セラピストの独立雑記２０１２
ＩＮＤＥＰＥＮＤＥＮＣＥ ＯＦ ＴＨＥＲＡＰＩＳＴ
例外的に、当サロンの場合は、誰もお客さんはついてきませんでしたが。大通りの大手サロンから、１８０度路線・方向性の違う、隠れ家プライベートサロンとして、路地裏の雑居ビルで開業した為もありますし、結局、自分のスタイルに、勤めていたサロンとお客さんは、噛み合っていなかったということでしょう。思い返してみると、水と油のような関係であったのかもしれません。
サロン勤務当時から感じていましたが、お客さんはサロンのブランドに惹かれてくるお客さんですし、セラピスト個人のお客さんではないのです。指名制度も、サロンの中での指名ですから。やはり、離れてみて、今はそう思います。（過去の文章を覆すようですが。）
噂を聞いて、来店する方は多くても、遠慮・敬遠され、誰も指名はしないというカイゴロシ的な状態。また、読者モデルさんに人気という路線のサロンでしたので、サロンに来店される方との相性も、基本的に合わなかったと思います。当時は、中身（施術）が伴わないサロンイメージ・ブランド作りに、お世話になっている有難さもありつつ、恥ずかしさも感じていました。常に消化不良で、もどかしく・やるせない気持ちでいたのも事実です。
深夜勤務を任されてからは、全て独りで業務を同時にこなし、勤務するサロンに対して誰よりも思い入れが強いと自負していましたが、経営・運営面には一切関わらない現場の一スタッフの立場でしかないですし、先の事を踏まえ、自分を出す事をしませんでしたので、常にモチベーションを維持して存在することに努めていましたが、時が経つにつれサロン・お客さんとの関係性は段々と希薄になっていきました。
最後は、サロンのスタッフという感じではなく、「たけそら」として、委託されて任されている感じになっていました。（自分の立場を、そう思わせることで自分自身を納得させ、お世話になっているサロンの業務につくす為。）自分の個性の為に、昼と夜では全く別のサロンのようだったと思います。とにかく、愛憎相半ばする複雑な心持ちのまま、目の前には、独立しなければならない時が迫ってきていました。
サロン勤務当時は、同じ新宿で独立する為と、新宿の大通りの有名サロン勤務という認知度は必要なかったですから、自分の担当するお客さんの前以外には、絶対に姿を現さず、謎のまま存在をひた隠して勤めていました。周りのスタッフにも、何も話さずに、一切秘密にして、独立に向けて、身の丈でコツコツと進行していました。（ネットで検索すれば、情報は出てくるので、バレバレだったとは思います。）
ただ、内心で独立を決めているからといっても、消化するだけの勤務になるのは嫌でしたし、立場の違いから、スタッフとも、ひずみが出来て、本心のコミュニケーションが取れず、心苦しくはありましたが、サロン勤務も三年半という長い間、一日も休むことなく、最後まで徹底して、やり通すことができました。信頼されて任されている、何より自由にやらせてもらえたからこそ、続けられたのだと思います。プライベートでは独立準備をしながら、サロン内では手技を研究し、運営面を学ぶことも出来ました。有難い有意義な日々でした。
いざ独立。しがらみのない新しい出会いから、スタートしたかったので、過去の友人・知人を呼ぶこともしませんでした。周りの大切な方々には、心配をかけたくない為、見栄もあってか、黙っていましたが、これ以上の底はないというゼロからの、ひっそりとしたスタートになりました。誇張するわけでもなく、本当に誰も来ませんでした。
現実は厳しいものです。予約の電話が鳴らない。鳴っても、連日しつこい営業の電話ばかり。誰も来ない。孤立無援で風評被害でも起きているのかと、正直、思った時もありました。独立したら、波がサーッと引いていく感じでした。離れ孤島にいるような感覚。でも、閑古鳥が鳴く状況は、これまでの生活でも、いつも付き物でしたし、自分らしいなとも思っていました。
ただ、いつも心に抱いていた気持ちは、１対１で身体に触れる仕事ですので、セラピストのイメージ・立ち位置スタンスから、たとえ敬遠され続けても、皆に好かれる為（予約を入れる為）に表面上を作り、または偽りの姿（白衣を着た満面の笑顔の写真等）をみせるこはできないという気持ちでした。青臭いようですが、媚びる位だったら、冷や飯を食っていた方がましという気持ち。それは今でも変わりません。
あくまでも売りは施術です。整体・マッサージをする手仕事です。ですからＷＥＢ上でも、もっと正攻法で、技スキルを前面に出しても良いのでしょうが、自身の持ち味を表現することに、自問自答しながら苦心していました。自分よりも技術のある（自分は技術を研究する身）、またはセンスのある（自分はセンスを磨く身）・徳のある人（自分は徳を積む身）も探せば、この業界・世の中には他にいくらでもいるでしょうから。
結果的に３カ月程の助走期間を経て、低空飛行ながら徐々に回り始めました。ただ、この期間がなかったとしたら、自分に対して、ウソ臭く思えてしまったと思うのです。今日は予約が入った、今日はダメだったと、首の皮一枚繋がる毎日の中で、とにかく諦めない事が、大事なのだと本当に実感しました。
誰も来ないなら、サロンで待っていても埒があかないと、自分から外に出ていくべしと、出張業務にも励むことにしました。予約が入れば、営業時間外でも、どんな症状でも、どんな場所・状況でも、振り幅広く・先入観なく受け入れ、臨機応変に、目の前のお客さんに向かい合うことだけで、日々は過ぎて行きました。
インターネットの検索結果も上がって来て、口コミも自然発生するようになって来たのでしょう。その後も、波はありますが、サロンとしても、セラピストとしても、少しずつ成長し続けています。身体能力に関しても、日々のトレーニングとケアを通して、まだまだ向上している実感があります。
個人プライベートサロンですので、これからも自分の色が滲み出てくる存在であり続ける事が大切です。過去の営業の仕事経験から、知識・口先で、身になってない健康情報を伝えることは、いくらでも可能でしょうから、基本的に、自分の感性で実践してきた事しか、伝えることは出来ないのだと思います。
深夜の時間帯は、出張の予約が重なり、留守番電話の無人状態になる時間帯が増えて来ました。ただ、今のところは、バイトも弟子もとるつもりはありません。現状、自分のこと・体調管理だけで、精一杯ですし、まだまだ自分だけでやれる事があり続けます。
２０代で弟子として整体院にお世話になり、施術経験を積んだ自分にとっては、下の世代に無償でお返しをするのは、当然の事でしょうが、今はまだまだ時間的にも金銭的にも余裕がないというのが実情です。
将来的には、サロンをもっと広くキレイな場所に移転して、過去の自分の弟子時代と同じように、金銭関係の発生しない形（月謝なし、給料なし、金がないならば飯ぐらいは食わせる。）での、伝え方が理想です。今でも、師匠の整体院には、本当にお世話になったと、ただただ感謝の気持ちだけだからです。
お世話になった整体院には、駆け込み寺のように、アポなしで、いきなり飛び込み、受け入れて頂き、大切な居場所が出来ました。放任主義（押さえつけられるのが苦手な自分には居心地が良く）で、本人のやる気と自主性を尊重する・ゆるい関係性、損得・利害関係もなく、お金もうけとも関係なく、器の大きい院長との深夜のお酒時間もあり、そのまま寝泊まりし、自分にとっては、良い人生経験になりました。あの原点の時代があるからこそ、今の自分があるのです。
スクールというスマートな形は、望んでいません。個人サロン運営等のコンサルビジネスをする気にもなれません。資金を出して頂いて、綺麗なビルの路面店に移転する気にもなれません。今の自分には、この場所が性に合っているのです。
独立当初は、予約が全く入らず、働きたくても、働けない期間がありましたので、今は何とか転がり回り続け、軌道に乗りきらないまでも、お客様がいることが、仕事があることが、喜んでもらえることが、必要としてもらえることが、本当に有難いです。常に発展途上のセラピストですので、これからも頑張るだけです。
ゼロからスタートしたからこそ、今がありますし、最初から回り始めていたら、ここまで徹底して考え、緻密に作り、愚直に行動することも出来なかったと思うのです。目の前に波があれば、流れを読むのみです。これからも、自分の性格上から、おごらず、先生面することもないと思います。肌がムズ痒くなるようで、性に合いません。
独立後は、新しく出来た出会いばかりですし、サロン＝セラピストですので、やりがいがあります。自分らしく拘りを持ちながら、柔軟に変化し続けることも大切なのだと思います。自分とは違う価値観を認めながら、揺らがず・ぶれずに、自分をしっかり持って、軸をコントロールし、あらゆる状況に振り回されないことも必要になってくるのだとも感じています。
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