場合、生命や健康に重大な影響を与える恐れがあるため適正な管理が必要とされている「高度管理医療機器」に分類されている。

 

2024年現在、日本では医療機器として承認を取得し販売されているヒアルロン酸製剤が数種類あり、第一選択としては承認品を選択すべきである。

 

しかし、現実問題、承認品は購入原価が高いだけでなく、限られた種類だけだと多様な施術をカバーしきれないことも事実であり、承認外の製剤も採用しているクリニックも多い。なお、当院でも承認品と未承認品の両方を取り扱っている。

■血管内へヒアルロン酸の誤注入が起きたら皮膚壊死、失明、脳梗塞などの重篤な合併症につながる

さて、ここからが本題である。このように、美容医療で一般的に使用されているヒアルロン酸だが、決してヒアルロン酸を侮ることなかれ。注入の際に、血管内へヒアルロン酸の誤注入が起きたら、皮膚壊死、失明、脳梗塞などの重篤な合併症につながるのだ。

 

ヒアルロン酸の注入に伴う合併症は急性期から慢性期まで多種多様であり,施術に際しては,その起こり得る合併症とその対処法について、医療従事者は十分理解しておく必要がある。そして、治療を受ける側(患者サイド)もそのリスクをぜひ知っておいてほしい。

 

もちろん、治療前に十分に説明を受けた上で患者の同意が必須である(インフォームド・コンセント)。ただ、実際に一語一句をすべて読み、理解している人や合併症を具体的にイメージできる人は少ないと思う。

 

私だって、携帯電話やレンタカーの契約をする際に、契約書のすべての文言を読んでいるわけではない。そこで、本記事を通して、ヒアルロン酸注入治療の合併症を少しでも理解していただきたい。

 

ヒアルロン酸注入による合併症のほとんどは、腫れ、痛み、発赤などの軽微なものである。ただし、重篤な急性期の合併症として、血行障害による失明、脳梗塞、皮膚壊死がある。これらは、血管の中にヒアルロン酸が詰まったり、血管を圧迫することで生じる。

 

なお、ヒアルロン酸注入による合併症の発生数の把握は困難なので、発生率や有病率等は明らかでないが、解剖や動物実験によりその発生機序は解明されつつある。

■特に、鼻へのヒアルロン酸の注入による皮膚壊死の合併症は多い

そして、最近の症例研究では,ヒアルロン酸の注入を原因とする失明は鼻部、眉間部、前額部(おでこ)への注入症例が多く、顎や口唇といった顔面下部へのヒアルロン酸製剤の注入を原因とする失明の発症の報告は少ないことが分かってきた。

 

このように、顔面内でも危険部位とそうでない部位の存在が明らかになりつつある。なお、注入治療後の合併症として視覚障害を認めた48症例のうち、43%で皮膚障害を認めたとの報告もあるため、皮膚の症状にも注意する必要がある。

 

特に、鼻へのヒアルロン酸の注入による皮膚壊死の合併症は多い。加えて、鼻の整形手術をした後は血行の状態が悪くなるので、より注意が必要だ。たとえ何年も前に手術をしていたとしても、そのリスクは変わらない。

 

なお、晩期合併症(遅れて生じる合併症)としてバイオフィルム(微生物の集合体)や膿瘍形成などが報告されている。

 

実際に当院でも何年も前に他院でおでこに入れたヒアルロン酸が感染し、すべて摘出するといった症例も経験している。そうなったら、大きな傷跡は残るし、整容性不満足は増すばかりで、本末転倒である。

 

当然、血行障害による重篤な合併症を回避するためには、医師が顔面の解剖を理解し、正しい技術を身に付けることが必要不可欠ではあるが、残念ながら、現在、このような合併症を完全に回避する方法は存在しない。

 

そのような背景があり、実は私は開業当初、合併症を回避するためにヒアルロン酸の注入治療は行なっていなかった。

 

ただ、診療を続けていく中で、患者の希望や目的を達成するために、どうしても必要な施術と判断して、現在では導入している。そして、ヒアルロン酸の注入治療が第一選択になるケースも多い。

 

ある意味、この記事は私自身への戒めでもあり、美容医療の患者とありえる読者の皆さんへの注意喚起でもある。ヒアルロン酸の注入という治療を安易に考えず、効果だけでなくリスクをゆめゆめ忘れず、判断していただきたい。