うつは決して珍しい病気ではありません。
現在、日本では200万人を超える人が、うつ病で医療機関を訪れています。受診せずに苦しんでいる人を含めると、もっと多いことでしょう。
自分はそうでなくても、自分の周りで苦しんでいる人も多いだろうと思わせる数字です。
うつになったときには、辛かったことを吐き出したり、親しい誰かに打ち明けたりすることが大切だといわれています。人と話すことが解決につながるとも、よく聞きますよね。
でも、話すことの大切さを強調するだけでは片手落ちです。聞く方はどう聞き、どう返事をすればよいのでしょう?
自分が聞く立場になることも大いにありえますから、ぜひ、指針や目安がほしいですね。
そこでアイルランドの情報サイト『Lovin Dublin』が報告した、うつになった友人の話を聞くときにいってはいけないこと7つのことをご紹介します。
ちなみにアイルランドでは、約40万人がうつ病で苦しんでいるのだそうです。
アイルランドの人口は約464万人と日本の約3.6%ですが、うつ病人口は日本の40%ほどで、割合はかなり高めです。
■1:「どうしてうつになったの?」
うつには明確な理由や解決策がないこともあります。
うつになった理由は、相手にとって答えにくいもの。酷なことになる場合があることを、心に留めておきましょう。相手に罪悪感を押しつけることにもなりかねません。
自分がうつの場合、周囲が納得するような理由がない場合はその質問はスルーしましょう。
■2:「テンションの落ちるときってあるよ。心配しないでいいよ」
たしかに誰にでも、テンションの落ちるときはあります。しかし、「気分の落ちこみ=うつ」とは限りません。
相手が「どれほど辛い思いをしているか」について話していたら、辛い気分が続いている期間や、辛さの度合いを確認してください。
期間が2週間を超えているとしたら「そういうこともあるよ」のレベルを超えている可能性があります。
医療機関を受診することを勧めるべきです。サインを見過ごしてはいけません。
■3:「外出してみようとしている?」
辛くてたまらなくて、外出も散歩もままならない状態なのに、外出してみようとしたか聞かれるのは、おぼれている人に向かって泳いでみたかと聞くようなものです。泳げないからおぼれているのですから。
■4:「薬の常習性が怖くないの?」
うつの人が、必ずしも薬での治療を受けているわけではありません。足の骨を折った人が、みんな足に金具を入れているわけではないのと同じです。
とはいえ、薬での治療をしている人に薬の副作用を吹きこみ、治療方針に不安や恐怖をもたらすより、薬をきちんと飲んで、早く回復することをサポートした方がずっとよいでしょう。
■5:「ポジティブな考え方が役立つと思うよ」
うつは皮肉な態度をとるからなるわけではなく、悲観的だからなるのでもありません。ですから、この質問が浮かんでも、ぐっと口を閉じておきましょう。
ちなみにうつ病のはっきりした原因はわかっていませんが、脳の神経の伝達物質の働きが悪くなること、激しい疲労やストレス、環境変化等、複数の要因が重なることで起きるといわれています。
原因がひとつだけ、ということはまずないそうです。
■6:「いい代替療法を紹介するよ」
医療機関を受診しましょう。できれば医師・カウンセラーなどの専門家が、チームで対応してくれる医療機関が理想的です。
■7:「友だちでこんなスゴイことをやった人がいてね」
この言葉は、同じようなことに挑戦しようとしている人にはとても参考になりそうですよね。でも、うつの人には役立たないことが多いでしょう。
うつの人は、いろいろと問題について話しても、必ずしも解決策を求めていない場合があります。というより、情報量の多さに圧倒されてしまうといったほうが近いかもしれません。ただ、話したいのです。
相手を情報過多で疲れさせるよりは、お茶を淹れて一緒に座り、話を聞きましょう。「ホントそれって最低よね。とても辛いと思うわ」と共感を伝えるのです。
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軽い気持ちで口にしてしまいそうな言葉もあれば、ずっと相手の話を聞いてサポートしているなかで、こちらが辛くなっていってしまいそうな言葉もありましたね。
うつに苦しむ人のためだけでなく、支える人のためのカウンセリングもあるそうです。
聞く立場になるときや、大切な人を支えようとするときは、自分にとっても正念場になります。自分を支えるサポートシステムも、必ず準備しておきたいですね。