心の調子が悪いときって、本当に嫌なもの。朝から気分がさえず、ちょっとしたことにもイライラしやすくなっているところに、「あれをやってください。これもやってください」などと言われれば、痛い自分に、さらなるムチが打たれたような気がするもの。
そんなとき、「よくみんな、こんな環境で頑張っていられるな」と思って周りを見渡せば、なぜかクールにそつなく仕事をこなしている人がいたりします。普段は何とも思っていなかった〇〇さんの、心の健康ぶりに気づく瞬間です。普段から〇〇さんは心の健康に良いことを実践していた可能性が充分あります。
ここでは、将来の見通しさえなかなか立たないような厳しい現代社会で、心の健康を保つヒントを精神医学的観点から詳しく解説します。
■まずは何事も脳内環境
心の不調は、「イライラが止まらない」「気持ちが乗ってこない」「強い不安にあおられる」など実に多様ですが、結局のところ、こうした症状はみな、脳内環境の悪化を反映したもの。
その悪化が行き過ぎてしまい、治療を受けねば元に戻りにくくなった状態が、心の病気だと見ることもできます。
この脳内環境は遺伝的要因によって定まる部分もありますが、何と言っても、悪化をきたす要因はストレス。ただ、ストレスは生きていくうえでなかなか避けにくいもの。
場合によっては、何かの拍子に自分の劣等感を激しく刺激するような言葉が耳に入ってくるかもしれません。
例えば、「〇〇さん、ちょっと、あれは痛すぎるよね」などの声が耳に入れば、誰だって動揺します。もしもそのとき対処法を間違えてしまえば、冒頭にあげた〇〇さんのようなクールさは保てず、イライラが止まらなくなってしまう可能性があります。
■心の不調は、それ以上、悪化させないことが大事
このようなことが起きれば、そのダメージによっては普段の自分ではなくなってしまいます。
例えば、悪口を聞いてからずっと気分が冴えず、家に帰れば食事を作る気にもなれない。とりあえず冷蔵庫にあったアイスクリームを食べているうちに、気が付いたらアイスクリームを箱ごと空けていた……
という程度であれば、心のダメージは大きかったものの、一時の罪悪感ぐらいで済むところだと思います。
でもその後、深酒をあおってしまい、翌日は二日酔いで仕事が手に付かないようならば、要注意!
ご本人の遺伝的、心理的、社会環境的要因がネガティブに相互作用し始め、心の不調がますます悪化していくネガティブ・スパイラルに入ってしまう危険があります。心の不調時には、まずはその不調をそれ以上悪化させない事を意識したいものです。
■「心の防衛機制」を工夫してみて
上記の例のように陰口が耳に入ったりした場合、私たちは意識的あるいは無意識的に、心理学の用語で「心の防衛機制」と呼ばれるものを働かせて心を守ろうとします。
例えば、ある人は条件反射的に相手の悪口が頭に浮かんで来ます。また、ある人は誰かに八つ当たり。人によっては「こういう訳だから、あの人たちの言葉には問題があり、自分には落ち度がない」と、理詰めに状況を解釈する場合もあるでしょう。
もしも陰口が耳に入ってしまったような場合、ご自分ならどんな心の防衛機制を働かせていたか、ちょっと考えてみませんか? それが現実対処能力を低下させるような、幼児退行的な反応だった場合、他の手段として「状況を理詰めに解釈してみる」ことを試してみましょう。
そして、心が傷ついた原因である劣等感などの心理的問題に関しては、それを他人に言えるレベルまで客観的にとらえることができるように、あえて正面から向き合っていくことが、その痛みを和らげる基本的対策です。
■ストレスはなるべく、その日のうちに発散!
上記の例で自宅に帰ったあと、深酒までしてしまったことには問題がありますが、「それでは、どんな対処が望ましかったか?」と問えば、そこは人それぞれ意見が別れるところでしょう。
「私なら、仕事帰りにジムへ寄って、有酸素運動で気持ち良く汗を流します」という人もいれば、「私はパートナーに思いっきりグチを聞いてもらいます」という人もいるはず。
そのやり方がその人に合っていれば、もちろん何の問題も無いわけですが、ストレス発散法は習慣化しやすいもの。それにのめりこんでしまっても、深刻な問題が生じにくいものが望ましい、ということはぜひご留意ください。
人生には戦いという面が少なからずあるもの。相手から傷つく言葉を浴びるようなことは、いつでも起こり得ます。その際は、心の防衛機制でダメージを食い止め、そのストレスはその日のうちに発散させてください。