◆小学生の場合、幼児期の嘘と違って複雑
子どもが嘘をつく理由は様々で、それぞれの状況によって違っています。ただ一つ言えることは「嘘をつく」ということは、お互いの関係性の中で起こっているということです。
ごく稀に「自分の心に嘘をつく」というように一人で完結してしまうような嘘もあるのですが、例外のようなものでしょう。
私は小学校の担任を長くしていました。やはり小学校のクラスにおいても嘘をつく子どもは時折いました。嘘の相手が友達や親である場合もあれば、担任である私であることもありました。
また、嘘をつく子どもと嘘をつかれる人(例えば、担任である私)が1対1の関係の場合もあれば、三角関係になっているようなこともありました。子どもが親との関係においてのことで私に対して嘘をつくというもので、少し状況が複雑になります。
小学生などある程度年齢が大きくなってからの嘘は、無意識にするというよりは、意識して確信犯的であると考えるのが一般的です。「嘘をついてはダメ!」とモグラ叩きのように現象の表面だけを叩いていても根本的な解決にはつながらず、もう少し丁寧な関わりが求められます。
◆小学生の嘘への関わり方1:感情的に行動せず、時間を置く
子どもが嘘をついた時、親が気付かなければ、そのまま何も無かったこととして流れていってしまいます。しかし多くの場合、子どもが嘘をついたその瞬間、はっきりと分からなくとも「あれ?変な感じだ」という違和感を抱いたり、嘘に気づくものです。
そんな時、最もやめた方が良い行動は「カッとなって怒る」ことです。感情的になると感情に流されて、自分が本来伝えたいことを伝えることができなくなります。
嘘に限らず何かが原因で子どもを叱っている時、良くあるのが「そういえば、前にも……」「そういえば、あれも……」と叱ることがどんどん増え延々に続いていくパターン。
話している方は子どものためにというつもりなのですが、聞いている方はうんざりしてしまいます。反論するとさらに面倒なことになるので、ただ黙っていることが多いでしょう。
私は小学校の教師だったので、他の教師が子どもを指導している場面を見ることがよくありましたが、「子どもは聞いていないな」という様子は何となく分かります。
きちんと聞いていない子どもに話をしても時間の無駄です。そして話が伝わっていないので、また同じようなことを繰り返すことになるのです。
子どもに何かを伝えようとする時は、話題を他のことまで広げず、短時間で話した方が良いでしょう。あれもこれもとなると、ピントがボケたような感じになってしまいます。
また子どもに何かを指導する際、間違いなどに気付いたら、即座に子どもに伝えていくという方がほとんどでしょうが、感情的にならないことが大事なので、少し時間を置いてから話すことが良いでしょう。
また「嘘をつく」ことに対しては、少し状況が複雑であることが多いため、できれば事実の確認をしたいものです。事実を誤認したまま子どもに強く関わろうとすると、子どもは拒絶したり、不信感を抱いたりするようになります。
事実をきちんと確認したら、伝えたいことをメモ用紙に書いて整理などしてから、子どもに話すとよいでしょう。
◆小学生の嘘への関わり方 2:子どもが嘘をついた理由を考える
子どもでも嘘がバレたら大変なことになるかもしれないというリスクは理解していますが、それでも嘘をついてしまうのです。子どもが嘘をつくには、つくなりの理由があるからです。
子どもの嘘に気付いた時には、少し時間を置き、その間に嘘の理由を考えてみると良いでしょう。例えば、テストが返って来ているのに「返って来ていない」と言い張ったとします。
この場合、点数が悪いことを親に知られたくないから嘘をついたということは想像ができるでしょう。 「100点以外は認めない」と親が強く思っていることが、子どもに伝わっているのかもしれません。
これは嘘をついてしまう状況を親が作っているともいえるでしょう。「自分は子どもに良い点数ばかり求めてはいなかったか」「本当は間違えたものを直すことが大事なことなのにそれが子どもに伝わっていない」など、親として色々と考えてみる良い機会です。
子どもの嘘のきっかけや原因などが見えてくると、親としてすべき行動が見えてきます。
このテストの例では、「100点を取ることも大事だけれど、間違えた問題を直すことの方がもっと大事だ」ということを親が子どもに伝えていくことです。 それだけで嘘をつくという問題が一気に改善していく訳ではないですが、少しずつ良い方向には向かっていくでしょう。
今回、テストの例で説明をしましたが、他のものも似たように考えることができます。 子どもが嘘をつくことに対しての対応は難しいです。丁寧に、そして粘り強く子どもに関わっていくことが大切でしょう。