一説によると、「疲れる」は「憑かれる」、つまり何者かに取り憑かれて身体が重くなることに由来するという。憑き物を落とすために必要なコツ―最新研究からそれが次々と明らかになってきた。
前編記事『最新科学でわかった!疲労回復に効く「最強の栄養素」がこれだ』より続く。
疲労を抑える食材はこれだ
研究に使われた「抗疲労の成分」とは、疲労の原因である活性酸素の発生を抑え、解消していく栄養素のこと。具体的な成分名と、それが含まれている食材は、下の表に掲載しているので、参考にしていただきたい。
「週刊現代」2024年5月18・25日合併号より© 現代ビジネス
「週刊現代」2024年5月18・25日合併号より© 現代ビジネス
抗疲労食の食材として先の研究でも用いられたなかでもとりわけ重要なのが、鶏むね肉、ほうれん草、桜えびだ。
鶏むね肉には、イミダゾールジペプチド、トリプトファン、L-カルニチンが、ほうれん草には、コエンザイムQ10、α-リポ酸が、桜えびには、トリプトファンという抗疲労の栄養素が多く含まれている。
煮汁も一緒に摂る
なかでも渡辺氏が「恐るべき栄養素」と推すのが、イミダゾールジペプチドだ。
「抗酸化作用があり、老化を遅らせたり慢性疾患のリスクを低減させたりするなど、疲れを取るうえで、まさに完璧な栄養素といえるでしょう」
イミダゾールジペプチドの1日の摂取目安量は200mgで、これは鶏むね肉なら22g程度と簡単に摂取できる。ただし、食べ方にコツがある。渡辺氏が続ける。
「水溶性の成分なので、茹でたり、煮たりした場合は汁に成分が溶け出していきます。鶏むね肉を食べる際は焼くか、煮汁もスープのように一緒に摂るのがよいでしょう」
桜えびに多く含まれているトリプトファンは、人間の体内で生成できない必須アミノ酸なので、食事から摂取する以外に方法がない。
「トリプトファンから生成されるセロトニンは脳活動や、自律神経活動を活発にします。さらに、夜にはメラトニンへと変換され、睡眠へといざないます。疲労を回復させる熟睡には欠かせない成分といえるでしょう」(渡辺氏)
午前中に食べよう
日中のセロトニンを活発にするために、1日に必要な量のトリプトファンは午前中に摂取するのが望ましい。「青汁やバナナにもトリプトファンが多く含まれているので、これらを朝食に摂るのがおススメです」(渡辺氏)
ほうれん草に多く含まれるコエンザイムQ10も疲れを取るのに重要な成分だ。細胞内のミトコンドリアでエネルギーを生成する際に必須の成分となる。さらに、老化プロセスを遅らせる抗酸化作用もあるので、こまめに摂りたい。
日々の食材を工夫するだけで、日頃の疲労を軽減することができる。