てんかんは、世界で100人に1人が持つといわれる身近な病気。適切な診断と治療で約8割の人で発作がなくなり、普通の生活を取り戻せるが、それを知っている人は少ない。
東北大学大学院医学系研究科の中里信和教授(てんかん学)は7月24日、東京都内で開かれたプレスセミナー(主催=大塚製薬、ユーシービージャパン)で、てんかん発作で多い症状は手や口などを無意識にモゾモゾと動かす発作なのだが、この発作の存在を知っているのは医師でも少ないことなどを紹介。
てんかんについて患者本人はもちろんのこと、社会全体が知る必要があると説いた。
◆医師の認知度低いため適切な治療が受けられない人も
てんかん発作といえば手足の全身痙攣(けいれん)のイメージが強いが、一番多い発作はそうではない。
会話の途中で突然一点を凝視し、片手を無意識にモゾモゾ、もう一方は手刀のように硬直(硬直した手と反対側の脳が麻痺=まひ=している)、口をモグモグ動かしたり、時には歩き出したり...その間、約2~3分。しかし、本人は発作を起こしている間の記憶が一切ない。
"無意識モゾモゾ"は最もよく見られる症状にもかかわらず、医師の間でも認知度は低い。そのために、てんかんと診断されずに適切な治療を受けていない患者が多いのが実情のようだ。
◆誰もが明日にでも発症する可能性
てんかんには依然として偏見や差別の問題が付きまとうが、多くのてんかんは遺伝しないし、感染もしない。青年期では頭部のケガが、年齢が高くなると脳血管障害などが原因となることが多いとされる。
自身で気付ける兆候もあるが(表)、上述のように本人の自覚のない発作もあるため、患者の身近にいる家族や友人がわずかな異変に気付けるよう、正しい基礎知識を身に付ける必要があるという。
<表>
前兆として多いてんかんの部分発作
・身体感覚症状:手足がビリビリする、感覚がなくなる、電気が走る、手足が動かせない、手足が熱い・冷たいなど
・視覚症状:点や星型、線、円形、白黒や色付きなど形・色もさまざま
・聴覚症状:ブンブン、カンカンなどの単純な機械音から、人の声が聞こえるなどの複雑な内容も
※通常、1人の患者は1種類の発作を繰り返す
(当日配布資料より)
また中里教授は、てんかん患者の中には、家族や教師が過度に保護したり、行動を制限したりすることで精神的自律を妨げられているケースもあると指摘する。
てんかんの原因や発作はさまざまだが、多くの場合、同じ患者ではいつも同じ症状が起こる。つまり、その個人の発作パターンを知っていれば対応は難しくないというのだ。
◆患者は「自分のてんかん」に一番詳しくなるべき!
てんかんは精神科、神経内科、脳神経外科、小児科(小児神経科)などで診断・治療を受けることができるが、なるべく早めに、てんかん専門医に診てもらうことが望ましい。
医師にとって経験と知識が要求される病気だからだ。特に、現在治療中にもかかわらず、年に1回程度の発作があるならば、専門センターを受診すべきとされている。
中里教授は「障害のない人はいない。正しい診断がつけば"発作ゼロ、副作用ゼロ、悩みゼロ"への道が開ける。また、患者本人が自身のてんかんのタイプを勉強し、発作が起きた場合の対応を説明できるようになることが、家族や学校、職場での理解を得る近道」と強調した。
なお、てんかんを知るためのツールとして、情報サイト「てんかんinfo(インフォ)」や、発作日誌が付けられるスマートフォン用アプリ「Epi Diary(エピダイアリー)」なども紹介された。
【記事提供元】あなたの健康百科
http://kenko100.jp/