時代とともに変わる“食と健康”の常識 「ひじきの鉄分は減少」「乳製品で骨が丈夫になるというデータ | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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時代とともに変わる“食と健康”の常識 「ひじきの鉄分は減少」「乳製品で骨が丈夫になるというデータはない」

 あなたがいま、“体のために”とせっせと口に運んでいるその食品は、とっくの昔に効果が否定されているかもしれない──。最新の知見や実例をもとに具体例を紹介する。

 

【グラフで丸わかり】1950年に比べて野菜の栄養価が下がっている!

 トマトやレタス、にんじんをサラダボウルいっぱいに盛って食物繊維とミネラルを摂取、納豆とさば缶でたんぱく質を補いつつ、デザートはつやつやした大きなりんごを丸かじり─

 

野菜に果物、青魚や納豆はいずれも栄養豊富で病気を遠ざける“体にいい”食品の代表格であり、積極的に食卓に取り入れることが推奨されてきた。しかしその常識は、日進月歩の調査や研究によって次々に否定されつつあると立命館大学生命科学部教授の久保幹さんは指摘する。

 

「同じ食品であっても、土の状態や環境、品種改良や農薬の種類などあらゆる要因によって成分や栄養価は変化していきます。つまりもともと“健康食”とされていても、ある時期からそうでなくなっているケースがあるということ。

 

 実際、いま流通している野菜や果物は総じて鉄分やカルシウムなど、ミネラルの減少が顕著です」

いちごもりんごも昔とは別の食べ物

 ビタミンによる抗酸化作用に食物繊維の整腸効果と健康効果が目白押し。“朝の果物は金”とも称されてきたが「そ

れははるか昔の話です」と高雄病院理事長の江部康二さんは断じる。

 

「いま店頭に並んでいる品種改良されたブランドもののいちごと、昔の人が甘みを足すために砂糖や牛乳をかけて食べていたいちごはまったく別の食べ物です。

 

1粒のサイズが大きくなり、何よりも消費者の嗜好に合わせて糖度が高くなった。その傾向は、ぶどうやみかんなどにも当てはまり、いちごに限ったことではありません。

 

 果糖の過剰摂取は百害あって一利なし。穀類や砂糖のブドウ糖など、ほかの糖類と比較すると血糖値はほとんど上昇しないものの、中性脂肪に変わりやすく、肥満を招きやすいのです。

 

 加えて、果糖はブドウ糖の数十倍の速度で老化の原因物質の1つとされる『AGEs(終末糖化産物)』に変わります。AGEsはたんぱく質に糖がへばりついたもので、動脈硬化や糖尿病合併症などの罹患リスクを高めるうえ、しわが多くつやがなくなるなど、見た目にも影響を及ぼします」(江部さん)

 

 果物の栄養素が減少の一途を辿っていることは調査や測量の現場でも明らかだという。久保さんが指摘する。

 

「青森や長野のりんご農園で継続的に調査を行っていますが、年を追うごとにミネラルをはじめとした栄養成分の量が少なくなっています。

 

その背景にあるのは、土壌を中心とした環境変化です。日本の原風景を思い出してみれば、昔は集落の近くに里山があり、多くの動植物が生息し、土にも微生物が多く、肥料も人や家畜の糞尿をたい肥とする有機肥料が主流だった。

 

 ミネラル豊富な肥料を微生物が分解し、それを栄養に植物が育っていたのです。しかし現在は、ほとんどの農家が化学肥料を使っているうえ、土に含まれるミネラル成分も減っています。作物を育てる土壌にミネラルが少なければ、果実のミネラルが含む分も当然、減っていくことになります」

 

 懸念事項は栄養素の減少だけではない。

 

「いまの日本人が好む果物の特徴は糖度の高さに加え、『見た目がきれい』であることです。外側の皮が少し傷ついているだけでも売り物にならなくなるため、虫食いや瑕疵を防ぐという名目で農薬の散布量が増えており、残留農薬の問題も懸念されます。

 

 また、品種改良のために薬剤を使って糖度を増やすと、植物はバランスよく成長しない。甘みが増す半面、ほかの栄養素が減っています」(久保さん・以下同)

 

 消費者のニーズに応え、口当たりがよくなった結果、体に悪影響を及ぼすデメリットも増しているのが現実なのだ。

“鉄分の王様”は過去の称号

 果物と同じく、土から育つ野菜もまた栄養価が大きく減っている。

 

「栄養価が高い野菜ほど相対的に土壌の変化の影響を受けやすい。例えばほうれん草の鉄分は70年前の6分の1。1950年に100gあたり4050μgあったにんじんのビタミンAも2000年には1500μgに減っています」

 

 ほかにも文部科学省のデータによればビタミンCはほうれん草は4分の1以下、小松菜も半分に、トマトの鉄分に至っては5分の1近くに減っている。

 

「また、野菜全体からポリフェノールやリコピン、アントシアニンに代表される抗酸化物資『ファイトケミカル』が減っていることも私たちの調査によって明らかになりました。

 

 そもそも植物がファイトケミカルを作るのは、害虫などから身を守ることが目的です。農薬で害虫がいなくなったいまの環境下においては、ファイトケミカルは必要ないため、生成されなくなるのです」

 

 化学肥料で育った野菜は栄養価以外にも懸念点があると久保さんは続ける。

 

「化学肥料を使って栽培した野菜は呼吸器疾患やがん、アルツハイマー型認知症などのリスクを上げるとされる硝酸イオンの含有率が倍増します。特に土から養分を吸収しやすい葉物野菜からは大量に検出されています。

 

野菜の栄養価が下がったからといって食べる量を増やしても、健康が担保されるどころか、かえって病気のリスクを上げることになりかねません」

 

 農作物のほかにも、栄養価に大きく変化があった「健康食」は存在する。

 

 医師の柳澤綾子さんはかつて“鉄分の王様”といわれたひじきは、65年の間で鉄分量が9分の1に減っていると話す。

 

「1950年版の『日本食品標準成分表』(文部科学省)では、干しひじき100gあたり55mg含まれていた鉄分が、2015年の改訂で6.2mgに修正されました。

 

 理由として挙げられるのは干しひじきの製造過程で、ひじきを煮る釜が鉄製からステンレス製に変わったこと。つまり、ひじき自体に鉄分は含まれていないのです。同様の理由で、切り干し大根からも大幅に鉄分が減っています」

 

 大規模な調査や臨床によって効果が否定されつつある「健康食」もある。子供の成長に欠かせない栄養源の代名詞だった牛乳がその筆頭だ。

 

「日本人の9割が牛乳に含まれる乳糖を分解できない『乳糖不耐症』だといわれています。そもそも、乳製品を摂ると骨が丈夫になるという明らかなデータはない。

 

 一方で乳製品を多く摂っている人は、脳卒中や心筋梗塞など血管系疾患の発症率と死亡率が低いという調査結果はあるものの、予防と直結するとは言いがたいです」(柳澤さん)

 真島消化器クリニック院長の真島康雄さんは納豆の食べすぎに警鐘を鳴らす。

 

「納豆は植物性たんぱく質が豊富で体にいいと思っている人も多いですが、実は脂質も多い。過剰に摂取すると血管内に蓄積し、血栓の原因になるプラークのもとになることが明らかになりました。

 

 特に動脈硬化のリスクが高い人は1週間に2分の1〜1パックくらいに留めること。納豆菌は強力なので、過剰摂取は腸内環境のバランスの乱れも招きます」

 

 DHAやEPAが豊富とされる青魚も同様だ。

 

「私自身10年ほど前までは、魚は体にいいからと患者さんに制限なく食べてもらっていました。しかし、日々生活習慣病の診察をしていると、魚が好きでよく食べている人はそうでない人よりもプラークがたまりやすいことがわかってきた。

 

 魚の脂には血流の改善をはじめとしてあらゆる健康効果のあるEPAやDHAを含有していますが、その割合は1〜2割程度。実際、特にさばを好んで食べて動脈硬化が進行した患者さんもいるので、脂がのった青魚は食べすぎに注意です」(真島さん・以下同)

 

 少量ならば“良薬”でも、大量に摂れば害を及ぼす健康食はほかにもある。

 

「老化防止、血圧低下などカカオポリフェノールの効果が期待できるチョコレートやビタミンCが豊富なレモン果汁はその代表格。

 

 実はカカオはかなり脂質が高く、70%や80%など高カカオのチョコレートは、脂質の摂りすぎでポリフェノールの効果を相殺し、動脈硬化の原因になります。食べるならカカオ低含有量のものを選んでください。

 

 また、レモン果汁が含んでいるクエン酸は強力な成分であるゆえ、大量に摂取すると腸内細菌を死滅させ、腸内環境が悪化する要因になります」

 

 最新の知見は「時代遅れの健康食」をあぶり出す一方で、かつては摂りすぎれば不健康になるとされていた食品の中に、誤解されているものがあったことも明らかにしている。

 

「例えば動物性の脂質が植物性よりも健康に悪いというのは過去の話。肉に多い飽和脂肪酸の摂取量と、血管系疾患の発症は無関係だというデータがあります。

 

むしろ最近問題視されているのは、植物油の主成分であるリノール酸です。具体的にはごま油、大豆油などは少量に控えた方がいい」(江部さん)

 

 とりわけ、現代人のたんぱく質の摂取量は戦後の1950年代と同じ水準まで低下している。筋力を維持して健康寿命を延ばすためにも、動物性たんぱく質をしっかり摂ることを意識したい。

色が薄くて旬のものを選ぶべし

 めまぐるしく変わる「健康食」を取り巻く状況を前に、私たちはどんな基準で食べるものを選ぶべきなのか。管理栄養士の麻生れいみさんは「旬」をキーワードに挙げる。

 

「農作物の栄養価は、収穫時期によっても大きく変化します。例えば、ほうれん草の旬は冬ですが、100gあたりのビタミンCを比較すると、『冬採り』で60mg、『夏採り』で20mgと3倍もの差があります」

 

 女子栄養大学の調査によれば、トマトのビタミンA量も旬の夏と冬で約2倍違うというデータもある。

 

 久保さんは、葉物野菜は色が見分ける基準の1つになると話す。

 

「なるべく色が薄いものを選ぶと、安全で栄養価が高い。ほうれん草は緑が濃いほど人気ですが、実は硝酸イオンが多いほどに色が濃くなります。

 

また、元気でみずみずしい野菜ほど栄養価は高い。葉物野菜に限らず、葉っぱはできるだけ大きい方がいいし、触ったときに硬めの方がいい」

 

 栄養価の高い食品を手に入れたら、食べ方にも気を配りたい。

 

「栄養を余すことなく食べるためには、食品の特性を知ることです。例えば水溶性のビタミンCやB群が多く含まれている野菜はスープにするといい。脂溶性のビタミンAやEは油に溶けやすい性質があるので、油炒めがおすすめです」(麻生さん)

 

 毎日食べるものだからこそ、小さな積み重ねが大事になる。情報を精査し、正しく栄養を摂ろう。

 

※女性セブン2024年5月9・16日号