健康寿命を延ばすために「やってはいけない」生活習慣…「腎臓・肝臓・脾臓」の守り方 自分で守らなきゃ誰が守る
休肝日は必要か?
腎臓が健康かどうかもまさに寿命の長さに大きく作用する。
椎貝クリニック院長の椎貝達夫氏が語る。
「腎臓は尿を作る過程で、様々な血液成分の濃度を管理して、血液を健全な状態に保つ役割を担っているんです。
『慢性腎臓病』になると、この腎臓の管理能力が低下して、悪化すれば『透析療法』を受けることになる。透析治療は心臓や血管に大きな負担をかけてしまいます」
日本透析医学会の発表によると、透析療法を受けている60歳男性は、一般男性よりも平均寿命が約10年も短くなる。逆に言うと、腎臓の健康を保つことができれば、長生きできる確率は上がる。
まず、腎臓を守るためには、水をたくさん飲み過ぎてはいけない。
「水を飲んで腎臓が良くなることはありません。尿量が増えて腎臓の機能に負担がかかる。一日3〜4lも水を飲む人がいますが、体内で水分が行き場を失い、むくみが発生します。
食事からも水分は摂れるので、飲料水の目安は一日700〜1200mlです」(椎貝氏)
では、腎臓の機能を向上させるにはどうすればいいのか?意外な食べ物に効果があることが近年の研究で判明している。
「ラットを使った実験によって、アミノ酸の一種『GABA』を多く含んでいるタクアン漬けに、血圧の上昇抑制と腎機能を改善する効果が認められました。他の乳酸発酵させた漬物でも同等の効果があると考えられます。
日干しのタクアン漬けなら一日60gほどが適量です。最近市販されている漬物は塩分が抑えられていますから、我慢せずに食べることが大事だと思います」(食品栄養学に詳しい高崎健康福祉大学教授の松岡寛樹氏)
「リン」の摂り過ぎに注意
腎臓に悪影響を与える食べ物もある。自治医科大学教授で、『腎臓が寿命を決める』の著者である黒尾誠氏は、ミネラルの一種である「リン」の摂り過ぎに注意を促す。
「リンは老化加速物質で、過剰摂取は腎臓に負担をかけます。特に体内への吸収率が高い無機リンは避けたほうがいい。この物質は食品添加物に多く含まれます。
ラベルに『リン酸塩』の表示があるベーコンやハムなどの加工食品は極力控えること。
他にもプロセスチーズや色の濃い炭酸飲料、練り物、カップ麺などを食べる回数を意識的に減らしたほうがいいでしょう」
健康法の代名詞とも言うべきウォーキングは腎臓にも効く。山形県立保健医療大学理事長兼学長で、東北大学名誉教授の上月正博氏が解説する。
「私たちの研究によると、一日4100歩ほどのウォーキングで、腎臓の機能がアップし始めることが分かっています。目標は30分を週5日。毎日10分間でも歩くと4%死亡率が下がり、60分までは歩くほど死亡率が低下すると言われています」
睡眠中に気軽にできる腎臓病対策もある。
「毎日寝るときに『腹巻き』を巻くんです。すると、内臓の体温が0・5〜1℃上がります。これにより体内の水分量がキープされて腎臓の機能低下を防ぎます。また腎臓周辺の血行も良くなります」(練馬桜台クリニック院長・永野正史氏)
腎臓とともに「沈黙の臓器」と呼ばれるのが、肝臓と膵臓である。
肝臓については、なにより脂肪肝を防ぐことが寿命を延ばすことにつながる。脂肪肝はあらゆる生活習慣病の要因となるからだ。ポイントはお酒との付き合い方を見直すこと。肝臓専門医で栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅氏が語る。
「まず、『休肝日』という考え方は必要ありません。週1〜2日だけ飲まない日を作っても、その日以外にガブ飲みしていたら、何の意味もないからです。現在は1週間単位で純アルコール摂取量を管理するのが、専門家の間では主流になっています」
成人男性ならば一日の純アルコール摂取量の適量は20g、許容量は40g。25度の焼酎ならコップ(100ml)で1杯、ビールの中瓶なら2本が限度だ。1週間で考えると、140〜280gに収めればいいことになる。
「適量のアルコールを摂取する人のほうが、お酒を飲まない人よりも死亡率が低いというデータもあります」(栗原氏)
気を付けたい飲み方
お酒選びで避けたいのは、多量の糖質を含んだフルーツのサワーだ。
「果汁に含まれる果糖は体内での吸収が速いため、脂肪がたまりやすく、肝臓に大きなダメージを与えます」(栗原氏)
胃や腸に何もない状態で酒を飲むと、アルコールの吸収率は跳ね上がる。それを防ぐためには事前にタンパク質や油脂を摂取するといい。
「鶏の唐揚げは身体に悪いイメージがありますが、1〜2個なら優秀なツマミです。お腹に留まりやすく、アルコールの吸収を抑えます。
避けたほうがいいツマミはフライドポテトやポテトサラダ、ご飯物や麺類。酒と糖質を一緒に摂取すると、肝臓はアルコールの分解と糖代謝を同時に行うので、重労働を強いられることになります」(栗原氏)
肝臓と連携して食べ物を消化する膵臓も重要な臓器である。消化器外科医で三重大学名誉教授の伊佐地秀司氏が言う。
「脂質が多い食事は膵臓から膵液の過剰分泌を招き、膵臓の負担につながります。脂質が多いあん肝、牛や豚のバラ肉、鶏肉の皮を食べ過ぎるのは良くありません。
醤油やソースのかけ過ぎなど塩分の摂り過ぎも膵臓にダメージを与えます。また、早食いやドカ食いも膵臓の働きを阻害しますので、やめましょう」
甘い物が欲しくなったら、洋菓子ではなく和菓子に。水羊羹や、ういろう、最中は脂質が少ない。
肝臓、膵臓、腎臓のツボを刺激することも有効な健康法である。上の図を参照してほしい。
「上から順に肝兪、脾兪、腎兪を2本の指で押すと、3つの臓器が活性化します。痛みを感じない力加減で3秒ほどを3〜5回。時間帯は起床後と就寝前がいいでしょう」(メディカル・ケアグループ総院長・二宮崇氏)
日々のちょっとした気遣いが、内臓を守る。
健康寿命を延ばす方法はまだまだある、引き続き後編の『「肩・膝・腰」の痛みはこうして解消する…ペットボトルとテニスボールで簡単にできる「20の新技」』でそのコツをお伝えする。